JAの活動:未来視座 JAトップインタビュー
自助を土台に共助 「つながり」肝に JA松本ハイランド・田中均組合長(2)【未来視座 JAトップインタビュー】2023年5月9日
自助を土台に共助 「つながり」肝に JA松本ハイランド・田中均組合長(1)から続く
田中均組合長(右)と大金義昭氏
「仲間の輪」で点から線・面へ
大金 「人づくり」に焦点を当てた組織基盤の強化は、JAの王道ですよね。
田中 経営基盤は数値で分かるから、よく目に見える。人間でいえば上半身。上半身はもちろん大事ですが、問題は足腰です。下半身を鍛えないと歩けなくなるから、まずは下半身を鍛える。組織を構成するのは人間ですから、人をつくっていこうと「みらい塾」は今年で9期になります。30人弱で1年間学びます。
遠くから偉い先生を呼ぶのではなく、地域の中で協同活動を実践している人の話を聴いてワークショップをしています。地元温泉旅館の女将さんの話だとか、卒塾生で「色男の力餅」という餅を作って売る活動をしている米農家グループの活動とか、市民農園をしている卒塾生の施設に行ってそこで議論をするとか。
1年間やると仲間の輪、同窓の輪ができる。それは「点」ですが、先輩たちとつながって「線」ができる。「線」を「面」にしたい。そこで「支所協同活動運営委員会」を昨年創設しました。今までの支所運営委員会はどちらかといえばJA事業の説明に重点が置かれていた。「支所協同活動運営委員会」は、支所の組合員の困りごとや課題を組合員自らが協同活動によって解決することに特化しました。リーダーは支所担当理事で年40万円ほど予算もつけました。この1月には「みらい塾」の塾生の発案で、支所担当理事と協同活動についてワークショップをしました。私が言う「自動巻き」になりつつあります。
大金 農家組合の活性化にも、旧来から「モデル組合」などを募集して力を注いできました。
田中 JAにとって重要な面的基盤組織である農家組合についても真正面から見直そうと取り組んでいます。事務局である支所長とか課長数人に集まってもらい、JCA(日本協同組合連携機構)にも加わってもらって5回ほど議論しました。農家組合の目的・予算・活動から加入の中身などまで「たたき台」をつくって、それを基にこの2月には農家組合長会長会でワークショップをしました。来年には結論を出したいと考えています。
JAの枠を超えた「ウィン・ウィン」の取り組みも
大金 地域の営農支援については?
田中 八つあるブロックごとに役員会を開催し、支所を超えて営農組織の活性化や有休農地の活用などを検討することを企画しています。また、子会社による営農支援についても、積極的に打って出る時機だと考えています。
さらに、中信地区には五つのJAがありますが、JA間で営農・経済事業に絞った連携ができないか。3月に五つの専門委員会を立ち上げました。たとえばライスセンターや共選場、育苗センターの共同利用ができないかなど。そうした課題解決をJAの枠を超えた「ウィン・ウィン」で検討します。来年3月までには、その結論を出します。
大金 事業・経営の基盤強化は?
田中 過去に3度の合併を重ね、支所の統廃合も進めて22支所にしてきました。私が組合長の間は、これ以上の支所統廃合はしません。ただ機能の見直しはしたい。フルスペックの拠点支所の周囲にフルスペックでない支所があって、オンラインでつなぐような見直しはしたい。
それと、職員の待遇を良くしたい。生産性がアップした分を職員に還元する。優秀な職員を確保するには、初任給が低い。組合員に理解していただき、職員の確保や待遇改善を進めたい。
大金 共済推進の「自爆」問題が取り上げられていますが?
田中 「一斉推進」は2023年度からやめることにしました。一般職員には共済推進の目標を課さない。共済推進がネックになって本来の業務が疎かになったり、精神的な負担になったりして全体的な生産性が下がってはいけない。推進目標をなくすことで直接的な収益は減るかもしれないけれども、すっきりさせようと理事会で決断しました。
ただし、金融・共済セクションは、それが仕事ですから専門職としてやっていただく。一般職員にも、情報提供はお願いしています。
地域貢献を「見える化」
大金 JAにはいま何が基本的に求められていると思いますか?
田中 私の生まれた1956年当時の農林大臣が、昨今の「農協改革」のようなことを言い出し、JAグループがそれを跳ね返したという歴史を聞いています。それができたのは農家戸数が圧倒的に多かったからです。しかし、今は絶対少数派に転じている。
ではどうするか。「食と農」を通じた地域貢献を「見える化」したい。「うちの地域のJAはこんなにいいことをしているのか」と思っていただければ、国民的な支持は必ず得られるはずです。SDGsも含め、地域で小さな課題を見つけ、皆さんと一緒に手を携えて解決していく。
大金 JAとして出来ることは「何でもさせていただく」ということですか。
田中 そうです。ただし「食と農」に関わることでね。全国には進んだ取り組み事例がたくさんありますから、参考にさせていただきながらやっていきます。
【インタビューを終えて】
知る人ぞ知る父親の秀一(ひでいち)さんが初代組合長を務めた時代から、「衆知と衆力」を結集した「全員経営」を目指してその名を全国に知られているJA。そのための「人づくり」に手間も暇も金も惜しまない歴史や伝統を継承する心意気が骨太に伝わってきた。
協同組合に寄せる揺るぎない確信が、北アルプスを望む信州から吹き寄せる澄明な風のように爽快だ。 (大金)
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