「毎日1.5tの生乳廃棄 魂踏みにじられるよう」 畜産農家が危機的状況訴え 農民連が集会2022年12月22日
さまざまな資材高騰などで畜産農家がかつてない危機に直面する中、「農民運動全国連合会」(農民連)は12月22日、東京・永田町の衆議院第一議員会館を主会場にオンライン集会を開き、参加した畜産農家らが「生乳を絞れば絞るほど赤字で災害級の緊急事態だ」「毎日1.5tを廃棄しており、自分の魂が踏みにじられるようだ」などと窮状を訴えた。同団体は同日、生産農家から集めた署名とともに畜産農家への抜本的な支援を求める緊急要望書を農水省に提出した。
「日本から畜産の灯を消すな!」と題してオンラインで開かれた集会(衆議院第一議員会館で)
「日本から畜産の灯を消すな!」と題してオンラインで開かれた集会には、全国各地の畜産農家や市民団体など100人以上が参加した。
はじめに農民連の長谷川敏郎会長が「多くの酪農家から先の見通しが立たないという声が寄せられている。政府与党や農水省から真剣に自体を打開しようという姿勢は感じられず、このまま放置すれば日本から畜産、酪農の灯が消えてしまい、酪農家への緊急経営維持資金の支援が必要だ」などと述べた。
このあと会場やオンラインを結んで酪農家が相次いで発言した。
北海道の小野寺孝一さんは「農協に加盟する酪農家のほとんどが赤字経営で、絞れば絞るほど赤字の状態です。12月で辞める農家が2戸あり、芋づる式にならないか不安を抱えながら営農していますが、酪農家は災害級の緊急事態です」と訴えた。
また、千葉県の酪農家の金谷雅史さんは交流している北海道の酪農家から届いたメッセージを読み上げた。この中で金谷さんは「いっぱい餌を食べさせて育てた牛を淘汰などとてもできず、毎日の出荷乳量7tのうち1.5tを廃棄しています。情けなく、悲しく魂を自分で踏みにじるような思いだと話されています」などと報告した。
神奈川県の吉田雅章さんは「組合からお金を借りて経営する農家は返したくても乳価が上がらずに牛や機械を担保に入れる状況まで追い込まれている。全国の酪農家が窮地に立たされている」と訴えた。
長谷川会長(写真左)から署名とともに渡された緊急要請書
このあと会場には農水省の職員が招かれ、長谷川会長から、畜産危機の克服に向けた抜本的支援を求める緊急要請書を手渡した。署名の提出は4回目で、合わせて1006人に上った。
要請書では、日本の酪農・畜産があらゆる生産資材が高騰する一方で乳価や畜産物価格に転嫁できず、最悪の危機に直面していると指摘。従来の政策の延長・拡充では畜産農家の危機を解決できないとして、畜産農家が経営を継続できるようコスト上昇分を全額補てんすることや、生乳価格の生産者団体と乳牛メーカーとの対等な価格交渉に政府が責任をもち、イニシアチブを発揮すること、畜産クラスター事業などで資金償還が迫っている農家への支援を求めた。
署名を渡したあと会場では質疑応答が行われ、申し入れの内容に対し、農水省の担当者は「生乳の価格交渉などは民間と民間で行われるもので国がコントロールすべきではないと考えるが、在庫調整などの支援を通して需給改善を後支えしたい」などと答え、理解を求めた。
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