JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌診断の基礎知識(5)【今さら聞けない営農情報】第235回2024年2月3日
みどりの食料システム法の施行によって国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、国内資源の有効活用に期待が高まっています。作物が元気に育つためには、光、温度、水、空気に加え、生育に必要な栄養素を土壌から吸収しますが、作物が健全に生育するには土壌の健康状態を正確に把握することが必要で、そのために土壌診断があります。土壌診断を実施して土壌の状態を知り、正しい処方箋を提示するためには、それ相応の知識が必要になります。このため、本稿では土壌診断の基礎知識をご紹介し、正しい土壌診断の一助にしたいと考えています。
前回、土壌のpH矯正を化学的にご理解頂きたい一心でご紹介前に土壌の成り立ちをご紹介しましたので、今回は土壌の種類についてです。
土壌は、その基となる母材(土壌を構成する材料)によって分けられます。その母材には、火山灰と岩石が砕かれたもの、微生物や小動物が堆積した有機物などになります。これらの母材が、様々な方法で堆積して土壌の層が形成されますが、その土壌の種類を大きく分けると、火山灰が堆積してできた土壌である「黒ボク土」、河川の流れにのって堆積した土壌である「沖積土」、1万年以上前の氷河期に水没・堆積して地層が現世で隆起してできた台地や丘陵地を形成している「洪積土」、海岸近くで見られる「砂壌土」の4つに区分けられます。
これらの土壌区分ごとに土壌の種類があります。「黒ボク土」に属する土壌の種類には、黒ボク土、多湿黒ボク土、黒ボクグライ土、同様に、「沖積土」には、褐色低地土、灰色低地土、グライ土、「洪積土」には、褐色森林土、灰色台地土、グライ台地土、赤色土、黄色土、暗赤色土、「砂質土」には、岩屑、砂丘未熟土といったものがあります。この土壌の種類によって、土壌の性質が構成され、それに応じてpH調整のやり方が異なってきます。
また、これらの土壌を構成する粒の大きさによって礫(れき)、砂、シルト、粘土に分けられ、これらの構成割合で土壌の透水性といった土壌の性質が異なってきます。この土壌の性質のことを「土性」といい、砂土(S):粘土割合12.5%以下、砂壌土(SL):同12.5超~25%未満、壌土(L):同25超~37.5%未満、埴壌土(CL):同37.5超~50%未満、埴土(C):同50%以上と分類されます。その性質は、「透水性」は砂土>砂壌土>壌土>埴壌土>埴土の順に良く、「保肥力」は埴土>埴壌土>壌土>砂壌土>砂土の順に大きく、「養分含量」は埴土>埴壌土>壌土>砂壌土>砂土の順に多くなります。透水性や保肥力、養分含量は作物の生育を左右しますので、効率的施肥を行うためには土壌の種類や土性を正確に把握し、土壌にあった施肥設計が不可欠になります。
◇ ◇
本コラムに関連して、ご質問や取り上げてほしいテーマなどがございましたら、コラム・シリーズ名を添えてお問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日