不動産会社の地域密着に学ぶ 千葉県大網白里市から(1)【全中・JA経営ビジョンセミナー】2024年2月16日
JA全中は1月16、17の両日、千葉県の大網白里市の大里綜合管理株式会社で「JA経営ビジョンセミナー」第3セッションを開催した。今回フィールドワークの現場となった同社は不動産業をメインとする企業だが、住宅・土地の売買だけでなく、留守宅や土地の管理などによる地域の住環境を整備・保全するとともに、コンサートや講演会の開催など、教育文化活動にも力を入れ、地域になくてはならない企業として存在感を高めている。セミナーでは、同じように地域で生きる組織であるJAとして、どのようなパーパス(存在意義)があり、それを実現するために必要なことなどについて議論を深めた。
"心地よい空間"考え
環境整備を第一に
ラーメン店とカフェに再生した古民家の前で野老会長(左から3人目)と社員
大里綜合管理㈱は、2024年に創業50周年を迎えて定めた中期事業構想のなかで、「お客様第一主義を貫き、環境整備を徹底し、創意あふれる地域活動を、本業と合わせて展開し、人づくり、まちづくりを担う企業として、この地域になくてはならない会社にします」とうたい、「お客様第一主義」と「環境整備」を強調している。
同社の不動産業が対象とする住宅・土地は地域に存在しており、おのずと地域密着の事業となる。従ってその地域が、雑草で景観を損ねると不動産価値も下がる。そのため、本業と合わせて環境整備を徹底。それがさまざまな地域活動に発展した。
大里綜合管理の野老真理子会長は「創立以来、仕事を続けてこられた九十九里地域に感謝し、この地域で仕事する社会的責任のある企業として豊かなまちづくりを担う必要がある」と、地域活動の意義を強調する。現在、地域活動は道や駅のクリーン活動に始まり、各種のコンサート、地域の主婦がワンデイシェフになるレストランなど、地域のニーズをくみ取り、実に300件近い地域活動を行っている。
特にクリーン活動は、駅と海、道路で実施。地域の13の駅、5カ所の海岸、それに地域内の一般道で、毎月1回、30分から1時間ごみ拾いを実施。特に道路のクリーン活動は、社員だけでなく地域の住民や商店、企業なども参加しており、これまで10年続けている。
朝7時、ガードレールを清掃する社員。セミナー参加者も体験。
地域活動で存在感
事業とは直接つながりのないかのように見える、こうした地域活動は、社員の労働時間の約4割に達する。だが、これが確固たる信頼につながり、地域での存在感を高めることにつながった。猫の死骸を片付けてほしいというような相談にも対応するという。頼まれれば高齢者を病院まで送迎することもあり、地域になくてはならない存在になっている。
同社は、すべての活動の原点に環境整備を位置づける。事務所内を清潔に保つことはもちろん、仕事をする場所や、使うモノはより機能的で美しくしたいと考えている。これを受けて、社員は毎朝1時間、事務所内の掃除と整理整頓を行う。「会社を訪れた人が温かく、心地よく迎えられる空間と空気をつくっていきたい」と石井俊晴社長は言う。
SDGsも視野に
こうした考えの延長線上にはSDGsへの取り組みがある。太陽光発電のパネルの設置もその一つ。農地としての利用を考え、パネルは3m以上の高さにある。パネルの下でトラクターが自由に作業できる。立体的に活用することで農地の効率的な利用ができる。
農地の立体的利用の太陽光発電パネル
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日