花はグローバル産業 関税は公平に【花づくりの現場から 宇田明】第5回2023年3月9日
ロシアのウクライナ侵攻で、国民の関心は安全保障に移り、グロバリゼーションは影が薄くなりました。しかし、わが国の切り花の輸入率は28%(数量ベース、2021年)で、毎年増えつづけ、グローバル化が一層高まっています。それは世界的な潮流で、あともどりはできないでしょう。
2019年に英国BBCニュース・ジャパンが、世界経済の姿を変えてきた8つの製品を取り上げた「MADE ON EARTH」というドキュメンタリー番組を放映しました。その第3話が花でした。
【メイド・オン・アース】80億ドル分の切り花・世界で花開く切り花産業
「毎年、約80億ドル相当もの切り花が世界中で取引されている。かつては欧州が独占していたこの花産業が、今では赤道周辺の地域で重要な輸出産業となり、地域経済を復活させている。」
(下記注参考)
ちなみに、切り花以外の7つのグローバル商品とは、「コーヒー」、「紙」、「香辛料」、「ハンドバッグ」、「スコッチウイスキー」、「半導体」、「自転車」です。
80億ドルの根拠はよくわかりませんが、欧米では国内の切り花生産が衰退し、ケニア、エチオピア、コロンビアなど赤道周辺の国々からの輸入に頼っていることは確かです。このグローバル化に日本も組みこまれています。2021年には50か国から13億本の切り花(葉もの・枝ものを含む)が輸入されましたが、欧米のように、BBCがいうところの「MADE ON EARTH(地球産)」に全面的に依存するまでには至っていません。前回報告したように、前途は多難ですが、先進国唯一の花の生産国として、なんとか生産者が踏ん張っています。
農産物の輸出入は、TPPや貿易交渉などでわかるように、関税でコントロールされます。その花の関税を日本は1985年に完全撤廃しています。日本は、どこの国から花を輸入しても関税はゼロです。当然、相手国も同じと思っていました。10年ほど前に農水省の後押しで、切り花や植木・盆栽の輸出をはじめたときに、輸出には関税がかかることを知りました。日本と同じように関税がゼロなのは、オーストラリア、ニュージーランド、香港などわずかです。最大の輸出先相手国である中国は10~23%、2位のアメリカは6.4~6.8%の関税がかかっています(右表)。
日本が花の生産国であり続けるためには、輸出を増やすことが手段のひとつです。そのためには関税が公平でなければなりません。いまさら花の関税を復活せよとは言いませんが、輸出相手国の関税もゼロであるべきです。
関税については国どうしの交渉が必要で、花産業だけではどうしようもありません。米国とは2019年の日米貿易協定で、関税率を段階的に削減することが決まり、現在は半減したようです。花はマイナーな農作物ですが、政府は忘れずに交渉のテーブルにあげてくれていたようです。
中国との貿易交渉(あるとすれば)でも、花の関税撤廃を忘れないでください。公平な関税があってのグロバリゼーションです。
(注)https://www.bbc.com/japanese/video-49792428
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日