外国産米そろい踏みで同値の売りものが出る【熊野孝文・米マーケット情報】2025年2月25日
商人系コメ集荷団体の全集連青年部全国研修会が先週、東京証券会館で開催された。
研修会では目下の最大の関心事になっている買い戻し条件付きの政府備蓄米放出についての説明が行われ、参加者が今後どのように対応すれば良いのか議論が交わされた。また、週末には関東近県の米穀業者が集まって農水省の説明会に出席した業者が内容を説明した後、政府備蓄米放出がどのような影響を与えるのか、それにどう対処すべきなのか活発な意見が交わされた。この米穀業者の集まりでは、情報交換の後、席上取引会が行われ、6年産国産米の売り物が少なく成約は1車に留まったが、代わりにアメリカ、中国、ベトナムなどの外国産米が同値で売り物が出て、国産米が入手困難になっている中、外国産米に関心が集まった。
米穀業者の情報交換会では、農水省が2月17日に開催した説明会に出席した業者が備蓄米放出の要点を説明した後、個人的な感想として買い受け業者資格を有する「生産者から5000t以上集荷した実績のある業者がどのように返済するのか」を疑問点として挙げた。農水省の説明では買い受けた政府備蓄米と同等同量を「原則1年以内に返還」することになっており、必ずしも同じ銘柄でなくても良いのだが、原則と付いたからには例外も想定され、8年産米まで伸びることもあり、この辺が「曖昧」であったとした。このことは買い受け業者がどの水準で応札するのかと言った価格対応も難しくなるとした。それはイメージとして備蓄米売却でコメの価格が安くなり、安くなったものを買って国に売り戻すということになるが、果たして実際にコメの価格が先行きそのようになるという保証はない。また、備蓄米の引き取り期限は4月末までということになっているが、このことに対して全農サイドからものを移動させないといけないのか、動かさなくても良いのかと言う質問も出た。政府倉庫から移動させないといけなくなると新たに営業倉庫を借り受けなくてはならなくなり、その分経費が掛かる。
買い受け資格者を決める書類の提出期限は2月25日までになっており、7項目の基準をクリヤーしなくてはならない。その中の一つはあくまでも生産者から5000t集めた集荷業者でなくてはならず、業者間で買ったものは含まれないので、この要件で資格が取得できない業者も多い。また、応札できる数量も集荷数量のシェア割りであり、こうしたことを考えると実際に備蓄米を買い受けられるのは全農本所かホクレン、全集連ぐらいになるのではないかという見方であった。また、落札した備蓄米は集荷業者から卸に販売されるが、卸は小売に販売する際は精米で販売しなくてならず、その数量、価格も報告義務があるため店頭には備蓄米が安く並ぶ可能性もあるが、備蓄米と表示する必要はないなどと言った販売上の注意点に関しても触れた。
情報交換会の参加者からは、「そうした方法であればコメがなくて本当に困っているところには行き渡らないのではないか」、「スーパーで消費者から『備蓄米はないのですか』と聞かれるのではないか」、「安く並んだ時にすぐに買われてなくなるのではないか」といった質問や予想が出た。中には「そもそも放出される予定の6年産備蓄米は本当にあるのか?ウルトラCがかくされているのではないか」と言ったうがった見方もあった。
政府備蓄米の売却開始により、市中相場がどのようになるのかについては、農水省が公表している需給データの捉え方に違いがあり、21万t売却されても需給は緩和しないのではないかと見方や売却先はすでに大手卸に決まっており、コンビニ向けや大手外食向けの需要で終わってしまい中小業者には恩典はないのではないかという見方もあった。その一方で農水省から備蓄米売却が公表されてから農家からの売りもが増えているというアナウンス効果も一定程度あったという業者もいた。
この後、席上取引会に移ったが、なかなか売り物が出ず、かろうじて茨城ミルキークイーン1等が1車成約するにとどまった。その一方で、外国産米の売り物としてアメリカのカルローズ、中国産、ベトナム産の短粒種がすべて同値で売り物が出た。この分は昨年末に行われたSBS入札で落札されたものが今年に入って入船したことから港渡し価格で売り声が出た。荷姿はフレコン条件であるため、調整して5kg袋に詰め替える経費を考慮する必要もある。外国産米の売人からはSBSで輸入した外国産米と関税kg当たり341円を払って輸入した外国産米の検査や価格の違いについて説明があり、業務用米を多く販売している都内の業者からその場で引き合いがあった。また、まだ作付けされていない7年産米の価格を探る意味で、8月渡し条件で売り買いの価格が産地側、消費地側から出たが成約するまでには至らなかった。
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