JAの活動:農協時論
【農協時論】共同と協同組合の原点 菅野孝志 JA全中副会長(JA福島五連会長)2021年6月16日
今から51年前、若き日に訪れた兵庫県淡路島の北阿万農協と灘神戸生協(当時)での体験が、協同組合人としての出発点・原点であり、その時に聞いた穀内定彌北阿万農協組合長の言葉が「私の脳裏に鮮烈に叩き込まれ」今日に至っていると菅野会長。改めて農協人として出発点を振り返ることの大事さを再確認しています。

JA全中副会長 菅野 孝志氏
時は、SDGs・DX・0カーボンなど踊る。私の出発点原点を顧みた。
我が家の農業経営規模は、水田64a畑35a開墾畑30aと小さく、父は田起こし・田植え・刈り取りなど主要な農作業と秋冬期の杣人、後に東京に出稼ぎ出た。母一人、田畑を耕し続け2頭の乳用牛を飼っていた。搾乳は私の朝仕事の一つでもあった。
1960年代、当時としては、先進的・先駆的地域の仲間がいた。ヤンマーディーゼル10馬力水冷耕運機1台、我が家を含む5戸の農家で共同購入利用をした。牛を引いて田起こしや代掻きをしていた時、牛馬からの転換は画期的なことであった。大小多様な区画の水田は、直ぐに耕耘終える。目を見張る凄い威力を発揮した。子供心に近隣仲間の共同に誇りを感じた。父に習いハンドルを握りながら、何時か仲間と大きな機械で効率的な経営が出来るだろうと想い描き夢見た自分がいた。
1970年、福島県農業者大学校協同組合科の門を叩いた。時は、アメリカの小麦戦略に白旗を上げるように、洋食化も進みコメの消費が減退した。在庫量の増大から水田の減反政策に突入した。戦後25年の経過を見ると、戦禍からの復興と新しい日本の創生に国民総力を挙げて一心不乱、食料の自給の向上に努め産業基盤を確立した上で、2次3次産業(製造業・流通業)も世界に勝つために「技術立国日本」目指し汗を流した。
この年は、大阪万博。協同組合科1年生の研修旅行が計画され、なんの拍子か旅行委員に指名された。先生方との相談と教えて頂いた人や農協を検証した上で、淡路島最南端にある北阿万農協、灘神戸生活協同組合、近畿エリアの青果市場、万博視察で全行程を策定した。「北阿万農協」「灘神戸生協」は、協同組合に携わる私の原点である。
はじめに、北阿万農協を訪ね、二階の会議室で組合長の穀内定彌氏は、協同組合のイロハを学び始めたばかりの学生に真剣に語り始めた。「農協は、やろうと想えば、何でもできる」「やるかやらないかは、人だよ」帰ったら農協法の第1条と事業の10条を良く見て欲しい。第1条「この法律は、農業者の協同組織の発展を促進することにより、農業生産力の増進および農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もって国民経済の発展に寄与することを目的とする」。第10条事業(省略)。凄くわかり易かった。「ここに、生まれた組合員、その子、子弟が、地のものを食べ、遊び、病気やけが、暮らしを良くしたい学び仕事に精を出し、産業起こしに携わり、眠るように没する」「この人生のステージに関わり寄り添うことが出来る。それが農協だよ。」言葉は、私の脳裏に鮮烈に叩き込まれた。
灘神戸生活協同組合本部は、住吉にあったと思う。当時の家庭会担当理事の永谷晴子さんに大講堂に案内され「賀川豊彦氏の肖像画」を前に灘神戸生協の生い立ちや組織事業の状況についてご教授頂いた。ともに、暮らしを良くしたいと思い人が実現するために一つ一つ、一人より二人、二人より三人と呼びかけ仲間を増やし大きな組織運動体に成長させてきたのである。
学生になり、間もなく地元農協での研修があった。副校長から君の農協は、県下でも下から3本の指に入ると言われた。が、定期配本された「家の光関連文庫」が綺麗に陳列されていたことに驚いた。賀川豊彦の「乳と蜜の流るる郷」が目に留まり読みふけった。多感な私には、東助の想いが投影されたように感じた。「会津の大塩の地から長野へそして東京へ、立体農業による村興し、消費・医療の分野の開拓と組織化」「......共存同栄 我らの理想......」その歌声が特別に、東助の胸を打った。
北阿万と灘神戸への想いは、ここに端を発した。
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