JAの活動:農協時論
【農協時論】農業者の使命 協同精神最後の体現者として次代へ価値を 黒田栄継 元JA全青協会長2021年6月9日
規制改革会議から一方的に「農協改革」が提案されて7年。この間、民間組織であるJAグループは自己改革に取り組んできた。しかし黒田栄継氏は、協同組合とは誰のものなのか改めて問い、「組合員一人ひとりが、農協そのものだ」と指摘。農協改革を自らの問題として受け止め、改めて自らの存在意義を自らに問いかける強さがいま、求められているのではないかという。

平成26年の今頃であったか、政府の諮問機関である規制改革会議から、突如として、中央会制度の廃止や全農の株式会社化などを含む「農業改革に関する意見」なるものが公表された。いわゆる「農協改革」という、雲をつかむような一方的な内容の提案を受け、民間の自主的組織であるJAグループ役職員は、自己改革に乗り出すこととなった。
あれから7年、それぞれの不断の努力によって、さまざまな改革が進められてきた。特に各連合会、JA執行部の苦労は並大抵ではなかったはずだ。
しかし、本来の趣旨を鑑みる時、真に改革を実行すべき主体者は果たして農協役職員だったのだろうか?
農協の最大の特徴は、協同組織という、組合員相互の結びつきによって構成される、いわば「運動体」であるということに尽きるのだと思う。農協は、執行する役職員の持ち物ではなく、いわば、組合員一人一人が、農協そのものだということだ。私は農協の運営に執行役員として携わったことがないので、どうしても一組合員の視点でこの改革を見つめることが多くなってしまうのだが、いったいどれだけの組合員が、この改革を自分事ととらえてきたのであろうか。
当時規制改革会議が表明したような、表面上の体裁を整えるような改革ではなく、人間が生きていくうえで欠くことのできない相互扶助の精神と、真の農業・農村の発展に結びつくための自己改革を実現させるためには、組合員一人一人の意識と行動の改革が必要なのではないかと、これまでもことあるごとに述べてきたし、今でもそう思っている。
アメリカ35代大統領、ジョン・F・ケネディの言葉に、
「国があなたのために何ができるかではなく、あなたが国のために何ができるかを問うてほしい」
という有名な演説の一言がある。「人類の共通の敵」である暴政、差別、貧困、戦争そして疾病との戦いにともに参加することを、国民だけではなく、世界の国々に訴えたものだ。
農協も同じなのではないだろうか?
農協が何をしてくれるのか、それを享受するだけが組合員の存在意義では決してない。組合員の権利を主張するのはいいが、その前に自らに課せられた義務と責任を果たさずして、より効果的で効率的な農協運営などは望めない。
では、何をすればよいのか。難しく考える必要はない。例えば、販売を強化したいのであれば、少なくとも組合員一人一人が、品質の向上に向けて全力で努力し、さらには、どう売りたいのか、どこに売りたいのか、生産組織を中心に、自らが率先して提案し交渉し、行動する。共選料を下げたいのであれば、これまた品質の向上、合わせて、各員の自主的な荒選の実施など、一人一人のちょっとした意識の改革が、所得の向上に向けた改革となる。
自分がみんなのためにできることを考える、こういったことこそが真の協同の原点であり、相互扶助という価値ある精神を次代へつなぐ大切なアプローチとなるのだ。
コロナ禍を経験し、日常の生活において、こういった精神の大切さを誰もが痛感しているところであるが、残念なことに、協同の精神を実感できる場面は、時代とともに間違いなく減少しているのが現実だと思う。
農業者の使命は、日々の努力によって、安全な食を供給し、安心と笑顔を食卓に提供することである。だが、これからの時代は、協同の精神の最後の体現者として、次代へその価値を届けることもまた、大きな役割の一つとなる。
改めて、自らの存在意義を自らに問いかける強さがいま、求められている。この強さをすべての組合員が手に入れたときに、農協の自己改革は完遂するのだと思う。
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