米農家の実態調査 6割以上が利益還元を実感 「ようやく適正価格」の声も 食べチョク2025年5月26日
産直通販サイト「食べチョク」を運営するビビッドガーデンは、2024年から日本全国で続く米価格の上昇と供給不足をうけ、生産現場で実際に起きている変化を把握・発信するため、登録生産者に対して緊急実態調査を実施。調査は5月16日~21日の期間、食べチョクに登録している全国の米の生産者にインターネットによる任意回答で行われ、111人から回答を得た。
同調査の結果、今回の価格上昇に伴い利益の増加を実感している生産者は60%超に上った。一方、令和6年産米の2024年9月時点の相対取引価格について約52%の生産者が「依然として安い」と回答。また、酷暑や水不足の影響により、収量の減少や2等米・3等米の割合増加などの変化を感じている生産者もいる。一時的な価格変動ではなく米の持続的な生産に直結する構造的な課題が浮き彫りになった。
令和6年産の米の供給は逼迫。約34%が増産方針を検討
令和6年産米について、「在庫が逼迫している」もしくは「在庫が無い」と回答した生産者は全体の約85%。一方で、「毎年余っていた米が今年はすべて完売した」と喜ぶ声も多く寄せられた。
作況指数と比較して42%が「自身の生産量は指数より少ないと感じる」
令和6年産米の生産量について、「農林水産省が発表している作況指数の『101』と比較して自身の生産量は少ないと感じる」と回答した生産者は、全体の42%に上った。その理由として「夏の酷暑や水不足、水温の上昇によって米の品質が低下し、2等米・3等米の割合が増えた」と挙がった。
作況指数は玄米の数量ベースで算出される指標。品質低下により等級が下がると、精米時に砕ける米の割合が増え、実際に流通可能な量が減少することも、乖離の一因と考えられる。
現在の価格は「ようやく適正」の声も。半数以上が「まだ安い」と回答
令和6年産米の市場流通における相対取引価格の平均は、2024年9月時点で玄米60kgあたり2万2700円で、同時期の小売価格の平均は3000円から3500円程度。この価格について「妥当」と感じる生産者が約38%、「少し安い」または「とても安い」と感じる生産者が約52%を占めた。
生産者からは「肥料・燃料・人件費などのコスト上昇は長年価格に反映されてこなかった。ようやく適正価格に近づいた」といった声も寄せられた。
約34%の生産者が作付面積を拡大予定
米の需要増加をうけて「今後主食用米の作付面積を増やす予定はあるか」という質問には、「増やす予定はない」と回答した生産者が約55%。一方で「増やす予定」と回答した生産者は約34%に上った。手段としては「飼料用米からの転換」や「新たに土地を買い取る」などが挙がった。
また、令和7年産米の単収(面積10aあたりの米の生産量)の見込みについては約20%が増える見込み、約44.6%が平年並みという結果だった。
価格を決定できる直販の割合を増やす生産者が約32%
令和6年産米の販路と令和7年産米の販路(予定)を比較した時、直売所や産直ECなどの直販での米の販売割合を増やす方針の生産者が約32%。今回の需要の高まりをうけ、安定した収入の確保に向けて見直す生産者も出てきている。
生産者の声
「近隣ではどの家も在庫が空になり、今年は張り切って田植えをしている。地域での販売価格は例年の1割増くらいだが、長年売れなかった米が出払い、生産者の表情も明るい」(群馬県・米生産歴15年以上)
「コロナ禍で売り上げが下がり施設や機械の更新が出来ず厳しい思いをした生産者が多いので、価格が上がることはとても助かる。ただ、価格が上がり過ぎて米離れに繋がるとまた価格が暴落してしまうのではと心配している」(長野県・米生産歴20年以上)
「今まで米はあって当たり前で、価格も長年同じだった。しかし、米の生産コストである資材や機械の高騰で、農家の所得は減少している。本来5kgあたり3500円以上はないと持続的な生産は厳しい状態。後継者の育成のためにも理解してもらえると嬉しい」(山形県・米生産歴10年以上)
「購入する側も、栽培する側も、お互いが持続可能な関係づくりを意識していただけるとありがたい。ただ安くなってほしいとか、高くしないと生産者が続かないとか、片側の利害だけを強調しても解決せず、互いの状況を理解することが必要だと感じる」(北海道・米生産歴5年以上)
「米不足の中、今年から米作りをやめる生産者が周りに多い。昨今の夏の暑さは過酷で、草刈りや水管理など今までできていた作業が危険な作業になってきたことも理由の一つと感じる」(愛知県、米生産歴20年以上)
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