京野菜の担い手をTACが支援 JA京都中央2018年11月26日
・現場で営農支える「TAC」
・毎週発行の情報誌400号
JA京都中央は京都市、向日市、長岡京市、大山崎町からなるJAである。農地と住宅が混在する地域で、京みず菜、壬生菜、九条ねぎ、花菜、京たけのこなど伝統ある京野菜を中心に、キャベツ、ナス、レタスなど、きらりと光る野菜農家が少なくない。同JAのTACは営農指導を中心に担い手農家の相談役となり地域農業を支えている。他にも情報誌やインターネットを駆使した情報発信に力を入れ、JAの営農販売事業と農家の架け橋となっている。
(写真)新規参入の松井さんに「営農ウィークリーNEWS」を届ける齊藤TAC
京都の郊外、長岡京市の乙訓(おとくに)地区で野菜を栽培する松井健吾さん(41)のほ場を訪れたJA京都中央のTAC齊藤篤さん(37)。同JAの営農販売課が発行する情報誌「営農ウィークリーNEWS」を手渡すと、さっそく野菜の話になった。「キャベツの生育が少し遅れているようだが...」。齊藤TACの日々のTAC活動の一コマだ。
松井さんは、サラリーマンをやめて就農したUターン農家だ。夏秋ナスを始めたが、栽培の経験がなく困っていた。それを聞いた齊藤TACは、訪問先に技術力の高いナス生産農家があることを思い出し、さっそく講師に招いて希望者を集め「なす塾」を開いた。松井さんは、学んだ技術を生かして日々努力を重ね、広域的なナス立毛品評会で最高位となる京都府知事賞を受賞した。現在、キャベツ、みず菜、ナス、トマトなどを1㌶余り栽培し、学校給食にも供給している。「齊藤TACは相談しやすく、様々な情報を持ってきてくれるのでありがたい。新たな野菜にチャレンジし、産地化したいので期待している」という。
(写真)「営農ウィークリーNEWS」400号
◆営農相談充実のため
JA京都中央がTAC制度を導入したのは平成23年4月。出向く活動によって組合員や担い手農家の意見・要望を聞き、農業経営の改善や新たな作目の提案などの営農相談業務を充実させる目的で、営農販売課5人のうち2人をTAC担当に任命。営農販売業務とTAC活動を兼任する形でスタートした。
齊藤さんは、平成24年からTAC担当。それまで支店の共済窓口や購買部署を経験したが、営農指導と販売業務は初めてだった。農家の生まれで農業を知らないわけではないが、「すべてゼロからのスタートだった」と言う。
現在、もう一人の女性のTACは育児休暇中で、訪問を中心とする実質的なTACの活動は、営農販売課の職員が支援を行い、齊藤TACが中心になってこなしている。対象とする訪問先は地域の農業の中核となる個人および集団の農業経営体、後継者、新規就農者など244戸。1農家につき、月1回以上の訪問を目指す。
(写真)JA全農京都TAC販売企画課の担当者(左)とTACミーティングする齊藤TAC(中央)と新谷課長(右)
◆週刊で情報を迅速に
現実には、これだけの訪問活動は難しい。これをカバーし、より濃密な関係をつくるために役立っているのが、毎週火曜日に発行する「営農ウィークリーNEWS」だ。営農販売課から伝えたいことをカラー刷りで読み易く、分かり易く編集。週刊なので組合員のニーズに迅速に対応できる。
内容は営農技術、気象情報、農薬・肥料についての情報から販売事業に関する情報まで多岐にわたる。営農販売課の職員が交替で作成し、齊藤TACは毎号の「TAC information」コーナを担当。各支店で配布、さらにJAのホームページにも掲載している。
平成22年9月にスタートして7年8か月。毎週欠かさず発行し、今年の6月に400号を迎えた。
さらに、携帯電話のメール機能を活用したメールマガジン「JA京都中央営農情報メンバーズメール」では、気象、病害虫発生、農薬登録情報などを発信する。
こうした訪問活動や情報発信を通じて、担い手とコミュニケーションを強め、生産現場で直面する課題解決に向け日々活躍している。今年は特に「環境にやさしい新たな防除技術」として黄色LED光や性フェロモン剤を活用した害虫防除の普及に取り組んでいる。また、生産コストの低減に向けたJAオリジナル肥料やBB肥料の扱いなど、ニーズに応えて取り組んだことは数多く、生産者に喜ばれている。
一方でJAの役職員に向けた情報発信として「営農マンスリーNEWS」を発行。営農販売課の新谷雅敏課長は「JA内の経済部署と信用・共済や各支店との情報共有が希薄になりがちなことが課題になっていた。経済事業が2か所の拠点に集約されたことを契機に、機能を強化するために発行している」という。情報媒体をフルに活用し、信用・共済部署を含め、JAの役職員が一体となった営農販売事業の展開を目指している。
(写真)LED光照度を調べる齊籐さん
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