【クローズアップ 中酪上期生乳生産量】過剰下の増産続く 北海道207万トンと最高更新 農政ジャーナリスト・伊本克宜2021年10月19日
コロナ禍、天候不順に伴う乳製品過剰下での生乳増産が改めて浮き彫りとなった。中央酪農会議がまとめた2021年度上期(4~9月)生乳生産は前年同期比102・1%、北海道は同102・5%の207万トン超と最高を更新。乳製品在庫対策が一段と問われる。
■都府県は関東が50万トン突破
中酪は15日、上期生乳生産(速報値)をまとめた。
生産伸び率は指定団体ごとにばらつきがあるものの、東北を除き前年度比で増産した。同99・1%とわずかに下回った東北も、9月は100・5%とプラスに転じている。
◎主要指定団体の上期生産量 千トン 前年度対比%
・北海道 2077 102・5
・東北 253 99・1
・関東 527 102・9
・東海 163 101・3
・中国 148 102・1
・九州 299 101・2
・都府県 1556 101・6
・全国 3633 102・1
特に増産が目立つのは北海道に次ぐ生産量を持つ関東だ。既に上期で50万トンの大台を超えた。9月には同105・5%と増産のテンポが一段と高まった。用途別の内訳を見ると、関東は主力の牛乳など「飲用牛乳等」が102・8%となった半面、脱脂粉乳、バターの乳製品仕向けは116・9%で、夏場の生乳最需要期であるにもかかわらず、生産量の割には飲用が伸びず保存の利く乳製品加工で対応したことを物語る。
■北海道は乳牛頭数増加
全国生乳生産の6割近くを占める北海道は、20年度上期に初めて200万トンを超えた。今年度はさらに上回る207万7000トン。9月のホクレン受託乳量も103%に伸びを続けている。
異例の猛暑で8月前半に一時落ち込んだものの、気温が低くなるのに従いV字回復し、結果的に乳製品需給緩和につながっている。最大の要因は乳牛頭数の増加だ。生産の主力となる2~4歳雌牛は34万5000頭で、前年から3%増の1万頭以上も増えた。大型牧場を中心に規模拡大が続いている。年度末に向けてさらに増頭を見込む。
■補給金対象数量オーバーも
上期の用途別販売乳量のうち、北海道に注目すると、バター、脱粉は同108%の78万7650トンで、乳製品在庫が拡大している。一方で需要増が期待されるチーズ向けは同105・8%、生クリームなど液状乳製品は108・0%で、コロナ感染が急拡大した1年前に比べ消費回復も目立ち、需給改善の好材料もある。
ただ、Jミルクが1日に発表した最新の21年度需給見通しは、今年度の乳製品向け生乳は前年度比106・4%の351万4000トンとした。加工原料乳生産者補給金と集送乳調整金の総交付対象数量345万トンを6万トン以上も超過する見込みだ。超過分は交付金助成の対象から外れるため、その分、酪農家の手取り乳価減少つながりかねない。
■「入り口」対策も模索
乳製品過剰が一段と深刻となる中で、生乳需要拡大と増産ペースを抑えようとの模索が続く。いわば「出口」対策と「入り口」対策をどう実現するかだ。
これまでは、コロナ禍の業務用需要激減に対応した輸入代替措置など「出口」対策が取られてきた。しかし、もう一段踏み込んだ需給改善が欠かせないとして、主産地・北海道は増産アクセルを緩める「減速」に踏み切る。ホクレンは「生産基盤を毀損しないことを大前提に内容を早急に詰める」としている。
需給改善を図るために、22年度の具体的数字は21年度生産目標数量(約411万8000トン)の101%にとどめる「微増計画生産」に転じる方向だ。ただ北海道だけでは乳製品過剰解消の効果は限定的で、全国規模で生産抑制的な対応がカギを握る。
■乳業も新商品投入
特にだぶついているのが脱粉だ。需要で大きな割合を占めるヨーグルトの消費拡大が欠かせない。乳業メーカーも新商品投入でマーケットの活性化に努力している。
先週14日、大手乳業の一つ、森永乳業の大貫陽一新社長はメディアとの会見で、生乳需給緩和との関連し新商品投入で消費拡大に意欲を示した。機能性ヨーグルトのラインアップだ。新たに認知機能に効果がある「メモリービフィズス記憶対策ヨーグルト」の発売を始め、先週末には大手全国紙で一面広告を打ち、テレビCMも始めた。明治、雪印メグミルク、よつ葉乳業など他大手も相次ぎ新商品開発に力を入れている。注視したい。
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