不発弾は地雷【小松泰信・地方の眼力】2024年10月9日
陸上自衛隊は9月29日、那覇市首里山川町の住宅街で、太平洋戦争末期の沖縄戦で米軍機が投下したとみられる不発弾を処理した。現場から半径約280メートル以内の住民ら約1400人を避難対象とし、約1時間で信管を取り外す作業を終えた。
不発弾処理は戦後処理のひとつ
沖縄県の公式HPには「沖縄県不発弾対策」のコーナーがあり、次のように記されている。
--沖縄県では、昭和49年那覇市小禄における下水道工事で死傷者38名を出した不発弾爆発事故を契機に、地中に潜む不発弾を探査する取り組みに力を入れています。先の大戦で激戦地となった沖縄では、現在でも多くの不発弾が発見され続けており、その件数は年間約500件にのぼり、今なお危険と隣り合わせの状態にあります。県では、県民の生命・財産を守るため、不発弾等処理対策事業により、不発弾の探査を進めています。--
沖縄タイムス(9月30日付)の社説は、「戦争が終わって79年にもなるというのに、沖縄では今も至る所で不発弾が見つかる。『鉄の暴風』と形容される沖縄戦の爪痕の深さは、目に見える風景だけでは分からない」と記している。
「沖縄戦で使用された弾薬量は約20万トン。このうち5%(約1万トン)が不発弾とされる。1972年から始まった陸上自衛隊の不発弾処理件数は8月に4万件に達した。現在のペースで処理したとしても、さらに70~100年かかる」「遺骨収集もボランティアらによって続けられている」「米軍統治がもたらした被害補償などの戦後処理も数多く抱えていた」ことなどを上げ、「沖縄の戦後史はある面で『戦後処理の歴史』でもあった」として、戦争がもたらす災禍に苦しめられ続ける実態を伝えている。
加えて、「戦後処理も片付かないうちに、状況は悪化する一方だ。沖縄の戦域化を想定した有事計画が立てられ、離島住民の避難計画が進められている」ことに言及し、「日本の安全保障政策が沖縄の負担と犠牲の上に成り立っているという構造は、何一つ変わっていない」と慨嘆する。
不発弾問題は自分事
いつの間にか不発弾を他人事として戦後処理していた思考回路に、ショックを与えたのが10月2日に起きた宮崎空港の誘導路での不発弾の爆発。その約2分前には旅客機が通過しており、あわや大惨事になるところだった。ただただ運が良かっただけの話。
宮崎空港は翌日に運航再開となったが、信濃毎日新聞(10月4日付)の社説は、「航空機を巻き込む事故を防ぐために、リスクを抱える空港は安全性を再点検する必要がある」と警告する。
同空港が1943年に旧海軍の航空基地として建設され、戦時中は米軍の攻撃目標になっていたことから、「空港施設の工事に伴って、近年でも不発弾がたびたび見つかり、陸自が処理してきた」が、国土交通省宮崎空港事務所は「施設整備の時に調査は一通りすることになっている」とし、全域の再調査を否定した。これに対して同社説は、「現場は90年代に拡幅した場所の周辺で、今回の不発弾を見逃していた。爆発の危険が顕在化した以上、地中に不発弾が残っていないか早急に点検しなければならない」と警告をくり返す。
「不発弾の爆薬は劣化せず、小さな振動でも爆発する危険があるとの指摘がある」ことを紹介し、「不発弾のリスクを見つめ直すべきだ」と、各地の空港を管理する国や県に訴えている。
加えて、「防衛省統合幕僚監部によると、陸上の不発弾を自衛隊が処理したのは23年度で全国2348件に上った」ことを紹介し、われわれに自分事として考えることを求めている。
不発弾処理は国の責任
琉球新報(10月4日付)の社説は、宮崎空港不発弾爆発の翌3日、那覇空港でも米軍の不発弾とみられる物が見つかり、自衛隊が処理したことを伝え、「不発弾は戦後79年を経ても国民の安全を脅かし続けている。政府は戦後処理の一環として責任をもって全国の不発弾調査と撤去を進めなければならない」とする。
「那覇空港の前身である日本海軍の小禄飛行場も攻撃対象になり、不発弾が相次いで見つかっている。2020年4月には那覇空港の誘導路建設工事に伴う磁気探査で、米国製250キロ爆弾3発が相次いで発見された。今回の宮崎空港の爆発事故を見ても、地中に残る不発弾の調査と撤去が十分になされたとは言えない。沖縄では工事現場などから毎日のように不発弾が発見され、自衛隊による処理作業が実施されている」、さらに「人命を奪う不発弾の爆発事故が起きた」ことなどから、「住民生活への負担や経済活動への影響は計り知れない」と訴える。
そして、「国策で戦争が進められた以上、その処理は国の責任で果たされなければならない。不発弾が地中に残されている限り、日本の戦後処理は終わらない」とする。
「すべての人に安心と安全を」と言うならば
西日本新聞(10月8日付)は、爆発当日に埋め戻し作業を終え、航空各社の運航は翌朝再開されたが、「徹底した再点検が急務だ」と指摘する。なぜなら、宮崎をはじめ軍用飛行場だった空港では、滑走路などを整備する際に不発弾の有無を調査してきたが不十分だったり、当時の探査技術では発見できなかったりした可能性があるからだ。
東京新聞(10月4日付)はふたりの識者のコメントを紹介している。
ひとりは、不発弾が埋まっている可能性がある空港敷地内の全面的な調査の必要性を訴えてきた名桜大の大城渡教授(公法学)。「犠牲者が出てもおかしくない事態。恐れていたことが現実になった」「戦後80年近くたっても、地中の状況によっては不発弾は腐食せず殺傷能力を残している。爆発の危険性はなくなっていない」「磁気探査の精度は向上している。過去に調査をやっていたとしても、見つからなかった不発弾が今回爆発したことも踏まえ、国の責任で調査すべきだ」と語っている。
もうひとりが航空アナリストの杉浦一機氏。「宮崎空港も穴を埋め戻しただけで、本当に安全性は確保されたのか」と国交省の初期対応を疑問視し、機体の大型化、離着陸頻度の増加などから「地面への圧力は高まっている。現状に合った新しい基準で調査をやり直せばいいのではないか」と語っている。
見方を変えれば不発弾は地雷。どこにあるとも知れぬ地雷のうえでの生活は、危険極まりないもの。
石破首相は10月4日の所信表明演説の冒頭、「すべての人に安心と安全を」というフレーズを用いて、その覚悟を国民に宣明した。まずは、国民が安心して生活できるよう、戦後処理の一環として不発弾の撤去に取り組むべきである。
「地方の眼力」なめんなよ
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