「山形セルリー」を地理的表示(GI)登録 JA山形市2018年4月10日
農水省は4月9日、地理的表示法(特定農林水産物等の名称保護に関する法律)に基づき、「松館しぼり大根」(秋田県)、「対州そば」(長崎県)、「山形セルリー(山形県)」を登録した。
今回、登録された特定農林水産物の登録番号、名称、登録生産者団体、生産地は次の通りで、これで登録された産品は62となる。
▽登録番号60、松館しぼり大根、松館しぼり大根栽培組合、秋田県鹿角市八幡平字松館地区
▽登録番号61、対州そば、対州そば振興協議会、長崎県対馬市
▽登録番号62、山形セルリー、山形市農業協同組合、山形県山形市内
山形セルリーは、昭和43年に若手農業者の会田和夫さん(JA山形市セルリー部会長)ら4名がセルリーに注目し、栽培技術を取得するためにセルリー栽培の第一人者だった伊藤仁太郎氏(東京都江戸川区、故人)の下で研修し、44年から山形市内で栽培を開始。栽培当時は困難を極めたが、生産者の努力で数年後に良質なセルリーが栽培できるようになる。スラリとした姿形で葉柄が太すぎず成長しても繊維が柔らかく、シャキシャキとして瑞々しい食感やセルリー独特の苦みが少なく、甘みが感じられる柔らかい風味など、品質の良さが評価され、仙台市場などから「すぐにでも数量を確保して出荷して欲しい」といわれるほどになる。
しかし、生産者の高齢化などから平成9年の部員数26名、出荷額1億円超をピークに作付面積が減少し、せっかく培ってきた栽培技術の継承が難しくなった。
こうした状況のなかJA山形市は平成26年8月に、「東北唯一の産地であり、山形の風土と先人たちが育んできた『山形セルリー』を後世まで継承発展させる」ために、「『山形セルリー』農業みらい基地創生プロジェクト」をJA全農山形と立ち上げる。
このプロジェクトは、新たな担い手育成と新規就農者受け入れを目的に、市内の休耕田などを借り受け、県や市の補助も活用してセルリーハウス団地形成を5か年で80棟整備する計画で27年度栽培ハウス18棟、28年度栽培ハウス17棟と育苗ハウス1棟を整備。29年度にはICTを活用しほ場センサーを付帯した農業の「見える化」を実施し、栽培ハウス16棟と農業機械を整備。30年度は16棟を予定しており、プロジェクト4年で67棟・6131坪を整備している。
JAでは32年までにさらに5haの農地を借り上げ、栽培ハウス80棟を整備し、出荷額をピーク時の約1.5倍である1億5000万円まで増やす計画だ。
現在、セルリー部会員は20名で新規就農者が7名いるがそのうちの5名は全くの非農家出身。2年間の新規就農研修を受けてサラリーマンから転職、就農した新規就農者だという。ことし3月にはさらに1名新規就農者が増えた。
現在は、他の主産地の端境期に出荷することを目標に、通常は年1作のセルリー栽培を、ハウスを活用した独自の作付体系で、春どり・秋どりの年2作の栽培体系を構築し、東北随一のセルリー産地として、仙台市場や東京市場で、消費者も含めて高い評価を得るブランドに成長している。その結果、平成25年の出荷量177t、4084万円が29年には284t、7831万円にまで伸長している。
もうひとつ特筆すべきことは、多くの産地ではGI登録するために、コンサルタントなど外部の専門家に委託し、かなりのコンサル料を支払っていると聞くが、今回のJA山形市ではそうした外部の力は「いっさい借りずにJA職員が電話やパソコンを駆使して自力で行った」ということだ。これもこれからGI登録を考えているJA・産地は参考になるのではないだろうか。
(いずれの写真もクリックすると大きな写真が表示されます)
(関連記事)
・地理的表示保護で最新レポート(18.03.23)
・本物の「八丁味噌」は? GI登録で不服審査請求(18.03.19)
・「水戸の柔甘ねぎ」GI登録 生産部会が栽培・品質管理 JA水戸(18.02.08)
・日欧EPA協定のGI保護-「パルメザン」は対象外(17.12.20)
・入善ジャンボ西瓜など地理的表示(GI)に新たに10品目(17.12.19)
・JAにとって信用事業はなぜ必要か(17.03.13)
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】果樹などにチュウゴクアミガサハゴロモ 県内で初めて確認 兵庫県2025年12月16日 -
【特殊報】トマト青かび病 県内で初めて確認 栃木県2025年12月16日 -
【プレミアムトーク・人生一路】佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏(中)農村医療と経営は両輪(1)2025年12月16日 -
【プレミアムトーク・人生一路】佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏(中)農村医療と経営は両輪(2)2025年12月16日 -
鳥インフルエンザ 兵庫県で国内7例目を確認2025年12月16日 -
「第3回高校生とつながる!つなげる! ジーニアス農業遺産ふーどコンテスト」受賞アイデア決定 農水省2025年12月16日 -
「NHK歳末たすけあい」へ150万円を寄付 JA全農2025年12月16日 -
米の流通に関する有識者懇話会 第3回「 研究者・情報発信者に聴く」開催 JA全農2025年12月16日 -
【浅野純次・読書の楽しみ】第116回2025年12月16日 -
北海道農業の魅力を伝える特別授業「ホクレン・ハイスクール・キャラバン」開催2025年12月16日 -
全自動野菜移植機「PVZ100」を新発売 スイートコーンとキャベツに対応 井関農機2025年12月16日 -
Eco-LAB公式サイトに新コンテンツ開設 第一弾は「バイオスティミュラントの歴史と各国の動き」 AGRI SMILE2025年12月16日 -
国内草刈り市場向けに新製品 欧州向けはモデルチェンジ 井関農機2025年12月16日 -
農機の生産性向上で新製品や実証実験 「ザルビオ」マップと連携 井関農機とJA全農2025年12月16日 -
農家経営支援システムについて学ぶ JA熊本中央会2025年12月16日 -
7才の交通安全プロジェクト 全国の小学校に横断旗を寄贈 こくみん共済coop2025年12月16日 -
北海道上川町と未来共創パートナーシップ協定を締結 東洋ライス2025年12月16日 -
米が結ぶ人のつながり特集 情報誌『のんびる』1・2月号受注開始 パルシステム2025年12月16日 -
天然植物活力液HB-101「フローラ公式ネットショップ」サイトリニューアル2025年12月16日 -
静岡県発いちご新品種「静岡16号」名前を募集中2025年12月16日


































