【稲作農家の声】大規模化一辺倒は周回遅れ 米自給は国防そのもの 藤松泰通さん(静岡)2025年6月9日
大規模農業にも難しさがあり、輸入依存は危険――。静岡県の米農家・藤松泰通さんは6月5日、国会内で開かれた「今こそ日本の食と農を守ろう緊急集会」で米論議の偏りを指摘し、農政転換を訴えた。
藤松泰通さん
浜松市は米の購入額が全国で第3位で、2位は静岡市だ。2023年は浜松市が1位だった。静岡県は日本一米を食べる県だ。しかし周囲の田んぼは年々荒れ果て耕作放棄地が増えており、借りて耕作するにも限度がある。
●備蓄米放出は一時しのぎ
備蓄米が放出されているが、夏頃には尽きるだろう。政府は今年の備蓄米の新たな買い入れを中止している。何か有事が起きても、もう配れる米はない。備蓄米放出は一時しのぎで米高騰の抜本的解決にはならない。気象庁は今年も昨年と同じくらい猛暑だと予想しており、イネカメムシも埼玉県では昨年の40倍も越冬したとの情報がある。農家も高齢化で去年より確実に減っている。収穫量が減る要素ばかりだ。
●大規模化一辺倒は砂上の楼閣
米不足解消のため、輸入拡大や農業大規模化の議論が起こっているが大いに疑問だ。米農家の倒産・休廃業は(昨年)過去最多となった。大規模経営体も含まれている。米価が高騰しているにもかかわらず倒産・休廃業が増えているのは、大規模化が必ずしも利益を生まない、持続しにくい構造になっていることを示しているのではないか。
肥料、農薬、種子すべてが高騰しているが、農業資材の90%は海外からの輸入に頼っていて、今後も高騰が続くと考えられる。大規模化を否定はしないが、大規模化一辺倒は、砂上の楼閣をさらに積み上げるようなものだ。日本の農地は細分化されており、ある面積を超えるとむしろコストが増加するというデータもある。私も面積は3町歩だが、43もの区画に分かれトラクターやコンバインが入れない区画もある。仮に集約化しても、アメリカやオーストラリア、中国との価格競争には太刀打ちできない。
●小規模農家なしには畔も水路も守れず
大規模農家が倒産、廃業に追い込まれれば、耕作していた莫大な面積の農地が荒廃していく。最終的には外資に売るという選択肢が現実味を帯びてくる。水路の維持、畔の草取りは小規模農家、兼業農家も含め地域で一緒に行ってきた。これらの農家を守らなければ水路も畔も維持できない。
EUでは小規模農家に所得補償を行い、農地と農村、生態系を守っている。日本とは比べ物にならないほどの面積を持つアメリカですら、政府は価格保障を設けて農業を支えている。日本では、今後10年で農家数が半減するとされているにもかかわらず、その深刻さを理解している国民は多くない。大規模化は国際的トレンドからみれば周回遅れの発想だ。
●輸入推進は「今だけ、金だけ、自分だけ」
また、安い輸入米が大量に入れば国内の稲作農家は壊滅する。米だけは日本で唯一、ほぼ100%の自給率を誇る。主食であるお米を海外に依存すれば、有事の際や、異常気象で輸出国に不測の事態が起こった場合、日本人は何を食べればいいのか。ポストハーベストという、輸出用作物にかける防カビ剤の安全性の問題もある。安易な輸入推進は「今だけ、金だけ、自分だけ」の発想だ。農業は単に利益や効率、金儲けだけではなく、国防そのものである。
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