【稲作農家の声】米価は流通業者が決めるものじゃない 生産者・消費者の相互理解こそ 石塚三津夫さん(新潟)2025年6月9日
農協職員から農家に転じ、有機栽培で米作りを続けてきた石塚美津夫さんは、米価は生活者全体の問題と話す。6月5日、国会内で開かれた「今こそ日本の食と農を守ろう緊急集会」での報告から。
「防衛予算も大切だが、それより大切なのは明日の未来の子どもたち」と話す石塚美津夫さん
(6月5日、参議院議員会館)
30年ほど前から有機農業をしている百姓の石塚です。8町5反の田んぼのうち、田植えが半分以上残っている。でも誘いをうけ、倅に許しを請うてやってきた。
●パルシステムと産直
私は1971年に農協に入った。変わった農協だった。78年から減反が始まったが、私の村は達成率がワースト1。18.7%だった。それをきっかけにパルシステムと産直事業を始め、今でも続いている。
●かつて米には「初任給の3分の1」の価値が
1971年には、全国で650万ヘクタールの農地があり650万人の農家がいた。つまり1ヘクタールで生計が成り立つ時代だった。経費があまりかからなかった。私は農協に入った時の給料が2万3500円で、その時の米価が8500円だ。(新入職員)1ヵ月の給料の3分の1の価値が米にあったということだ。
今、農地は427万ヘクタールになり1割が耕作放棄地だ。農民は111万人ほどになった。昔は成り立っていた道路整備、水路掃除が成り立たない。今、高卒初任給が20万円くらい。仮にその5分の1でも4万円になる。4万円の米価でも、物価とスライドすれば高くはない。さすがに4万円は高いが。
●有機米の値段、20年間上げず
私の場合は家族型の農事組合法人を立ち上げ、田んぼ8町5反、畑で3町歩、有機農業をしている。私は有機の米の価格をこの20年間、1円も上げていない。キロ700円、5キロ3500円だ。
ただ世の中が安くなっても決して安くしない。これがぼくらの哲学、考え方だ。米の価値は流通業界が決めるものじゃない。生産者と消費者がお互いわかってあるべきだ。
●価格競争でもうける中間業者
かつて米価は、国が責任を持って決めていた。ところが米が余ってくると国の施策は減反一本やりになった。自主流通米制度が1970年にでき、競争を煽った。
価格競争になると、必ず中間業者が儲ける。毎日汗を流す農民以上に、大して汗もかかない流通業者がマージンと手数料でもうけるのはおかしい。生産者だけでなく、消費者も含め生活者全体の問題ととらまえていきたい。
●農家にほとんど回らない農業予算
農林予算にも苦言を呈したいのは、スマート農業は農機具メーカーに、区画整理、ほ場大型化の予算は土木業者にいく。そのお金を全部合わせれば農家への所得補償は可能なはずだ。
先ほど秋山組合長がいわれたように60キロ2万2000円なら安心して米が作れる。所得補償をぜひやってほしい。
●小学生と一緒に野菜作り
私は地元の小学校で、子どもたちに「何の野菜を食べたいか」聞いて、各学年でそれぞれ一つの野菜を一緒に作って学校給食で使う運動を始めた。防衛予算も大切だが、それより大切なのは明日の未来の子どもたちだと思う。
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