【今川直人・農協の核心】集団個性(アイデンテテイ-)としての社会貢献(2)2025年10月14日
経営刷新を継いだCIへの取り組み
CIへの取り組みは1988年12月の第18回全国農協大会決議が発端である。数紙がマーク変更を見出しに大会を報じた。翌年春の人事異動早々の広報部の会議で、多くの県中から「独自のマークを作成している農協が相当ある。早急に対応策を検討しなければならない」と言う意見が出された。また、『農協』の名称が女子職員の採用を困難にしている深刻な実態も報告された。
県中が調査・収集した結果、約四百農協(総数の約一割)で独自マークを作成していた。ほとんどが県産品・特産品をイメージした商標に類するものであったが、なかに農協マークを変更しているものが十いくつあった。
堀内巳次会長からCIにゴーサインが出たのは1989(平成元)年5月である。以後、都道府県中、全国8団体等との会議を重ねた。都道府県中との会議は1989年4月以降1990年12月の手引書完成までの20か月に14回(過半が代表県中会議)に及んだ。
定着したのは呼称とマーク
第18回大会決議のCIは第16・17回農協大会の「経営刷新」(実体は「合理化による生き残り」)を継ぐものであった。そのため、取り組むならば、CI三要素の「視覚」すなわち表装にあたる呼称(愛称)・マークを変更する簡便なCIではなく、「理念」と「行動」に及ぶ本格的なCIに、と言うことになった。外部からの視点が不可欠なので職員二人に複数の専門スタッフを交えたプロジェクトチームを設けた。多くの時間を全国7農協(無作為抽出)と全国機関の調査・意見聴取に費やした。成果が「役員の自己啓発・権限移譲・最良のリーダーを選ぶ仕組み」を第1条とする手引書「農協革新八カ条」である。事業・経営の刷新のために活用され全役職員の「座右」となることを期待した。しかし、呼称とマークは定着したが、革新八カ条はあまり浸透しなかった。
本業精励が社会貢献
関係者の多くが抱いている現在の危機感は、急激で深刻な農業の危機が農協の近い将来に落とす影である。農業の危機は国民の生活に直結している。そしてその主要部分が農協が正対することによって改善可能-すなわち、本業に精励することが社会貢献につながっているのである。取り組むべき課題は食料・農業を取り巻く状況の変化の中に、すでに面(おもて)を表している。
農水省経営局経営政策課は今年度から「農業参入に関する情報交換会」を実施している。今年度は4回の予定(2回は実施済み)で、参加者は食品産業や農業に投資する金融機関などである。8月は誘致した行政による事例発表が行われた。経営政策課の目的は農業経営体の確保である。
改正基本法下の2025年「基本計画」は農福連携について、3項で触れている。「農福連携の推進」の項では「社会生活上支援を必要とする者の社会参画とこれを通じた地域農業の振興が重要」としている。
毎日新聞デジタル(2025.10.7)は、「中間コスト削り5キロ3980円 イオン直営農場の新米発売、割安に」と報じている。現在の30ヘクタールを5年以内に3倍に拡大したいとのことである。
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