【27年産米 米販売最前線(2)】店頭価格 上昇わずか 量販店の安売り競争厳しく 欠かせない適正価格への理解2015年12月8日
本紙独自調査第2弾最安値品を追跡調査
・米の安売り相変わらず
・5キロ1000円をPR
米の産地では主食用米の需給改善に懸命に努力し27年産では飼料用米の増産などで過剰作付けを解消するなど、需給が引き締まって26年産にくらべて相対取引価格も上昇してきた。26年産の年産平均相対取引価格60kg1万1979円が、27年産10末までの平均で同1万3108円と1129円上昇した。しかし、小売価格にそれが反映されているか。本紙が首都圏量販店を対象に行った店頭価格調査では相変わらず27年産でも5kg1100円台、1200円台の安売りが行われていることが分かった。28年産に向けてさらに需給改善する取り組みにJAグループも力を入れるが、同時に消費者に米の適正価格について理解を広めることも一層必要になっている。
◆米の安売り相変わらず
本紙は今年8月、首都圏の15地区51店舗の精米5kg商品の最低価格調査を行った。
その結果を改めて振り返っておくと、最低価格が「1000円以下」の店舗は6店、「970円」が最低で産地銘柄は26年産の「秋田あきたこまち」と「茨城コシヒカリ」だった。店内に「5キロ1000円」と大きく貼り出してあった店は"地域最安値の店"とアピールしていた。また、999円で売り出す店があれば近くの別の店舗では998円で売るなど、まさに「1円でも安く」の実態があることも分かった。27年産の新米が出回り始め、26年産米が一斉に安売りされ始めたとの印象だった。
そこで今回は8月調査と同一店舗を対象に、その時点で最低価格だった産地銘柄が27年産米ではどう設定されているかを調べてみることにした。
調査の結果、10地区24店舗で、8月調査時点と同じ産地銘柄の28商品が販売されていた。これを8月調査結果と比較してまとめたのが表である。
結果をみると27年産ではわずかに販売価格が上昇している程度だ。8月調査との上昇幅は62円~600円。しかし、注目されるのは27年産米になっても価格を据え置いている店舗もあるほか、8月時点での26年産の安売り価格1480円よりも27年産ではさらに100円安く販売している店舗もあった。
【表 首都圏量販店の「精米5キロ品」の最低価格調べ(8月調査との比較分、12月5日、6日本紙調べ)】
◆5キロ1000円をPR
調査対象の産地銘柄が8月調査時よりもかなり値上げされているものもあるが、それらの店舗では別の産地銘柄を最低価格の目玉商品としていた。 たとえば、東京都・下北沢のB店では「北海道ななつぼし」を27年産では500円高く売っていたことが分かったが、最安値品は「岩手ひとめぼれ」で1680円と設定。これは8月調査時点の「北海道ななつぼし」の価格だったから、結局、最低価格としては27年産が出回っても変化がないということになる。
埼玉県ふじみ野市のE店でも8月調査では目玉品としていた「宮城ひとめぼれ」を27年産では660円高く販売していたが、最低価格品として「青森まっしぐら」と「山形はえぬき」をともに1380円で販売。同地区のA店の最低価格品1380円、C店の同1480円などと競争するかのように価格設定がなされている、というように店舗間の価格競争に負けないよう、それに見合う産地銘柄が仕入れられていると思われる。
同時にもっとも重要だと思われるのが、この28商品のうち、今回の調査でも最低価格だった産地銘柄が24商品も占めたことだ。値ごろ感のある産地銘柄が求められているとしばしば聞かれるが、特定の銘柄が常に目玉商品として安売りされている印象を受ける。
さらに今回の調査では「5kg1000円以下」の米を常に売り出している店舗があることも分かった。前回の調査結果を紹介した紙面では「5kg970円」の商品が販売されていたことをショッキングに伝えたが、今回の調査で「5kg999円」をいわばウリにしている店舗があることが改めて分かった。年産は不明のブレンド米。同1280円で販売している店舗も同様だった。
8月調査では、一時的な「投げ売り」で驚くほどの安売り販売が広まっていると考えたが、今回の調査では5kg1000円~1200円程度の精米が当たり前のように店頭で販売されていることが分かった。量販店の店頭価格も8月時点より上昇はわずかで、小売り店では価格アップによる売れ行き不振を懸念しているようだ。一方で適正価格についての理解を広める必要がある。
農林水産省によると茶わん1杯のごはんは精米にして65g。今年9月の精米の平均価格は5kg1818円だった。5kgの精米は77杯分になるから、一杯あたりの米の値段は約24円となる。2リットルのミネラルウォーター(97円)はお茶碗4杯分、缶コーヒー(130円)は5.4杯分になる。
(関連記事)
・【27年産米 米流通最前線(2)】 作況指数「100」 需給緩和から一転タイトへ (15.11.04)
・【27年産米 米流通最前線】主食用の値上がりに中小米卸は戦々恐々 (15.10.23)
・【27年産米 米販売最前線】 精米5キロ「970円」の特売も 新米出回り 安売り熾烈 (15.09.01)
・【27年産米 米流通最前線】価格変動のリスク対応へ 取引市場の整備を (15.08.31)
重要な記事
最新の記事
-
果樹産地消滅の恐れ 農家が20年で半減 担い手確保が急務 審議会で議論スタート2024年10月23日
-
【注意報】野菜、花き類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2024年10月23日
-
【クローズアップ】数字で見る米③ 委託販売と共同計算2024年10月23日
-
【クローズアップ】数字で見る米④ 委託販売と共同計算2024年10月23日
-
千葉県で高病原性鳥インフルエンザ 今シーズン国内2例目2024年10月23日
-
能登を救わずして地方創生なし 【小松泰信・地方の眼力】2024年10月23日
-
森から生まれた収益、森づくりに還元 J‐クレジット活用のリース、JA三井リース九州が第1号案件の契約交わす2024年10月23日
-
食品関連企業の海外展開に関するセミナー開催 関西発の取組を紹介 農水省2024年10月23日
-
ヒガシマル醤油「鍋つゆ」2本付き「はくさい鍋野菜セット」予約販売開始 JA全農兵庫2024年10月23日
-
JAタウン「サンゴ礁の島『喜界島』旅気分キャンペーン」開催2024年10月23日
-
明大菊池ゼミ・同志社大上田ゼミと合同でマーケ施策プロジェクト始動 マルトモ2024年10月23日
-
イネいもち病菌はポリアミンの産生を通じて放線菌の増殖を促進 東京理科大2024年10月23日
-
新米「あきたこまち」入り「なまはげ米袋」新発売 秋田県潟上市2024年10月23日
-
「持続可能な農泊モデル地域」創出へ 5つの農泊地域をモデル地域に選定 JTB総合研究所2024年10月23日
-
「BIOFACH JAPAN 2024」に出展 日本有機加工食品コンソーシアム2024年10月23日
-
廃棄摘果りんご100%使用「テキカカアップルソーダ」ホップテイスト新登場 もりやま園2024年10月23日
-
「温室効果ガス削減」「生物多様性保全」対応米に見える化ラベル表示開始 神明2024年10月23日
-
【人事異動】クボタ(11月1日付)2024年10月23日
-
店舗・宅配ともに前年超え 9月度供給高速報 日本生協連2024年10月23日
-
筑波大発スタートアップのエンドファイト シードラウンドで約1.5億円を資金調達2024年10月23日