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納豆汁、鯨汁、菊の花のお浸し-山形内陸の食-【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第355回2025年9月11日

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「もうだめだ」、この頃そういう言葉がよく私の口をついて出る。すると娘から怒られる、「だめだと言うな」と。でもやはり言いたくなる。今回の原稿もそうだ、鳥について書いてきたので、今回は「白鷺」について書こうと一昨夜書き上げたら、何と、それをパソコンのどこに保存したのかわからない、探せないのである。
 もしかして間違って消去してしまったのではなかろうか。落ち着いて探せばどこかから出てくるかもしれないが、締め切りは迫っている。
 やはり私はもうだめなよう、ボケがかなり進行している。
だからと言って、編集部に迷惑をかけるわけにはいかない、先日も私の入院騒ぎでご迷惑をおかけしたばかりだ。
やむを得ない、この正月、これを書こうかなと思って書いておいたメモ書きがある。それをもとに書かせていただいて、ゆっくりと「白鷺」の原稿のありかを探させていただこう。
 ということで、しばらくは私の生まれ育った山形内陸(日本海に面していない地域)の食について語らせていただきたい。

 結婚したばかりの頃、宮城県出身の家内が私によくこう言ったものだった、「山形の人は変わったものを食べる」と。
 その一つに私の生家で食べる「納豆汁」がある。
 芋がら(乾燥させたサトイモの茎=ずいき)、豆腐、油揚げ、ニンジン、こんにゃくなどを刻んで入れてつくった味噌汁に、すり鉢ですった納豆を入れ、さらに細かく刻んだネギやセリなどを加えたものである。これを飲むと冬の寒いときなどは身体の芯から温まる。私などは必ずお代わりをする。ところが家内は最初は食べられなかったと言う。
 家内が食べられなかったものにもう一つ、「鯨汁」がある。
 鯨の皮を塩に漬けた塩鯨(塩皮鯨ともいう、かなり塩っ辛く、また脂っこい)をジャガイモやタマネギ、豆腐などといっしょに味噌汁にする。おつゆの上に油が浮き、本当においしい。ただし煮ているときの臭いはすさまじく悪い。しかし小さい頃はそんなことはどうでもよかった。脂肪分の摂取量の少なかった頃にはその脂っこさが何ともいえずうまかった。もちろん今もうまいと思う。
 やがて家内も納豆汁、鯨汁が好きになり、自分もつくるようになって客にごちそうするまでになった。ほとんどの人がうまいとほめる。しかし、納豆汁に関してはやはり関西人はだめである。でも、名前を教えないでごちそうすると、先入観がないのでおかわりまでする人もいる。鯨汁は塩鯨がなかなか手に入らないので、たまに店頭で見つけたりするとすぐに買う。しかし最近はほとんど売っていない。
 それにしても山形の人は変なものを食べると家内は言う。

 山形が変わっているというなら、仙台の「てんよ」などはもっと変わっている、と私は家内に言ったものだった。
 仙台に来たとき、氷水を食べさせる店などに「てんよ」という札がはってある。何かと思ったら「ところてん」(山形では「てん」という)のことである。ただし食べ方がちょっと違う。山形では酢醤油とカラシで食べるのだが、仙台では醤油と砂糖をかけて食べるのである。とてもじゃないが、仙台のてんよは私は食べられない。
 なお、山形ではところてんを食べさせる店の酢醤油の瓶は青い杉の葉で蓋されており、そこからところてんの上に注いで食べたものだった。何とも風情があったのだが、今はどうだろうか。

 今から70年も前になるが、私が仙台に来たばかりの頃(昭和30年頃)、菊の花を食べると言ったら下宿屋の人に嗤われた。鑑賞すべきものを食べるなんて山形人は野蛮だ、田舎者、変わり者だと思われたらしい。しかし山形ではそれが普通だったし、秋の深まりを知らせる食だった(今は全国的に食されるようになっていようだが)。
 春の来たのを知らせる食の一つにツクシがある。ところが同じ山形でも庄内地方(日本海に面した地域)は食べない。子どもの頃、酒田に行ったとき、線路にツクシがたくさん生えていたので、採って食べたいといったら驚かれてしまった。内陸では春になると、ツクシばかりでなく、セリ、ナズナ、ヨメナ、ノビルなどの雑草も採って食べる。
 この菊やツクシなどを食べる地方は他にもたくさんあるが、山形内陸でしか食べないものがある。それはヒョウ(スベリヒユ)である。
 夏になると畑一面にヒョウが生える。作物にとっては雑草だから当然抜き取られるが、そのうちの大きくて太くてやわらかいものは捨てずに家に持って帰り、それをさらっとゆでる。そして一部はおひたしにして芥子醤油で食べる。今で言うとツルムラサキやモロヘイヤの味に似ていて、ちょっと酸っぱく、ぬるぬるしているが、私に言わせるとツルムラサキなどよりヒョウの方がずっとうまい。夏の暑いとき、冷えたヒョウのおひたしを辛子醤油で食べるのは絶品である。残りは天日に干す。こうしてからからに乾かしたヒョウは保存しておく。冬、野菜がなくなるころ、その干したヒョウを湯で戻し、油揚げか薩摩揚げを切ってもしくは大豆をちょっとだけ潰したもの(「ご豆」とか「打ち豆」とか言ったような気がするのだが)をそれに混ぜ、油で炒めたり、煮付けたりする。戻したものをそのままおひたしにして食べてもいい。これまた絶品である。お正月には縁起物としても食べる。食べると「ヒョッとしていいことがある」からだそうである。
 なお、庄内ではスベリヒユをスベランソウと言うらしい。そして一部の地区では内陸と同じようにして食べるらしいが、このスベランソウという名前がいい。滑らない草、つまり受験生にはぴったりである。そこで受験に効くと干したこれを売り出したらけっこう売れたという。

こんなのは序の口、山形内陸人はあの苦いアケビの皮まで食べるのである。それは次回紹介することにしよう。

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