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シリーズ:今村奈良臣のいまJAに望むこと

【今村奈良臣・東京大学名誉教授】

2019.02.09 
【今村奈良臣のいまJAに望むこと】第77回 JA-IT研究会第50回記念公開研究会の紹介と講話ならびに討議一覧へ

記念講演 1
「農山村からの地方創生」(そのⅣ)
明治大学農学部食料環境対策学科 小田切徳美教授

 

7.農山村に吹いてきた風

 最近、農山村に望ましい新しい風が吹いてきている。そのいくつかの風を紹介しておこう。
 (1)「食料・農業・農村白書」の平成26年度の特集として「田園回帰」に関する事例やその特徴が具体例も掲げながら組まれている。
 (2)さらに、内閣府が「国民の農山漁村地域に対する意識報告」を2015年5月に行っているが、その一端を紹介すると次のようになっている。
 まず、都市住民の農山村への移住希望傾向が強まってきており、特に若者やファミリー世代なかでも女性の30歳代で「農山漁村で子育て志向が強いこと」が指摘されている。
 (3)ついで、総務省の「田園回帰研究会」では、国勢調査の個票分析を通じて、移住者増加地域は3.7倍(2000~05年から2010~20年の比較)になっており、調査した全1523地区の中で、108地域(7.1%)であったものが397地域(26.1%)に増加しており、特に中国、四国地方で増加が著しい」と報告されている。
 (4)ついで移住者が増加している地域の特徴をみると、〈1〉特に人口2000人以下あるいは4000人以下という小規模地域で移住者の増加が顕著であること。〈2〉過疎地域でかつ「振興山村」や「離島」でその増加率が高いことなどが明らかにされている。
 (5)さきに指摘した中四国の場合についてみると、やはり〈1〉県境や〈2〉離島という条件不利地域で人口の流入超過がみられること、具体的にみると、海士町、邑南町、周防大島町、神山町、美波町などのいわゆる条件不利地域とされてきた地域で人口の流入超過がみられている。ただし、こうした動きはなお「まだら」状の状況で地域偏在傾向が顕著であるといえると思う。
 (6)ついで移住者の特徴を実態調査を通してみておこう。
 その第1の特徴は、20~30歳代が中心であり、いわゆる「団塊の世代」は少ない。
 第2に、女性の割合いが上昇していることである。夫婦での移住、単身女性の移住あるいは「シングルマザー」の移住が多くなっている。従来は圧倒的に単身男性が多かったが、近年、大きく変化してきている。
 さらに「Iターン」が「Uターン」を刺激しているように思われる(I(愛)がU(you)を刺激する、とも言えるかもしれない)。いずれにしても、年齢、性別、出身地別に見て「移住の多様化」が進んでいるようにみられる。
 そして、その最先端に「孫ターン」が、第3のパターンとしてみられるようになっている。
 つまり、祖父母は農山漁村に、父母は東京など大都市に、その孫が大都市から農山漁村へ回帰しているという姿で、NHK朝ドラの「あまちゃん」のアキにその典型が見られるように思う。
 (7)若者による「ごと」をつくる動きがみられるが、これを私は「四業化」と規定している。
 四業化とは、
(1)起業化(仕事を起こす)
(2)継業化(古い仕事を新しく継ぐ)
(3)移業化(仕事を持ち込む)
(4)多業化(仕事を組み合わせる)
の4つのことである。
 第1の起業化には、例えば「協力隊」募集やそのサポート業務などがあり成功事例は多数にのぼる。
 第2の継業化には、例えば大豆生産組合から豆腐加工を引き継ぎ起し、新たに2号店を出店するなど事例は多い。
 第3の移業化はサテライトオフィスを作るなど、例えば徳島県美波町のベンチャー企業(IT、Webデザイン等)の誘致して新しい起業、継業につながっている事例である。
 第4の多業化は、例えば「狩猟+宿泊業+観光業+イベント興業」などの事例のようにいくつもの業種をつなげる新しい分野である。
 しかし、残念なことに、こういう新しい波があるなかで地方自治体の幹部や議員などは「こんなところに仕事などない」と冷淡なところが多いことである。現実と将来を直視して、頭を切り換えて欲しいと念願する。
 (8)新しい課題
 3つの課題を提起したい。
 第1は「地域と移住者のマッチング」という課題である。
 第2は「移住者のライフステージに応じた支援」という課題である。
 第3は「移住前の『関わりの階段』づくり」ということである。
 以上の課題については、次回の「総括と展望」と合せて紹介することにしよう。

 

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