JAの活動:今さら聞けない営農情報
みどりの食料システム戦略20【今さら聞けない営農情報】第116回2021年9月11日
令和3(2021)年5月12日に決定された「みどりの食料システム戦略」(以下、「みどりの戦略」と略します)では、「食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現」を目指し、2050年までに目指す姿と取り組み方向が示されました。
前回までに「有機農業」に関する技術的戦略(1)~(10)(図参照)のうち、2030~2040年に実現・普及を目指す取り組む課題を掘り下げてみました。今回から次の10年にあたる2040~2050年までに技術の確立と普及を目指す技術革新の(7)、(8)について掘り下げてみます。
今回は、(7)「主要病害に対する抵抗性を有した品種の育成」です。
この技術は、読んで字のごとく、ある作物に発生する主要病害に対する抵抗性を有する品種を育成し、病害防除が不要なあるいは最小限の農薬を使用しない防除だけで済む栽培を実現することにあります。
現在栽培されている作物にはそれぞれに複数の病害が発生します。そしてそれぞれに、作物の収量や品質に与える影響があるものがあり、それを主要病害と呼びます。この主要病害は、稲であれば、いもち病や紋枯病、ごま葉枯病、稲こうじ病、籾枯(もみかれ)細菌病、苗立枯細菌病といったものがあたります。これらの全てに強力な抵抗性を示す品種は、今のところ皆無であり、少数の病害に対して抵抗性を持つものが多いようです。
また、抵抗性品種をつくるためには、一つの病害に抵抗性を持つものをつくるだけでも選抜育種などの従来の育種技術では約10年の歳月がかかります。このため、みどり戦略で掲げた目標を達成するには、少なくともゲノム編集など効率の良い育種手法が不可欠になります。遺伝子組み換えであればさらに効率の良い育種ができるかもしれませんが、日本国内では遺伝子組み換え作物は認められていませんのでそれはできない話です。
そのため、現在許されている育種技術で、有機栽培されている全ての作物の主要病害に抵抗性を示す品種をつくるには、たくさんの時間と労力がかかりすぎ、残念ながら全ての作物・主要病害に抵抗性品種をつくるのは難しいと言わざるをえません。
であれば、抵抗性品種も万能ではなく病害を防ぐ防除手段の1つとして考えた方がよく、それ以外の病害は他の方法で防除することを考える方が効率的です。
例えば、稲であれば、大敵である「いもち病」は抵抗性品種で防ぎ、それ以外の病害は有機農業でも使える防除手段を使用して防ぐといった具合です。
もちろん、抵抗性品種は病害を防ぐために有効な手段であることは間違いありませんので、さらに技術革新が進み、より多くの病害に抵抗性を示し、かつ良食味などの優れた特性をもつ抵抗性品種が開発され、増えてくれることを願っています。
重要な記事
最新の記事
-
米の作況指数の公表廃止 実態にあった収量把握へ 小泉農相表明2025年6月16日
-
【農協時論】米騒動の始末 "瑞穂の国"守る情報発信不可欠 今尾和實・協同組合懇話会委員(前代表)2025年6月16日
-
全農 備蓄米 出荷済み16万5000t 進度率56%2025年6月16日
-
「農村破壊の政治、転換を」 新潟で「百姓一揆」デモ 雨ついて農家ら220人2025年6月16日
-
つながる!消費者と生産者 7月21日、浜松で「令和の百姓一揆」 トラクターで行進2025年6月16日
-
【人事異動】農水省(6月16日付)2025年6月16日
-
3-R循環野菜、広島県産野菜のマルシェでプレゼント 第3回ひろしまの旬を楽しむ野菜市~ベジミル測定~ JA全農ひろしま2025年6月16日
-
秋田県産青果物をPRする令和7年度「あきたフレッシュ大使」3人が決定 JA全農あきた2025年6月16日
-
JA全農ひろしまと広島大学の共同研究 田植え直後のメタンガス排出量調査を実施2025年6月16日
-
生協ひろしま×JA全農ひろしま 協働の米づくり活動、三原市高坂町で田植え2025年6月16日
-
JA職員のフードドライブ活動で(一社)フードバンクあきたに寄贈 JA全農あきた2025年6月16日
-
【地域を診る】「平成の大合併」の傷跡深く 過疎化進み自治体弱体化 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年6月16日
-
いちじく「博多とよみつひめ」特別価格で予約受付中 JAタウン2025年6月16日
-
日本生協連とコープ共済連がともに初の女性トップ、新井新会長と笹川新理事長を選任2025年6月16日
-
【役員人事】日本コープ共済生活協同組合連合会 新理事長に笹川博子氏(6月13日付)2025年6月16日
-
【役員人事】2027年国際園芸博覧会協会 新会長に筒井義信氏(6月18日付)2025年6月16日
-
農業分野で世界初のJCMクレジット発行へ前進 ヤンマー2025年6月16日
-
(一社)日本植物防疫協会 第14回総会開く2025年6月16日
-
農業にインパクト投資を アンドパブリックと実証実験で提携 AGRIST2025年6月16日
-
鳥取・道の駅ほうじょう「2025大大大スイカフェスティバル」22日まで開催中2025年6月16日