JAの活動:農協時論
【農協時論】選挙とJA大会 「未来へつなぐ」見える化がカギ 八木岡 努・茨城県農業協同組合中央会会長2021年11月16日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を生産現場で働く方々や農協のトップの皆様に胸の内に滾る熱い想いをお書きいただいています。
今回は茨城県農業協同組合中央会会長の八木岡努氏にご寄稿いただきました。
八木岡 努
茨城県農業協同組合中央会会長
10月31日の衆議院選挙は「自公連立」政権が勝利した。様々な見方はあるが、「改革か分配か」という岸田総理が口火を切った言葉に、まず分配をと叫ぶ野党に改革への具体的メッセージが見えなかったことが勝敗を分けたと感じている。
与党側も改革内容を具体化できていたわけではないが、今までに積み上げてきた政策の先に、やるべき課題は見えていると有権者が感じた結果ではないだろうか。
農業は国民が安心して食べていける安全保障を担っている。人口減少、グローバル化による貿易の影響など環境の変化に対して補助金も含めて国民の食料自給を維持している。このベースを改めて考え直すとなれば産業としての農業も維持することが難しい。その上で、新たな課題へ取り組むことを合理的に考え、共に実行していける政党が政治の主導権を握れていることは望ましいことだと思う。
では課題は何か? まず8割の農家が60歳を超えるという現状を考えれば、残り2割の現役農家で今の生産量を維持できる生産性の高い農業へのシフトが最重要課題である。さらに新たな就農者を多様な人材から発掘・育成していくことを本気でやっていかねばならない。
やってみようと思う若者が増えないのは、稼げない、きつい、汚い、休みもままならないといった本音が聞こえてくる。加えて2050年に実現を約束したゼロエミッションを達成する必要がある。これらを『みどりの食料システム戦略』を読み込み、茨城農業として実行していくことが、持続可能で高付加価値な農業を創っていけると考えている。
ここにリーダーシップを発揮することが、今回の選挙に例えられる改革への方向性を示すこと、私自身がすべきことだと感じている。
農業の将来を描くという部分で、10月27日に第29回茨城県JA大会が開かれた。コロナ禍でもあり一部の代表者のみ会場で参加、1000人規模の組合員、関係者にオンラインで参加していただいた。多数の組合員、関係連合組織から集められた施策を組み立て、これからの3年間の実行内容を『未来へつなぐ 持続可能な農業と豊かな地域社会をめざして』と題して説明した。
ボトムアップでの施策は「分配」傾向が強まるため、「改革」面で二つの仕掛けを加えてみた。一つはオープニングに流した15分程度のコンセプト・ムービーで、過去の茨城農業を紹介しながら目指すべき未来へのスマート農業を強調した。ナレーションは中学3年の女の子、未来と多様性をより強烈にメッセージできたと思う。豊かな地域社会を考える上でも、現在の仲間たちから半農半Xに代表される多様な人材や、競合企業との共創も含めた広い視野を持つことも提案した。
もう一つが東京大学名誉教授 谷口信和先生の基調講演で、JAが発揮すべき役割をご講演いただいた。過剰となっている米や穀物を粒で食べることだけ考えず、粉状に加工することを再考してみようという提案。コンビニに並ぶポテトにカンショの割合を増やす、ラーメンの麺は小麦でなければダメか? といった新たな出口戦略を作ることで国産品の価値を上げていけるという。さらにフードマイレージを考えれば『国消国産』より『地産地消』を改めて見直していくべきだという。なるほどと思わせる話で、さっそく検討を考えたい。
最後に農業の未来を考えるとき、環境問題は切り離せなくなった。気候変動が与える農業への影響は大きく、農地をグリーンに維持していくことはCO2吸収する側面で大きく貢献できるはずだ。そのために2050年をゴールに定め、バックキャストしながら直近で何をすべきか具体策を作っていこうと思う。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日