「つながり」強め組織・事業を強化 収支改善と経営の持続化――家の光文化賞トップフォーラム20212021年8月24日
家の光文化賞農協懇話会と家の光協会は8月20日、家の光文化賞JAトップフォーラム2021を開いた。コロナ禍で昨年のトップフォーラムは中止になったものの、2020年度文化賞受賞の千葉県JAいちかわと、今年度受賞のJA大阪中河内が、それぞれの取り組みを報告した。オンラインで推定、約550人が参加した。
写真=トップフォーラムのディスカッション(左から増田教授、今野理事長、廣川組合長)
鍵は「対話」と「教育」
今回のフォーラムのテーマは「組合員とのつながりづくりで組織事業基盤の確立・強化を」で、立命館大学の増田佳昭教授がフォーラムの狙いを説明。特にJAの経営収支改善が喫緊の課題になっていることと、コロナ禍によって組合員とJAのつながりが弱くなっていることを指摘。その上で経営収支改善と持続可能な経営基盤の確立をどう両立させるか―について問題提起した。
同教授はその鍵を「組合員のニーズ」と「組合員の選択」に求める。つまりこの二つの満足度の積が組合員の利用高で、同時にJAの事業高となる。それを裏付けるのが商品の品質とJAの信頼度だという。そのために必要なのは組合員とのコミュニケーション(対話)であり、教育だというわけだ。トップフォーラムで報告した2JAは、こうした組合員のJAに対する信頼強化のための取り組みが評価された。
「住宅」中心に貯貸率62.6%
JAいちかわは、東京の通勤圏内で、正組合員約4700人に対して准組合員約1万5000人。正組合員の資格要件を農地面積ゼロにするとともに、農業従事日数を90日から60日に切り下げるなど、准組合員を含め、組合員の拡大をはかった。准組合員はこの10年で50%増えた。
これに合わせて同JAは、生命・地域・環境・和の5つを経営理念に掲げ、自己改革を徹底してきた。その一つが貯貸率の高さで、2020年度の平均貯金残高貯貸率62.6%を達成。特に住宅ローンは毎年右肩上がりの実績をあげている。このほか次世代へ農地を継承する資産管理事業にも力を入れ、組合員の信頼を得ている。
こうした都市JAとしての事業のほか、特産の梨、ニンジンなど地域団体商標の登録、梨の海外輸出など、農家所得の向上にも取り組む。また、コロナ禍で休校となった小中小学校の子どもたちをJAの全店舗で受け入れ、職場でケアを実施。〝子連れ出勤〟で職員が安心して働ける環境づくりに努めている。
同JAは、こうした取り組みを「JAいちかわの絆づくりのイノベーション」として展開。今野博之代表理事理事長は「これまでも一丸となって取り組んできたが、さらに改善を進め、地域住民同士の結びつきを強化する地域社会への貢献に努める」と決意を述べた。
女性会会員1万人突破
JA大阪中河内は、正組合員約4400人、准組合員は10倍近い4万1000人で、JAいちかわ同様、典型的な都市型JA。資産管理事業や介護福祉事業に力を入れるとともに、営農面では耕作放棄地解消のためマッチング活動や農業塾の開講、農業労働力確保のための無料職業紹介事業などを展開している。また、組合員や地域のニーズをつかむため、イベントモニター(25人)とアンケートモニター(250人)のモニター制度を取り入れている。
同JAが教育文化活動で力をいれてきたのが、女性会(JA女性部)の組織活動の強化。会員証の作成、会員優待特典の付与、ポイントカードの作成などで、昨年の会員数は目標の1万人を突破した。同JAの廣川清温代表理事組合長は、「全組合員調査でJAへの評価が高く、全国平均を上回っている。直接会って話を聞くことで、そのことを再認識できた。その結果は、10万5000部の広報誌でフィードバックした」と、組合員に評価に満足する。
「つながり」の棚卸を
パネルディスカッションでは、コーディネーターの増田教授が、2JAの報告を踏まえ、「つながりを作るには時間がかかる。効果もすぐにはでない。長期的視点を持つとともに、現状満足してゆでガエルにならないようにしたい。このためには、これまで取り組んできた『つながり』づくりの棚卸が必要だ」と、JA改革の総括の必要性を強調した。
なお、ファーラムは、藤原辰史京都大学人文科学研究所准教授が「分解の思考~経済成長から自治形成へ」で講演した。同教授は、「食料もエネルギー源も微生物の発酵過程、つまり分解から副産物として生じるものだが、それを無駄に焼却している」との認識が必要と指摘した。
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