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農業を〝面〟で支援 生産から販売・人材確保まで 鹿児島銀行のアグリビジネス2019年5月30日
鹿児島県の農業産出額は5000億円で、北海道に次ぐ第2位。内訳は「肉用牛」・「豚」・「ブロイラー」・「鶏卵」が全体の約6割を占め、畜産がメイン。
馬門孝幸氏
◆農業金融への支援強化
平成15年に「アグリクラスター構想」を掲げ、本格的な取り組み体制の整備に着手。「アグリクラスター」とは、農業の「アグリ」に、「房」の意味の「クラスター」を加えた造語。農業を含めた一次産業を「点」で支援するのではなく、それらを取り巻く産業群全体を「面」で支援していくというのが「アグリクラスター構想」の概念。
・平成16年に当時の農林漁業金融公庫と「業務協力協定」を締結。民間金融機関として協定締結第1号。
・同年、鹿児島県庁農政部に1年間行員を派遣。
・平成18年に行内の体制整備を行い「アグリクラスター推進室」を設置、その後、平成30年4月に「自然部」へ昇格。現在、県庁OBの2名を含めた8名体制。
・平成22年、畜産業者との取引強化に向けABL(動産担保融資)管理システム「アグリプロ」を開発、運用開始。
・平成23年から県内の畜産会社へ行員を派遣、現在6人目。畜産業以外では、平成27年から県外の中央卸売市場に行員を派遣、現在3人目。
◆農業向けの融資970億円
耕種農業・畜産業に製茶業、いも焼酎などの酒類製造業、肉製品加工業を加えたアグリクラスター関連業種の融資残高は平成31年3月末で972億円。
◆畜産向け融資を拡大
棚卸資産(牛)に担保設定し運転資金(ABL)の対応を検討。
日々変動する担保物件の管理に苦労した経験から、担保物件である棚卸資産の動きや、価値などをリアルタイムに把握できる仕組みを検討し、管理システムである「アグリプロ」を開発。
取引先は在庫の現在価値や借入可能額などをリアルタイムに把握、資金計画作成にも活用。弊行は担保管理の省力化、取引先のさまざまな兆候察知に活用、スピーディな経営支援態勢を構築。畜産ABLによる融資実績は、平成30年9月末で融資先84、融資額334億円。
◆地元企業と農業法人
平成28年9月に、地元企業と共同で農業法人「株式会社春一番」設立。農業従事者の減少・高齢化、耕作放棄地の増加など、農業を取り巻くさまざまな課題解決に取り組み、農業を魅力ある産業へ発展させ、地域雇用の創出と農業の裾野を拡大することが設立目的。
スタッフは全員、農業経験ゼロの銀行員で構成し、現在、社長を含め5名。極早生タマネギ、オクラ、パプリカなどを生産。今後、卸売部門の事業拡大で生産者の所得向上にも積極的に取り組む。
◆畜産の経営改善支援
経営改善局面において牛肥育農家、飼料メーカー、食肉加工メーカー間で経営支援契約を締結し、経営改善・安定に向け三者が密に連携して取り組むスキームを構築。三者と弊行で定期的に経営実績報告・検討会を開催、業況等確認し、必要に応じて対策を講じることで改善の実効性を高めている。
各種ファンドを活用した取引先支援も実施。新たな品目の取り扱いを始める。農水産物等の輸出拡大、新たなバリューチェーンの構築などによる地域振興、事業承継、牛管理システムの普及による農家所得の向上を目的として、これまでに計8社に投資。
◆オリーブ事業に着手
平成24年5月、日置市と弊行は「包括的業務協力協定」を締結。立地、歴史的背景、需要増加、雇用創出可能性などの理由からオリーブ事業を選定。イタリア・スペインに行員を各2か月間派遣、収穫作業、搾油、テイスティング等の経験を蓄積。
弊行、地元企業数社で「鹿児島オリーブ」を共同設立。イタリア・スペインから上質なオリーブオイルを輸入し、エクストラバージンオイルとして販売。他に日置のオリーブの葉や地元の温泉水を使った石鹸や化粧水なども直営店・ネットを通じて販売。
平成29年12月、搾油工場を建設。少量ではあるが念願の日置産のオイルを搾油。
将来的には、日置市内の農家・市民が育てたオリーブの実を買い取り、加工品を製造・販売する計画。今後、レストラン・物販施設を設ける計画もあり、最終的に50名の雇用創出を目指す。
◆外国人実習生に対応
近年、労働者人口の減少で人手不足が深刻化し、働き手の確保は事業者にとって大きな課題となるなか、外国人技能実習生の受け入れを目的とした「九州アジア人財開発協同組合」を設立。弊行は幹事へ就任。
発起人企業に弁護士法人、社会保険労務士法人を抱え法務面、労務面でのフォロー体制に強みあり。農業を含む地域産業が抱える「人材」の課題解決に向け支援を実施し、地域産業の活性化に取り組む。
弊行は今後もさまざまな分野に挑戦し、多種多様な分野の専門家と連携し、基幹産業である農業の発展に取り組み続ける。
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