【浜矩子が斬る! 日本経済】経済統計は見方と使い方が肝要 国富の中の格差に目を2025年11月21日
2025年7~9月期のGDP(国内総生産)速報が発表された。それによれば、同期の実質GDP成長率(季節調整済み)は前期比マイナス0.4%だった。これと同じペースで、マイナス成長が1年間にわたって続いた場合の前年比成長率を示すいわゆる「年率換算値」でみると、実質1.8%のマイナス成長となる。
エコノミスト 浜矩子氏
何よりも強い経済を志向し、経済あっての財政だと言い切り、「日本経済成長戦略本部」を設置したタコ市首相としては、さぞや気が揉めることだろう。あの手この手の経済対策が打ち出され、大型の補正予算なども組まれそうな雲行きだ。そんな状況であるだけに、この際、GDP統計を始めとする経済指標について、少し基礎的なところをおさらいしておきたいと思う。正しい理解に基づいて数字を眺めていないと、思わぬ錯覚や誤解に翻弄されることになる。
そこでまず、GDP統計である。これは、いわゆる「フロー」の指標だ。フローは流れの意だ。毎四半期や毎年のGDP成長率は流れの勢いと速度を示す。高成長なら流れの勢いが強く、スピーディーに動く。低成長なら、流れの勢いが弱く、ノロノロと動く。
フロー統計に対して、ストック統計というのがある。ストックは蓄え・残高・在庫などの意だ。働く人の年々の所得はフロー統計である。それに対して、同じ人の貯蓄総額はストック統計だ。
かつて、日本はフローはすごいがストックが貧弱だとさかんに言われた。これが、高度成長期の日本経済のイメージだった。勢いはある。だが、蓄えが乏しい。活気はある。だが、人々は狭い家に住んでいて、生活にゆとりがない。長い夏休みを堪能しているフランス人や、郊外に別荘を持っているイギリス人がうらやましくて仕方がない。そういう嘆き節が巷(ちまた)でしばしば聞こえる時代だった。
あの時代のイメージは、結構、未だに戦後世代の脳裏に焼きついている。だが、実は実態はまるで違う。かつてとは一変している。今の日本はストック大国だ。経済社会的インフラが充実し、国富の規模がすっかり大きくなっている。生活基盤の豊かさを世界に誇っている。それなのに、格差があり、貧困にあえぐ人々が数多く存在することに問題がある。
一方で、フローであるGDPの勢いは低下している。このことが人々を落ち込ませたり、不安を抱かせている。だが、今日のような日本経済が、高度成長期のように高速でフローしないのは、当たり前である。ここまで蓄えが充実して来たら、全てを失ってしまった戦後期の焼け跡経済のように、必死の勢いで走る必要はないし、その余地も無い。GDP成長率をむやみに加速させなければ行き詰まるような状況ではない。ここが肝心なところだ。フロー概念であるGDPがゼロ成長に終わっても、あるいはマイナス成長に陥っても、それで世の終わりが来るわけではない。ここが「経済は成長してなんぼでしょ」という言い方の誤りだ。今年のGDP成長率が前年比でゼロに終わっても、それで日本のGDPが消え失せるわけではない。蓄えが棄損するわけではない。ある人の年間給与が前年と同じレベルに止まっても、所得がゼロになるわけではない。貯金が減るわけでもない。この辺をはき違えると、経済政策はひたすら経済成長ばかりを追いかけて、蓄積された富の有効活用を忘れる。
物価統計についても、注意を要する。物価上昇率と物価水準は違う。今は高騰している物価も、もう少しすれば上昇率が落ち着いて来る。だから、ご安心下さい。この言い方は一種のまやかしだ。物価上昇率が仮にゼロになっても、いったん上がってしまった物価水準が下がるわけではない。コメの値段が上がらなくなっても、高止まりしたままなら、人々の悩みは終わらない。
統計はその意味の把握と使い方が肝要だ。チーム・タコ市はこの辺のところをどう考えているのだろう。
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