JAの活動:農業新時代 なくてはならないJAめざして
【座談会】「よい農協」めざし議論できる組織へ(3)2019年4月10日
【出席者】
JAぎふ代表理事専務岩佐哲司氏
JA十和田おいらせ代表理事専務小林光浩氏
文芸アナリスト大金義昭氏
3:今こそ未来の種まきを
文芸アナリスト 大金 義昭 氏
◆過去に縛られず
大金 世界的には家族農業や協同組合が再評価され、大きな潮流になっています。しかし、いわゆる「アベノミクス」は規模拡大と競争力強化の一本槍で、これまでの農政の責任をJAに転嫁していますね。
小林 協同の社会を自分たちでどうつくるかが重要です。JAグループは政治と決別し、広く社会に協同組合社会を認めてもらう運動を展開するべきです。過去に縛られず、農協は、いまこうして話しているような議論ができるような組織になって欲しい。私たちが、自らそれを考えるべき時ではないでしょうか。
岩佐 そうですね。全てをいま現場で考えろといっても、何から考えたらいいか分かりません。これから3年間、その流れをつくっていく必要があります。
大金 先に小林さんが唱えられた構想なども含め、JAや各連で次代を担う世代が活発な議論をする場をつくりたいですね。
小林 私たちは農家のために、地域農業のためにどうすべきか。地域のためには全国連の役割が求められますが、現場で事業を利用する組合員としては総合事業サービスを提供するシステムの構築・運用、さらには総合事業としての商品化や全国的な物流を確立しなければなりません。今は専門化するそれぞれの全国連はありますが、総合事業サービスを提供する全国連がありません。
大金 組合員や役職員がクリエイティブに議論できるような全体の水準を引き上げ、「公論衆議」や「処士横議」(しょしおうぎ=上下の別のない活発な議論)が広がるように、多くの人が声を挙げ続けるべきでしょう。そうした議論の広がりが、新しい協同組合の姿を共有していくことになるように思います。「親方日の丸」の時代は終わりました。協同組合として自分の足で立って考え、実践する時代ですね。
小林 組合員の声をしっかり聞くというのは当然のことですが、それは必ずしも正論ではなく、そうでない場面もあることを認識しないといけないでしょう。対話は大事ですが、その奥にある協同組合の考え方、それを考えることのできるレベルでないと、うまく議論ができません。「私たちはこういう考えだよ」と言えるような議論が必要です。
岩佐 まったく同感です。ポジションとして、組合員との対話では2つのことが見えます。何度話しても、初めて聞いたという人がいますが、もともと関心がない人には何度も話す必要があります。一方、農協のことをちゃんと話すと、大体の組合員は聞いてくれます。
しかしそれには職員の訓練が必要です。JAぎふでは年3回、全職員による戸別訪問を行っています。事前に何度も説明しますが、職員によっては組合員と話ができず、訪問が負担になっているようなところもあります。しかし戸別訪問は継続する方針です。
小林 事業推進のための訓練はするが、協同組合人としての訓練はしていないのが実態ではないでしょうか。その「利他心」の教育には少なくとも3~5年はかかると思いますが、常に続けなければなりません。
◆"青く"語り合い
大金 協同組合について常に、共に語り合うJAの現場をつくりたいですね。例えば「小林構想」などをランディングさせるためにも、それぞれが自信をもって自らの抱負を語り合う機会を増やしたいところです。
岩佐 議論する場面がありません。週1回、部長全員が会いますが、なかなかそういう議論になりません。「青く」協同組合を語りたいですね。
小林 実際、そういう機会はなかったですね。「よい農協」についてリポートを提出させたり、協同組合の事例集を見せたりして、新しい事業を始めるとき、協同組合としてどうかというような問題意識を育てるようなさまざまな仕掛けが必要です。
コンビニでできることが、それより力のある農協でできない。それは総合サービス事業を考える人がいなかったからだと思います。単協で総合事業システムをつくるのは難しい。それを考えるのは全国の連合会です。
岩佐 今回、JAぎふは、独自に「地域通貨」をやろうと思い、申請に向けて調整中です。コンセプトは「農とお金の地産地消」で、農産物を核にどう地域でお金を回すかということです。総合ポイントとキャシュレスを一緒にしたようなもので、全国に先駆け、3年後にはやりたいと思っています。
小林 准組合員が運営参画しても、その喜びが感じられなければなりません。地域の消費者の組合員が「地産地消」を進めるとか、目的別に出資することで助け合うことができる仕組みをつくるとか、労働力を提供することで助け合うなどのシステムが必要です。そして最大の課題である、利用することだけを認めて参画することを認めない現行の准組合員制度を人的結合体の協同組合員としての権利義務を認める制度にすることが必要です。
◆イチローにならって
大金 この春に引退したイチロー選手が、現役時代に「もがいた先に、光が見えてくる」と語ったことがありました。JAも「ピンチをチャンスにする」苦しみの先に、必ずや春の光が見えてきます。ところで、お二人が考える「よい農協」とはどのような農協でしょうか。
小林 「まじめに真摯(しんし)に『よい農協』づくりを進める、その方向にもっていくよう協同組合人として、事業はどうあるべきか、の問題意識をもって取り組むことができる農協」です。「よい農協」とは一人が決めることではありません。「金太郎飴」でなく、みんなが「よい農協」とは何かを考えることができるのが「よい農協」だと考えています。
岩佐 組織のあり方としては同感です。「あの星に向かって行くのだ」という発信をしたい。しかしそこへの行き方はさまざまです。ばらばらにやっていても、同じ目的地に向かっているという関係が理想です。私の中での「よい農協」とは、「組合員の悩みを聞き、事業を通じて組合員と役職員が一緒になって問題を解決し、地域を良くして、そこで働く職員が物心ともに豊かになることのできる農協」です。
大金 誰に遠慮することなく、自信と確信を持って協同組合をみんなで語り合おうということですね。そういう流れやうねりを全国でつくっていきたいものです。今日は、たいへん興味深いお話を伺いました。
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