パラミロン配合飼料の給与でニワトリの獲得免疫能が向上 可能性を確認2025年1月29日
宮崎大学とユーグレナ、あすかアニマルヘルスは、共同研究により宮崎大学で実施した微細藻類ユーグレナ貯蔵多糖であるパラミロンを配合した飼料の給与によって、ニワトリの獲得免疫能の向上を示すことを確認。この研究結果を1月24~26日に開かれた「第42回日本獣医師会獣医学術学会年次大会」で発表した。
畜産業界では、健康を維持しながら効率的に育つよう、家畜に与える飼料の面からもその免疫システムを増強し、病気への抵抗力を高める取組みが国際的に進められている。国連食糧農業機関(FAO)では、抗菌剤の使用を抑え家畜の健康を促進する飼料の利用が強く推奨されている。
これまでユーグレナ社は、ユーグレナおよびその希少成分であるパラミロンがヒトの免疫維持、調節に機能することを示唆する研究成果を発表。ユーグレナの希少成分であるパラミロンは、きのこなどに含まれるβ-グルカンと呼ばれる細胞内貯蔵物質として生成される多糖類で、食物繊維の一種。ヒトや動物が摂取すると粘膜免疫系の免疫細胞に働きかけて免疫賦活作用を発揮すると考えられ、ニワトリに対しても同様にその効果をもたらし、健全な成長をサポートできる可能性がある。
同研究では、パラミロン配合飼料給与によるニワトリの肉用品種であるブロイラー雛の免疫および成長への影響を検討。生後7日齢のニワトリ(Ross308)に、パラミロン粉末無配合飼料(以下、「①Control」)、パラミロン粉末を飼料1kgあたり25mg、50mg、100mg(以下、それぞれ「②25mgPA」「③50mgPA」「④100mgPA」)を配合した飼料を21日間給与し、14日齢時にキーホールリンペットヘモシアニン(以下「KLH」)を投与し、試験終了時に下記の測定項目を比較した(一元配置分散分析もしくはTurkey検定、片側α=0.05)。
試験終了時におけるニワトリの平均体重は、①Controlと他の試験区間に有意な差はなかったが、獲得免疫に関わるT細胞の分化が起きる一次リンパ器官である胸腺のリンパ球サブセット解析では、CD4陽性T細胞の相対的比率が①Controlに対してその他の試験区全てで有意に高くなった。CD8陽性T細胞の相対的比率は①Controlに対して③50mgPAで高くなる傾向(P=0.1)だった(図1)。
図1:胸腺サブセット解析
血中に侵入した抗原に対する免疫応答を行う二次リンパ器官である脾臓のリンパ球サブセット解析では、それぞれ相対的比率は①Controlと比較して、CD4陽性T細胞では③50mgPAおよび④100mgPAで有意に高く、CD8陽性T細胞で②25mgPAで有意に高く、CD4陽性CD8陽性T細胞で③50mgPAおよび④100mgPAでも有意に高くなった(図2)。また、同組織でB細胞の相対的比率は①Controlと他の試験区間に有意な差はなかった。
図2:脾臓サブセット解析
同じく二次リンパ組織である盲腸扁桃のサブセット解析においてCD8陽性T細胞の相対的比率は①Controlと比較して、④100mgPAで有意に高くなった(図3)。また、B細胞の相対的比率はMHC classⅡ発現B細胞で①Controlに対して④100mgPAで有意に高くなった(図4)。
図3:盲腸扁桃サブセット解析(T細胞)
図4:盲腸扁桃サブセット解析(B細胞)
14日齢時にニワトリの翼静脈中にKLH抗体を投与して21日齢時に血中のKLH特異的抗体価(IgMおよびIgY)を測定したところ、血中IgMは①Controlに対して、④100mgPAで高くなる傾向(P=0.07)があり、血中IgYは①Controlに対して、④100mgPAで高くなる傾向(P=0.06)があった(図5)。
図5:抗KLH抗体価
以上の結果から、ニワトリにパラミロン配合した飼料を給与することによってその獲得免疫能を向上することが示唆された。研究結果を踏まえ、今後はニワトリに対するユーグレナ給餌に関する影響についても研究を進める。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日