母の日の定番カーネーションの生産が減りつづけている【花づくりの現場から 宇田明】第59回2025年5月8日
5月の第2日曜日は母の日。今年(2025年)は5月11日です。
お母さんへのプレゼントの定番はカーネーション。
そのカーネーションの生産が減りつづけています。
カーネーションの人気がなくなったわけではありません。
2024年のカーネーション消費量(国産+輸入)は5.6億本もあり、ピーク時の1995年の6.4億本から12%の減少にとどまっています(図)。
切り花全体ではこの間に35%減っていますから、カーネーションは依然として消費者に強く支持された人気品目と言えるでしょう。
人気品目にもかかわらず、国内の生産量は激減しています。
1995年には5.9億本あったものが、2024年には推定1.8億本で、実に70%の減少です。
一方、輸入量は増加の一途をたどっています。
1995年の0.5億本から2024年には3.8億本へと7.6倍に増え、輸入率は67%に達しました。
神棚、仏壇・お墓にお供えするサカキ・ヒサカキの輸入率推定90%に次ぐ高い水準です。
これは、日本だけの特殊な状況ではありません。
欧米先進国においては、すでにカーネーション生産は輸入との競争に敗れ、姿を消してしまいました。
花はグローバルな産業です。
英国BBCニュース・ジャパンが、世界経済の姿を変えてきた製品のひとつとして花を取り上げた「MADE ON EARTH」は、本コラムでも紹介しました。
「毎年、約80億ドル相当もの切り花が世界中で取引されている。かつては欧州が独占していたこの花産業が、今では赤道周辺の地域で重要な輸出産業となり、地域経済を復活させている。」
そのグローバル産業の先頭を走っているのがカーネーションとバラ。
カーネーションは南米のコロンビア、バラはアフリカのケニアとエチオピアが欧米市場の主要な供給地。
極東の日本も、そのサプライチェーンの一環に組みこまれています。
さらに日本には、花の生産大国になった中国からの輸入が加わっています。
2024年の日本のカーネーション輸入量3.8億本のうち61%がコロンビア産、次いで中国産が31%で急速にシェアを拡大しています。
中国からの輸入カーネーションの多くは雲南省昆明で生産されています。
昆明は、北緯25度、海抜1,800mで、夏は涼しく、冬は温暖、コロンビアのボゴタと同様にカーネーションの栽培適地です。
これらの国々では、安価で周年安定供給できることが大きな強みです。
一方、日本では四季にあわせて、冬から春は暖地、夏から秋は寒冷地のリレー栽培でしか周年供給ができません。
加えて、地球温暖化の影響による夏の猛暑や残暑の長期化は、夏から初冬にかけて国産カーネーションの品質低下を招き、この間は輸入に頼らざるを得なくなっています。
花屋は、市況の乱高下や気象変動に影響されない安定した仕入れを望んでいます。
そのため、お天気次第で入荷量が変動する国産より、長期契約が可能な輸入が選ばれるのは必然の流れでしょう。
もちろん、これほどまでに輸入が増えたのは、国内生産が減りつづけているからです。
残念ながら、カーネーションの国内生産はこれからも減ることが予想されます。
それは、失われた30年といわれる1990年代後半から今日まで、カーネーション栽培への新規参入がほとんどなかったからです。
新たに温室を建ててカーネーション栽培をはじめても採算があわないと考えられていました。
そのため、生産者の高齢化と既存温室の老朽化とともに生産が減る流れはとめられません。
このような状況下で、国産カーネーションが生きのこる道は、原産地表示によるブランド化と差別化、そして夏の高温対策技術を開発・導入し、品質を改善することです。
重要な記事
最新の記事
-
米価 前週より0.3%値上がり 17週連続で高騰2025年5月8日
-
全農グローバルホールディングス スイスに設立 海外事業を再編2025年5月8日
-
母の日の定番カーネーションの生産が減りつづけている【花づくりの現場から 宇田明】第59回2025年5月8日
-
NTTと北海道大学の農業分野での共同研究 デジタルツインでデータ収集のプラットフォームに 社会実装へ関係者と連携体制も2025年5月8日
-
5月の食品値上げ前年超え 10月までに1万4千品目 価格改定動向調査 帝国データバンク2025年5月8日
-
「除草」されるイモ・ダンプに乗せられるイモ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第339回2025年5月8日
-
栃木米アンバサダーU字工事の新ラジオCM放送中 JA全農とちぎ2025年5月8日
-
全農杯全日本卓球選手権大会(ホープス・カブ・バンビの部)鳥取県予選会に副賞・参加賞を提供 JA全農とっとり2025年5月8日
-
「いわて純情米消費拡大月間」始まる 盛岡駅で県産米のおにぎり配布 JA全農いわて2025年5月8日
-
「JA全農にいがたpresentsにいがた和牛 村上牛 産地交流ツアー」参加者募集2025年5月8日
-
いわて牛のおいしさをPR 県内初出店のスーパーで試食会を開催 JA全農いわて2025年5月8日
-
フリーダイヤルが復旧完了 JA共済連2025年5月8日
-
産地直送通販サイト「JAタウン」で父の日イベント開催2025年5月8日
-
JA全農 カーリングジュニア日本代表を「ニッポンの食」でサポート2025年5月8日
-
農業ジャーナリスト賞に7作品 農政ジャーナリストの会2025年5月8日
-
兵庫県尼崎市の伝統野菜「一寸ソラマメ」即売会を実施2025年5月8日
-
大気中のCO2を吸収する 「CO2を食べる自販機」コープみらい一部店舗などで導入2025年5月8日
-
収穫最盛期の「露地イチゴ」栽培農家12軒による品評会開催 大阪府高槻市2025年5月8日
-
埼玉県「イネカメムシ広域防除緊急対策事業」12日から申請受付2025年5月8日
-
フルーツで大輪の花束「母の日限定ケーキ」8日から販売 カフェコムサ2025年5月8日