【JA全農 25年産米 生産・集荷・販売方針】 米集荷 失地回復へ 藤井暁米穀部長に聞く①2025年4月15日
JA全農は3月初めに2025年産米生産・集荷・販売基本方針を決めた。24年産米の主食用等の最終集荷数量は、前年比86%と見込まれるなか、JAグループの総力を結集して失地回復をはかり、25年産では主食用集荷数量227万t(生産量の30%以上)をめざす。そのために新たな契約栽培取引の導入や既存の価格決定ルールの見直し、JAと連合会の役割分担を明確化した生産者推進などに取り組む。基本方針のポイントをJA全農米穀部の藤井暁部長に聞いた。
25年産227万トン(生産量の3割以上)必ず
JA全農は24年産米の集荷について以下のように情勢をまとめている。
集荷にあたって連合会は生産資材価格の高止まりなどを踏まえ営農継続と安定需要確保の両立を念頭に前年を大幅に上回る概算金単価を設定した。また、多くの県域で集荷・販売状況を踏まえて概算金の追加払いを実施した。その結果、JAグループの集荷量は全国平均で前年実績の86%を確保できた。
集荷苦戦踏まえ
しかし、一方で高値を提示した集荷業者への出荷も少なくはなく、事前契約が履行されずに販売先の信頼を大きく損なう事態も生じ、米の集荷・販売事業におけるJAグループの影響力低下が懸念される状況にあるとしている。
こうした「集荷苦戦」に至った要因について全農は以下のように総括し、4点を挙げている。
①十分な量を早期に確保したい需要者ニーズに対応するため、米の不足感を踏まえて集荷業者が明確な目標を持って集荷に臨んだのに対し、JAグループは当初の意識に差があった。
②集荷対応におけるJA・連合会間の役割分担の徹底が不十分だったことにより、担い手等への積極的な集荷対応を行った集荷業者に米が流出した。
③集荷業者の提示価格が概算金を大きく上回るなか、組織手続き等概算金の見直しに時間がかかり機動的に対応できなかった。
④全体需給の変動や、気候変動に対する高温耐性品種の普及や水管理の徹底など、外部環境の変化に十分対応できず、集荷苦戦の要因を排除できなかった。
全農はこうした総括をふまえて集荷回復に向けた具体策を決めた。
7年産米生産・集荷・販売基本方針の概要
全農米穀部 藤井部長
25年産米では集荷回復に全力を挙げるが、将来にわたって持続可能な水田農業を確立する観点から、主食用のみならず水田活用米穀も含めたすべての品目について需要に応じた生産を継続することが基本だ。
そのうえで、24年産米の集荷では明確な目標を持って集荷に臨んだ集荷業者に米が流出したという反省を踏まえ、25年産では、実需者に結びついている販売先、実需者と産地の結びつきに協力的な販売先などを戦略的に選定するとともに、「売り先をイメージしてしっかり届ける」という明確な意思のある取扱計画を策定して集荷に臨み目標達成を図る。
目標数量は全国で227万t(もち米・酒米を含む。生産量の30%以上)を必達目標とする。
そのため各県はこの全国目標を踏まえ、JA別目標を設定してJAと共有するとともに、生産者別目標の設定をJAに依頼する。JAは23年産米の集荷実績などを手がかりに、重点的に推進するターゲット生産者の設定も含めて生産者別目標を設定する。
新たに「営農継続可能な契約栽培取引」導入
新たな契約手法の導入と既存の価格決定ルールの見直しも行う。
現行の出荷契約では、営農継続可能な生産者手取りを担保する契約となっていない。そのため今年度からは生産者・JA・全農(連合会)間の結びつきを強め、生産者の営農の安定と販売先への安定取引を確保する「営農継続可能な契約栽培取引」を導入する。
これは再生産可能となるよう生産コストが確保できる水準を下限価格とし、それに集荷コストや流通コスト、手数料等を上乗せした価格を買い手の下限価格とするもの。さらに需給や集荷競争などで変動する市況も上乗せし生産者手取りを増やす。
これまでも、は種前契約であらかじめ価格を決めた取引も行われているが、24年産のように米価が上昇しても、そうした契約では価格変動が反映されず、出荷者にとって、は種前契約を締結したことが「損」ということになってしまう。
そのために再生産可能となる生産費が確保できる下限価格に加えて市況を反映させる取引とする。この契約栽培取引を行う生産者は契約した数量を必ずJAに出荷する必要がある。こうした取り組みによって生産者の営農の安定と販売先への安定取引を確保する。
また、24年産では生産者がJAとの間で結ぶ出荷契約について、その履行率が例年より10%程度低下する見通しだ。
そのため出荷契約の履行率向上に向け、JAに取り組みを提案する。たとえば出荷数量が出荷契約対比で一定の範囲内を達成した生産者に奨励金を支出したり、逆に契約数量を大きく下回る出荷数量の場合は違約措置を発動するなどだ。
同時に、販売先と生産者との交流プロジェクトなどを通じて、結びつきの強さの「見える化」をはかり、「消費地で待っている人がいること」を明らかにして生産者に出荷契約したものを出荷いただく意識を醸成することも推進する。
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