JAの活動:JA全農部長インタビュー「全力結集で挑戦 未来を創る-2021年度事業計画」
【JA全農 部長インタビュー 2021年度事業計画】山田尊史 営業開発部長 販売力強化に向け「懸け橋機能」発揮2021年6月28日
各事業に横串を通し国産農畜産物の販売力を強化するために4年前に新設された営業開発部。その成果と今後取り組む重点事項を山田部長に聞いた。
山田尊史 営業開発部長
「産地」の期待を担う
--改めて「営業開発部」新設の狙いと役割について聞かせてください。
営業開発部は、2017年9月に全農の新たな営業拠点として設置されました。
われわれが担っている機能は、国産農畜産物の販売力強化に向けたグループ会社との「共同営業」、「商品開発」、産地を巻き込んだ取り組みに向けた「産地開発」、加工施設などの「インフラ開発」、共同配送など「ロジスティック戦略構築」、ファミリーマートや日清製粉などとの資本提携など「投資・出資」、アマゾンやフェリシモなどとすすめている「eコマース戦略」、そしてJAグループ全体の販売力を底上げする「JA役職員等への販売相談」の8つです。
これらの機能を通じて全農の各部門、県本部、グループ会社の垣根を越えた営業を実施しています。これまでは米は米穀部、青果は園芸部といった商社的な縦割りの力が強い組織でしたが、これに横串を刺して生産者と消費者をつなぐ、販売事業のバリューチェーンの構築に取り組んでいます。
われわれがめざすバリューチェーンとは、全農グループが農畜産物の生産から販売までの一貫した取り組みを行うことです。生産や集荷だけでなく販売に結びついていることが重要であり、逆に販売だけでなく産地を持っている強みを活かした集荷が必要です。つまり、生産・加工・流通・販売をしっかりと結びつけて各機能の最適化を図ることでバリューチェーンの構築を進めていきます。
新ブランドで魅力を発信
--発足から4年目を迎え、これまでの主要な成果と、全農、JAグループにどのような変化が起きていますか。
先ほど申し上げた機能のうち「共同営業」については、生協、量販店に加え、コンビニや中食、外食、ネット通販、ドラッグストアなど新規取引先の開拓や取扱品目の拡大を進めており、グループ会社をはじめ、関連部門、県本部と協力し品目のカテゴリーを越えて横串を刺した共同営業を実施しています。
これまで取引先のニーズに応じた提案や商談会を契機として、新規取引先の開拓や取り扱い品目の拡大などに成果をあげるとともに、日本フードサービス協会との連携強化によって、外食産業への販売拡大にも取り組みました。
また、精米、青果の実需者への直接販売への拡大にも取り組み、われわれ自ら最終販売先に結びつける営業を展開してきました。
「商品開発」については、全農グループの総合力を発揮して実需者ニーズに対応した商品開発に本格的に着手するため、2019年4月に「全農グループMD部会」を立ち上げました。MD部会では、あらかじめ販売先を決め、それぞれの目的に応じてチームを結成し商品開発を行っています。これまでの2年間で、国産果実を使用したドライフルーツやグミ、果汁サワーなど130商品を開発しました。そのほか、JAグループの特徴ある既存商品を掘り起こし、リニューアルして販売する取り組みも行っています。
また、新たな商品ブランドとして2020年1月に「ニッポンエール」を商標登録しました。「ニッポンエール」では、食品メーカーや商社とのWブランドも積極的に展開しており、国内はもとより、海外でも商標登録を進め、香港や上海ではすでに販売を開始しています。ニッポンエール、イコール全農と消費者に認知してもらうことをめざしています。
さらに、NB商品では「農協牛乳」をシリーズ化して、「農協たまご」を開発、販売しており、今後はパックご飯「農協ごはん」なども予定しています。
「産地開発」では、実需者との取り組みの長期持続や生産者の所得安定に向けて、業務用を中心に関連部門、県本部と連携して取り組んでいます。産地を巻き込んだ取り組みができることこそが、全農グループの強みとなっており、われわれ営業開発部の使命は、生産された農畜産物の出口をしっかり作るということです。
また、営業開発部はJAグループ全体のマーケティング力向上に貢献するため、JAグループ役職員との販売相談を実施しています。JAからは、販売や商品開発の案件のみならず、直売所運営などの相談もいただいています。JA、県連、都府県本部をはじめ、生産者の方にも是非、活用していただければと思います。
国産への関心 逃さず
--今年度の重点実施事業は何でしょうか。
コロナ禍の影響は一過的ではなく、今後の人々の生活スタイルやビジネス環境にも変化を及ぼすと思います。農畜産物の販売にもさまざまな影響を及ぼしており、今後の環境変化をふまえた事業構築に向けて状況分析と対策を講じているところです。
直近の対策として、家庭用の食品販売は全般に好調ですが、外食等の業務用については3度目の緊急事態宣言を受けて、行き場を失った青果物などを一時的に家庭用に向ける工夫も必要となっており、現在、コンビニでの野菜や果実の販売にも取り組んでいます。
その一方で、コロナ禍をきっかけとして食の安全や食料安全保障への関心が高まり、国産食材のニーズが拡大している流れを捉え、これまで中食・外食等で使用されていた輸入食材を国産に切り替える取り組みを進めています。たとえば、コンビニのサラダなどで使用するブロッコリーで花蕾の大きなものを栽培して供給しています。生産性を上げることで農家の手取りを確保しようということです。
中長期的には3つの対策に取り組んでいます。1つ目は、生協の宅配が伸びていることから、全農グループが協力し調達・物流の機能強化に取り組んでいきます。
2つ目は、保存できる食品が好調のなか、冷凍野菜需要が拡大しており、国産による原料供給と製造の機能の強化です。3つ目は、衛生対策で、青果を中心とした食材に直接触れられることを避けるため袋詰めやパックの陳列が増加しており、包装加工・一次加工の機能強化です。
もちろん、こうした対策は単独で取り組めることではありませんので、営業開発部が懸け橋となり、全農グループはもちろん、産地、取引先などステークホルダーと連携して進めていきます。
惣菜事業や直売所支援へ
--今後、営業開発部がめざすことは何でしょうか。
部の新設当初に掲げた8つの機能に加えて、「他企業とのアライアンスの強化」、「惣菜事業の展開」、「JA直売所との連携・支援」の3つの機能に取り組んでいます。
「他企業とのアライアンスの強化」は、理事長を先頭に他企業とのトップ商談を多数実施し、資本提携先のファミリーマートや日清製粉はもちろん、味の素、ニチレイ、ハウス食品など、さまざまな企業とアライアンスによる取り組みを進めています。資本提携の効果も含めて商品の共同開発、Wブランド、国産原料の供給拡大、クロスMD、マルシェの開催など成果をあげています。
「惣菜事業の展開」は、米、野菜、肉といった原料が複合的に絡むことから、全農グループの総合力が強みになると考え、グループ会社や関連部門と協議を開始しました。全農グループは米、青果、食肉、鶏卵といった素材の売り場で大きなシェアを占めていますが、一方、惣菜売り場ではまだまだ基盤が弱く、今後さらなる取り組みが課題だと考えています。
また、「JA直売所との連携・支援」については、既存商品の掘り起こしや、コンビニや外食などへの食材供給に取り組んでおり、今後は全国で2000店舗を超えるJA直売所の総合力発揮に向けて、直売所間や実需者との商流、物流をつないでいきたいと考えています。
こうした取り組みを通じて、これからも国産農畜産物の販売力強化に向けて、産地と実需者の「懸け橋機能」を担っていきます。
(やまだ・たかし)
1968年2月生まれ。京都府出身。信州大学農学部卒。1990年入会。営農販売部企画部輸出対策室長、販売企画課長、米穀部精米販売課長、西日本米穀販売事業所長、営業開発部次長を経て2018年4月から現職。
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