【浅野純次・読書の楽しみ】第105回2025年1月15日
◎芦垣裕『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング、1738円)
大抵の場合、私たちはお米のイロハも知らずに日々食しています。著者は米屋を営み、米コンクールの審査員をし、米の生産にも関わるなど、米全般の知識を広げる中で本書が生まれたようです。
ということで本書の構成も、米の品種、稲作、加工に始まって、米の流通、小売り、調理、外食や中食まで米全般にわたっていて、読み進むのも結構ですが、手元に置いての便利な米の百科事典の趣があります。
それもただ知識を並べるのではなく、栽培なら有機米、加工なら無洗米、流通ならJA米、調理なら圧力IH炊飯器など、それぞれに重点を置いて著者独特の米哲学を前面に出しているところに魅力が生まれています。
素人の筆者が初めて知った知識としては、3月に種もみを準備するときに消毒をするのが普通として最近は温湯消毒が多くなっている、稲作主体の農家の平均作付け面積は1・7haで所得は1万円強にすぎない、精米では石抜機や玄米色彩選別機が活躍している、など多々ありました。
流通している米の4割がコシヒカリ一族だそうですが、それでも温暖化に負けない新たな品種開発が日夜行われているとか。もっと大事に、しっかりお米を食べていこうと思わせられた次第です。
◎保阪正康『戦時下の政治家は国民に何を語ったか』(NHK出版新書、1023円)
戦前戦中の政治家は国民に何をどう訴えていたのか。田中義一から鈴木貫太郎まで24人の政治家が、選挙などでラジオを通して演説した記録を再録したものに、当時の状況や当人の紹介など解説を加えた構成です。
当然というべきか自己の立場を擁護しライバルをこき下ろす体の演説が目立ちます。その意味ではやや意外性に欠けますが、そうはいっても臨場感にあふれていて非常事態下の当時にタイムスリップした感じで読むことになります。
満州事変の犠牲者でもある井上準之助や高橋是清も興味深いですが、やはり一番気になったのは松岡洋右、広田弘毅、東條英機などの「戦犯」組です。今、読むと白々しいというか本人はそう心底信じ込んでいると思えるだけに、国を誤らしめる政治家の思想信条、何とも怖い限りです。
一方で尾崎行雄、安倍磯雄、斎藤隆夫などの名演説もあって救われます。いずれにせよいつの時代も政治家を選ぶのは国民であり、改めて選挙の重要性をかみしめました。
◎鈴木エイト『自民党の統一教会汚染』(小学館、1760円)
8年余にもわたり統一教会の動向を徹底調査してきた著者ならでは、とても粘っこい内容です。秘密主義に徹する相手に、ここまで事実解明したとは驚異的なことです。
自民党と統一教会の関係は世間が思う以上に広く深いようで、逢沢一郎、下村博文、平井卓也、萩生田光一、山本朋広、北村経夫...際限がないのでやめておきますが、票と選挙の手伝いはよほど魅力的なのでしょう。
でもその陰には指導者(韓鶴子)の強烈な反日感情と年間300億円ともいう信者から韓国への貢ぎ金、家庭崩壊と信者二世の絶望があるのですから、政治家たちの責任は重大です。特にトランプ次期大統領と安倍元首相の統一教会との親密な関係は見逃せません。
議員たちは世間のほとぼりが冷めるのを待っているのでしょうが、過去の行動の責任はいつまでも残り、統一教会の活動は続きます。この先の展開、および著者による追究が注目されるところです。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(159)-食料・農業・農村基本計画(1)-2025年9月13日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(76)【防除学習帖】第315回2025年9月13日
-
農薬の正しい使い方(49)【今さら聞けない営農情報】第315回2025年9月13日
-
【人事異動】JA全中(10月1日付)2025年9月12日
-
【注意報】野菜類、花き類、豆類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年9月12日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政も思い切りやってほしかった 立憲民主党農林漁業再生本部顧問・篠原孝衆議院議員2025年9月12日
-
【石破首相退陣に思う】破られた新しい政治への期待 国民民主党 舟山康江参議院議員2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政でも「らしさ」出しきれず 衆議院農水委員会委員・やはた愛衆議院議員(れいわ新選組)2025年9月12日
-
ドローン映像解析とロボットトラクタで実証実験 労働時間削減と効率化を確認 JA帯広かわにし2025年9月12日
-
スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加2025年9月12日
-
【地域を診る】個性を生かした地域づくり 長野県栄村・高橋彦芳元村長の実践から学ぶ 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年9月12日
-
(452)「決定疲れ」の中での選択【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月12日
-
秋の味覚「やまが和栗」出荷開始 JA鹿本2025年9月12日
-
「令和7年台風第15号」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年9月12日
-
成長軌道の豆乳市場「豆乳の日」前に説明会を実施 日本豆乳協会2025年9月12日
-
スマート農園を社会実装「品川ソーシャルイノベーションアクセラレーター」に採択 OYASAI2025年9月12日
-
ご当地チューハイ「寶CRAFT」<大阪泉北レモン>新発売 宝酒造2025年9月12日
-
「卵フェスin池袋2025」食べ放題チケット最終販売開始 日本たまごかけごはん研究所2025年9月12日
-
「日本酒イベントカレンダー 2025年9月版」発表 日本酒造組合中央会2025年9月12日