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子実トウモロコシの収穫作業 殺虫剤散布で収量・品質とも「最高」レベルに JA全農・JA古川の大規模実証2023年9月15日

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国産飼料の生産拡大が急務とされる中、JA全農と宮城県のJA古川が子実トウモロコシの大規模実証を進める宮城県大崎市のほ場で9月14日、トウモロコシ用コンバインによる収穫作業を行った。大規模実証1年目の昨年は広範囲でアワノメイガによる被害が見られ、品質低下につながったことから、今年は農薬メーカーと連携して5月に適用拡大された殺虫剤「プレバソン」が使用された。生産者は「今年は昨年の課題を克服して、最高の収穫量と品質が見込めそうだ」と語った。

収穫したばかりの子実トウモロコシ。口に含むと甘味を感じる。「最高の出来栄え」となった。収穫したばかりの子実トウモロコシ。口に含むと甘味を感じる。「最高の出来栄え」となった。

晴天に恵まれた現地見学会の実証ほ場には、生産者、地元JA、機械メーカー、国と県の研究機関の関係者など約140人が参集。草高2mの茂みの中から顔を出した、綺麗なオレンジ色をした子実トウモロコシが来場者を出迎えているようだった。

大規模実証での現地見学会は3回目。1回目は4月に播種作業、2回目は7月にドローンによる防除作業、そして今回は、トウモロコシ用のコンバインによる収穫作業と、ドローンによる防除効果の確認を行った。

初年度は91haのほ場で10a当たり700キロ、計640トンの収穫を目指したが、7月の風水害で広範囲で被害が出たほか、アワノメイガによるカビ毒などの被害が確認され、品質低下に加えて平均収量は330キロにとどまった。今年度は作付面積を108haに拡大し、土中の「弾丸暗渠」を増やすなど排水対策の強化や、アワノメイガの予防対策として、5月に適用拡大された殺虫剤「プレバソン」での病害虫対策に乗り出し、品質や収量の確保に努めた。

JA古川の佐々木浩治組合長JA古川の佐々木浩治組合長

現地見学会の冒頭、JA古川の佐々木浩治組合長は「今年は7月20日の梅雨明け後、今日のような天候がつづき子実トウモロコシの生育環境は大変良かった。去年の課題を今年につなげ、課題を克服したと思っている。今年は、去年の反省を踏まえ、アワノメイガの消毒を行った。ドローンと無人ヘリで空中散布し、その効果があり、8月中旬の段階で、カビ毒の発生はほ場によってはゼロという数字もあり、大変満足できる状況になっている。収穫が終わり、収量調査、内容を精査して、来年に向けて取り組んでいきたい」とあいさつした。

JA全農の日比健常務理事JA全農の日比健常務理事

収穫物については昨年に続いて乾燥・調製・輸送試験と飼料原料適正試験を継続して実証する。また、後作の大豆の生育に及ぼす影響についても複数年で確認し、経営評価を行っていく予定だ。

続いて、JA全農の日比健常務理事が挨拶し、「JA全農では生産から流通、飼料化までの一連の現地実証を通じて子実トウモロコシの国産化に向けた体系確立に取り組んでいく」と抱負を語った。

JA古川大豆・麦・子実トウモロコシ生産組織連絡協議会の鈴木正一会長JA古川大豆・麦・子実トウモロコシ生産組織連絡協議会の鈴木正一会長

JA古川大豆・麦・子実トウモロコシ生産組織連絡協議会の鈴木正一会長が、収穫までの苦労話を披露。「今年は播種作業から天候に恵まれたものの、猛暑だったので、最初はどうなるか心配したが、色々な先生方からご指導頂き、やっと草高2m以上の高さまでになった。一番の心配事は台風13号の影響だったが、上手く避けてくれてうれしく思う。昨日から刈取りを行ったが、害虫のアワノメイガがいないために(それを捕食する)カラスの被害が全くなく、一個もカラスが食べていない。コンバインで一周回るとフレコンが満杯になる。昨年は単収600kg以下だったが、今年は900kgから1t近い収穫量が見込めるので、(殺虫剤防除の)効果が大きくあった」と振り返った。

その後、ヤンマーの汎用コンバイン及び普通型コンバイン用コーンヘッダーの紹介、収穫作業、残稈処理作業などを行った。

後付けできる普通型コンバイン用コーンヘッダー後付けできる普通型コンバイン用コーンヘッダー

トウモロコシ用コンバインでの収穫作業の様子トウモロコシ用コンバインでの収穫作業の様子

栗原市から見学に来た生産者は、現在の経営面積9haから来年は13haに増え、転作が必要になるので見に来た。「大豆などの他品目と比べて(子実トウモロコシは)作業時間が短いのが魅力」と話す一方、「汎用コンバインを持っていないので、コーンヘッダーを後付けする手もあるが対応機種も限られているので、JAで共同利用できたらうれしい」と感想を述べた。また、「プレバソンはよく効きますね。平地でのカラス害がないのは分かったが、山間部でタヌキの被害も防げるなら試してみたい」といった生産者の声も聞かれた。「東北では宮城だけでなく岩手も、また、関東では千葉、西日本では岐阜でも広がりそう」といった機械メーカーの声も聞かれた。

農水省東北農政局地方参事官の珠玖知志氏農研機構東北農業研究センター所長の川口健太郎氏

最後に、農研機構東北農業研究センター所長の川口健太郎氏が「失敗は成功のもと、今年は成功した。昨年の最悪と今年の最高、2年で結果が出せたことになる。これも生産者とJAや関係者の総力によって農薬メーカーを動かし、一つの組織では成しえなかったことを成し遂げた意義は大きい。農業の新しい時代を切り開いていくものと確信している」と総括を行い、現地見学会はお開きとなった。

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