全農「営業開発部」新設に思う【NPO野菜と文化のフォーラム監事 今野 聰】(上)2017年9月28日
農業協同組合新聞8月30日付「直販事業拡大へ 『営業開発部』を新設」を注意深く読んだ。すでに「日本農業新聞」(8月24日付)1面記事で衝撃を受けていた。本紙には精米営業開発課と青果営業開発課が並立新設、9月1日付け人事異動メンバーもあった。
今回のニュース内容を要約すると、(1)今年3月決めた事業改革の年次計画で、2024年度の直接販売計画が、米で9割、園芸品目で取扱額の半分5500億円、(2)約20人体制で立ち上げ、(3)イトーヨーカ堂元社長の戸井和久チーフオフィサーを司令塔とする、(4)全農各販売部門や全農ミートフーズなどグループ販売6社と連携する、(5)eコマース(電子商取引)、物流合理化にもとりくむ。以上だろう。
◇ ◇
このニュースを理解するために、少し古いが、全農が最初に直接販売部署を新設した経過と、事業推進経過を振り返っておきたい。今回の記事では、過去の経過がすべてカットされているからだ。
私はかつて1977(昭和52)年2月、全国農協直販株式会社(1972年設立)から、新たな首都圏販売対策準備室に異動した。ここでは合併5年後の経験を踏んだメンバーが4カ月の準備作業をした。こうして7月新年度から、長期5か年計画を踏まえた、新たな首都圏販売事業部と近畿圏販売事業部に移行した。
◇ ◇
当時の食品流通業界にも触れておこう。当時は誰の目にもスーパーマーケット全盛時代だった。その中で圧倒的にダイエーが全国制覇を目指しつつあった。そして神戸地区で拮抗していたコープこうべが全国の生協陣営とともに、COOP型SM店の新店を展開、一方店舗のない生協共同購入組織は雨後の筍のような混戦状態だった。
また、コンビニ業界が急成長中だった。おにぎり販売が始まったばかりで、コンビニ向け商品はいまだ未成熟、行き着くところはどこか、よく見えなかった。
また70年代中葉にファミリーレストラン業態が急伸、大都市郊外の高速道路網に沿って店舗展開が進んでいた。ファストフード店が広がった。都心型の居酒屋チエーーンは草創期だった。惣菜・デリカが新たなジャンルとして追求された。先進スーパーでは小さなコーナーが設置された。そのなかから「中食」というジャンルで専門店が芽を吹きだしつつあった。
さて農協店舗陣営。70年代の全国展開したAコープ店は首都圏で神奈川県経済連が奮闘。長野県連、広島県連、鹿児島県連など地域突出地域を形成し、日本列島を不連続線でつないでいた。その勢いが全国各県の店舗事業以外の生活事業に勢いを作り出してもいた。その中にあって、ロードサイドにポツンとあったのが農協直営の直売所だった。それが1990年代から全国各地に広がった。
最後に百貨店(デパート)。この国の消費マーケットを戦前から主導してきたシニセ業態である。新勢力に押されつつあったとはいえ、主要都市の中心街に店舗を構えていた。配送業者は大型貨物を除けば、デパート各店配達・納品がメインで、クロネコヤマトのデパート向け離脱・家庭個別配達は模索段階だった。
当時、通産省主導の大型店舗出店規制は店舗規模別規制など様々な方法で政策の目玉だった。一方、農林水産省の食品流通行政は、自主流通米制度の自由さは広がっても、あくまで制度流通だった。ただし生鮮品について全農生鮮食品集配センターなど一部バイパス流通を推進しながらも、既存の中央卸売市場制度維持は変わらなかった。
◇ ◇
全農の1977年7月の新機構では、さっそく首都圏広域展開スーパーと協賛して「農協フェアー」を行う。都心デパートと協賛して「全農大収穫祭」を行うなど、広く消費者国民にアピールする販促活動からスタートした。そこから日常の営業活動に移った。
こうした直販営業活動は、業態別営業活動の濃密化なしには成り立たない。一定の販促活動費の投入も必要だった。つまり系統組織内から外に打って出る営業活動である。同時に、全農を代表するNB(ナショナル・ブランド)の創造展開が必要だった。当時身近なNBは「農協牛乳」、「パールライス」など数えるほどだった。全国各地の地域ブランドを有効に組み合わせることに習熟していたとはいえない。一層の拡大集中が求められた。
・全農「営業開発部」新設に思う【NPO野菜と文化のフォーラム監事 今野 聰】(下)(17.09.29)
重要な記事
最新の記事
-
【解題】基本法改正は食料安保をめぐる現場での課題にどう応えようとしているのか 谷口信和東大名誉教授2024年4月23日
-
第18回全農学生「酪農の夢」コンクール「学校賞」新設 作品募集中2024年4月23日
-
元卓球日本代表・石川佳純が全国を巡る卓球教室 大分で開催 JA全農2024年4月23日
-
運営9年目・稼働率約9割 地域に喜ばれる貸出農園事業を展開 JAマインズ2024年4月23日
-
量販店等に終売通告を行う白米卸も【熊野孝文・米マーケット情報】2024年4月23日
-
【JA人事】JAむかわ(北海道)長門宏市組合長を再任(4月10日)2024年4月23日
-
【JA人事】JAとうや湖(北海道)高井一英組合長を再任(4月12日)2024年4月23日
-
農繁期の人材確保へ「いわて農業未来プロジェクト」支援開始 タイミー2024年4月23日
-
栃木県那須塩原市 道の駅「明治の森・黒磯」リニューアルオープン2024年4月23日
-
いちご生産量日本一 栃木県真岡市のPR動画「もおかのいちご物語」公開2024年4月23日
-
「夏のさつまいも博2024」さいたまスーパーアリーナで7月4日から開催2024年4月23日
-
知財功労賞「経済産業大臣表彰」を受賞 ブランド戦略とユニークな登録商標の活用が評価 サタケ2024年4月23日
-
令和5年冷凍食品の生産・消費調査 出荷額は7799億円で過去最高 日本冷凍食品協会2024年4月23日
-
農業を志す学生450人が来場「食品・農業就活サミット」開催 シンクロ・フード2024年4月23日
-
全国道の駅公式オンラインショッピングサイト「道の駅マルシェ」オープン2024年4月23日
-
千葉県市原市「第42回 市原市園芸まつり」開催2024年4月23日
-
食や農業の未来に「あったらいいな」を募集「未来エッセイ2101」AFJ2024年4月23日
-
その場で当たりが分かる「甘果にんじん」春キャンペーン開催 ファーマインド2024年4月23日
-
シードル生産者が大阪に集結「Osaka Cider Festival大阪林檎酒祭り」開催2024年4月23日
-
サラダクラブ産地表彰式 第8回「Grower of Salad Club 2024」開催2024年4月23日