【緊急寄稿・稲作農家の声】5kg3500円が適正価格 「このままでは農村が崩壊」 和田勝一さん(茨城)2025年6月10日
和田勝一さん(82)は60年以上茨城県那珂市瓜連で米作りに励んできた。現在の経営規模は40ha(飼料用米6ha、麦6haを含む)。茨城県農業機械士協議会会長や全国農業機械士協議会副会長、瓜連町議などを務め、仲間や後進の指導に当たってきた。妻と子ども2人の家族経営。は種などで年間に延べ約100人を雇用している。6月4日、間もなく田植えが終わるという和田さんに「今日の米の需給と価格高騰を現場はどう見ているのか」話を聞いた(客員編集委員 先﨑千尋)
育苗ハウスの前の和田さん
和田さんの農業用の装備は、トラクターが6台、コンバイン3台、田植え機3台、乾燥機4基で、年間の減価償却費は500万円を超える。コロナ禍のときには3年続けて販売高が3分の1ほど減り、赤字が続いた。農機具の修理はほとんど自分でやり、出費をできるだけ抑えている。そうすることで、他の農家よりも3倍は長持ちする。30年前は5haあれば十分に暮らせたが、資材費や燃料代、人件費の高騰などで苦しかった。昨年、米価が上がったことによってやっと息をつけるようになったと言う。
米がなければ生きていけない
――最近の異常とも言える「令和の米騒動」をどう見ていますか。
和田 車はなくとも生きていけるが、主食である米がなければ日本人は生きていけない。消費者の皆さんはこれまで、米は水や空気と同じようにいつでもあるものと考えてきて、米を作る農家のことは頭になかった。米と車とどっちが大事なのかをよく考えてほしい。この30年、米を作る百姓がどんどんいなくなり、あと5年もしたら、やる人がいなくなっちゃう。人の集まりがなくなり、このままでは米作りを支える農村の集落もなくなってしまう。山間部だと、田んぼは3年作らないと木が生えてしまう。そういうことをよく考えてほしいね。
――小泉進次郎農相の指示で始まった米5kgで2000円という最近の備蓄米放出については。
和田 やり過ぎ、場当たり的だ。その値段は安過ぎると思う。放出する備蓄米の数が限定されているので一時の騒ぎだと思うけれど、そういう安い値段の米が市場に出回ると、消費者は一過性のことだとは思わないで、それが当たり前だと思うようになる。それが怖い。
――国内生産で間に合わなければ、輸入すればいいという考えもあるが。
和田 百害あって一利なし。輸入するのではなく、国内で生産してそれを消費者に届けていけばいい。政治家もマスコミも消費者にばかり目を向けていて、生産者の方を向いていない。生産者がいなければ、米は一粒も作れないことを忘れてもらっては困る。
――備蓄米は別にして、今スーパーなどでは5kg4500円から5000円で売られています。どのくらいの値段なら農業経営を維持できますか。
和田 とにかく4500円は高過ぎる。生産者段階では、玄米60kgで2万2000円くらいならやっていけるね。消費者価格だと流通経費も含めて5kgで3500円くらいが適正価格かな。
何よりも価格の安定を
――米の生産調整をやめて、農家に自由に作らせろという意見が出ていますが、どう考えますか。
和田 急にやめるのは反対だ。政府は米の需給バランスを考えながらやってほしい。
――農政への要望は。
和田 生産コストを下げるのにはほ場整備は不可欠だ。それに、農家が安心して農業経営に取り組むには何よりも価格の安定が必要。我々はもうけようとは考えていない。
もう一つは、消費者教育。「農業は人間のいのちを支える大事な産業」なんだという考え方を持ってもらうようなPR、普及活動をもっと積極的にやってほしい。農家への直接支払い(所得補償)もやってほしい。これは農家のためというよりも、消費者への補助、援助になることだと思っている。
――農協への期待、要望は。
和田 合併して大きくなったからか、営農指導員がいない、足りない。いても我々を指導できない。むしろ我々から教わっているくらいだ。農家が困っていても農協には相談する相手がいない。場所もない。何とかしてほしい。
――「農協は自民党や農水省とグルになって価格をつり上げている」と発言している研究者や評論家がいるが、どう思いますか。
和田 そんなことはない。今の農協は集荷率(占有率)が低いので、市場価格を操作するだけの力がないのではないか。農協は、商人、商社とは違い、我々が作った組織だ。一部に、米を直接生産者から買えば安くなるのではないかという声があるが、そうはならない。消費者に直接届けるには、精米、袋詰め、発送などの細かい作業が必要。かえって高くなる。
米を作るのは我々農家の仕事。それをまとめて売るのが農協の役割だと思う。農協組織がなくなったら、商人や商社の言いなりになってしまう。農協批判の声に農協はどうして抗議しないのか。
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