【今川直人・農協の核心】集団個性(アイデンテティ-)としての社会貢献(1)2025年9月29日
組合員の農協への期待は農業振興
鈴木貴博著「戦略思考トレーニング」(2013年4月 日経新聞出版社)は、企業の競争戦略を取り扱う200ページほどの小冊子である。日米の著名企業が実際に採った行動も題材とされていて注目を集め、出版と同時に版を重ねた。その中に「ドミナント戦略」と言う言葉が出てくる。日本のチエーン店が採った、一つの地域を制覇して、その後に次の地域に向かう戦略である。農協がこの策をとれるか。対抗措置のシミュレーションぐらいはあっても悪くないが、農協には農協らしい「競争戦略」がある。
日本農業は激動している。従事者の減少が農地利用の低下をもたらし、農業の縮小が進行している。しかし、英独伊を上回る国土と大きな人口は農外資本にとって魅力である。海外資本の誘引を企てる勢力もある。生産資材原料の輸入を看板にする商社は系列に食品部門を持つ。農業経営すなわち農地利用の途も開かれている。
今回の米価の高騰は、近年の価格低落による潜在需要回復への事前調整が機能しなかった結果である。しかし、農協は損な役回りを演ずる羽目に陥った。米どころでは、前年の反省に立って商系への対抗上7年産米概算金の追加払いを余儀なくされた。それをメデイアが「全農○○が」と報道する。全農」が米価をさらにつり上げているかのような印象を与えている。
しかし、激動期にあって真に憂慮すべきは、農協の自信と使命感の喪失である。農協関係者の主張は生産者の立場に偏り、政治的で具体性のないものが多くなってきている。無意識にシェアの低下を心配しているからであろう。生産者の立場を主張・擁護すると同時に、生産者の努力目標を提示することを、心ある組合員は農協に望んでいる。
企業の「社会貢献」
フィランソロピーの意味は人類愛であるが、人類愛に基づいて人々の幸福、健康、快適な生活を支援する利他的活動の総称となっている。
奉仕活動や社会的に有用な活動への金銭、物品の寄付などの無償の行為による社会貢献は、敬意と共感を呼ぶ。経済的余裕の多寡によらず社会貢献に踏み切る企業・個人は少数である。社会貢献は個人団体を問わず強い意識(意志)なしには生まれないし続かない。
農林中金は2014年に200億円を拠出して「農林水産業みらい基金」を設立し、農林水産業を軸にした「地域活性化に向けた取組み」の支援を続けている。対象は農・林・水産(陸地養殖等も)に関わる組織的事業である。特徴は審査基準にある「新規性」で、優れた「フィランソロピー」の実践である。
サービス業、なかでも財閥系と保険業が社会貢献に熱心である。財閥系では創業の精神を核として年輪を重ねている。保険業では、本業にイメージの近い福祉や安全、自然保護、教育などの分野で特色を出していのる。また、社員の勤労奉仕や寄付のための醵金などの直接行動が広く見られる。
信用事業(前記の例など)のほか、共済事業の医療や福祉、農作業を含む事故防止、教育・文化支援、経済事業における事業密着型のSDGsへの取り組みや食農教育、その他子ども食堂支援など、農協の取り組みも活発である。
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