JAの活動:JA全国女性大会特集2016
【輝いてフレッシュミズ】子育てで世代超えた交流2016年1月21日
非農家も仲間活動ひろがる
JAフレッシュミズ鹿児島代表井手雅美さん
昨年、県組織として結成したJAフレッシュミズ鹿児島。代表者の井手雅美さんにインタビューするため、子育てひろば「ピッコロ」のクリスマス会に参加した。「今日は今年最後のピッコロ。一番子供たちが笑顔になる日なんですよ」。井手さんは両手いっぱいにピッコロの道具を抱えて笑った。
◆JAの2階に 子育てひろば
「わあ、いいにおいがする!」
歓喜の声を上げた子どもたちが、JAさつま日置日吉支所の2階にあるピッコロに上ってくる。利用料金はおやつ代として300円。保育園や幼稚園前の3歳までの子どもと母親・祖父母が、日吉町だけでなく鹿児島市や伊集院町からやってくる。JAと関わりを持ったことのない利用者がほとんどだ。
「ケーキを焼く匂いが分かったんだね」。井手さんとJAさつま日置の生活福祉課の女性職員が、子どもたちを迎えるために受付に走った。
訪れた順に、おやつのクリスマスケーキが配られ、ピッコロでは30分間のおやつタイムが始まった。
参加する母親らの服装は、まるで女友達と遊びに行くようなオシャレな出で立ち。家では子どもと密接した空間にいるため「今日は出かけるんだっていう気合いが入っているんだと思います」と井手さん。食べ終ったおやつの皿は、子どもたちが自分でJAの職員へ渡しに行く。
ピッコロは、井手さんが経験した子育ての知恵で溢れている。
毎回続けてピッコロにやってくる子どもには、JA共済のアンパンマンシールを台帳に貼ってあげる。「これは幼稚園の先生たちがしていて、いいなって思って」取り入れたと話す。
この日ピッコロに訪れた親子は40人ほどで、初めての利用者も数人いた。初めてきた人には、名前などの基本情報の他に携帯のアドレスを尋ねる。ピッコロ開催前日にお知らせメールを送るためだ。通常は予約が必要ないため、ピッコロ側への連絡は不要だが、クリスマス会などイベントがある日には予約を取る。「これも経験からくることの一つ。『来なくちゃいけない』と感じると、今のお母さんたちは重く感じて続かなくなってしまう」。これまでに最大、25家族60人が来たこともあるという。
井手さんがピアノを弾き始めると、遊んでいた子どもたちが静かになった。月齢に合わせて参加できる行動を井手さんに教わりながら、参加者は歌ったり手拍子をしたり、部屋の中を歩き回ったりする。途中、井手さんは高音や低音を鳴らす。すると子どもたちが音に合わせて飛び跳ねたりしゃがんだり。音の変化に反応して動き、笑いが起こる。
この日は支所長がサンタクロースに扮し、子どもたちにJA共済のアンパンマングッズをプレゼントした。サンタに驚いた子どものきょとんとした顔を、集まった母親たちが写真に納めていた。
◆母親の交流で JAが身近に
ピッコロを利用するのは、子どもが入園するまでの間だけ。皆、ピッコロを卒業していく。「ピッコロのような活動を終わりにしたくない、というお母さんたちがフレッシュミズとして活動を始める」ことがフレミズ拡大のきっかけだったという。「最初は10人くらいだったけれど、それぞれが友達に広めていった」と話す。「日置でフレミズが楽しそうなことをしているから、県に広がるんじゃないか」と思ったという井手さん。JA鹿児島県中央会が60周年を迎える節目に合わせて、フレミズを組織化した。母親のコミュニティから広まっていった鹿児島県のフレッシュミズは、もともとJAに関わりのなかった非農家のメンバーが多い。
フレミズに加入しないピッコロの利用者も、JAを利用する機会が増えている。「あるお母さんが『結局JA共済に入ることに決めたんです』と報告してくれた」こともあり、そういった場面は増えてきていると話す。
ピッコロのおやつはすべて手作り。地穫れの野菜や果物を使用する他、Aコープの商品も利用している。参加者にはその日のおやつに使った商品を紹介する時間を設けている。特にゼリーは子どもにも母親にも好評で、ピッコロがあった日は、Aコープでゼリーが品薄になるという。
現在、JAさつま日置で活動するフレミズは50人ほど。井手さんは「次は手芸に料理、畑にも挑戦するつもりです」と意気込みを語った。
◆世代の違いを 上手く取入れ
ピッコロ開設は、井手さんの実の母親がきっかけ。井手さんの母親は10年以上前からJA関係で働いている。ピッコロは、「JA全中の子育て支援計画を知った母から話を振られたことがきっかけ」だった。
開設当初、「親が縁でピッコロを始めたと知られることに不安があって、最初は親が職員だと打ち明けられなかった」と話す。「でも最近は、親子だからこそ、摩擦が生じずやってこれたのかもしれないと思えるようになった」。そう言えるようになったのも、フレミズ全国交流集会で、親や家族の縁から活動が始まったと話す他のメンバーたちとの触れ合いがあったからだという。
ピッコロは、「親子で楽しむ」がコンセプト。井手さんは実の母と話し合う中で、「私たちの世代の子育てと、母の世代の子育ては違う」ことに気づいたという。「昔は色々なことを教えてくれる人が近くにいたけれど、今は母親が子どもと家に籠ることが多い。ピッコロで母と子が一緒に遊んで、家に帰っても同じように遊んでくれたら」と話す。子どもとどう接するのか、知ってもらうための場所。それがピッコロだ。
子どもと一緒に踊ったり歌ったりすることを恥ずかしがっていた母親たちも、1年ほど経つと一緒にできるようになる。
◆伝統を伝える 地域の繋がり
ピッコロのおやつを作ってくれる縁の下の力持ち、「おしゃべりクッキング」のメンバーはJA女性部所属。全員70歳以上で、料理のベテランだ。クリスマスにはケーキが並んだが、普段は鹿児島の郷土菓子「いきなり団子」や「がね」などが出される。
「郷土料理の作り方を知らない人が多い。私の母は、作るのが大変だから、と言うけれど、その大変さを知りたいというお母さんたちが中にはいるんです」。母親たちの意欲を取り上げ、フレミズの活動として味噌や、もち米を使った菓子の「あくまき」を作る料理教室も開いたという。
「おしゃべりクッキングに所属する女性部の先輩たちにとって、ピッコロが働く場所、動く場所になっていることが嬉しい。ゲートボールなんかもいいけど、子どもが集まるピッコロでは世代を超えたつながりが持てる。そういう場になってほしい。だからメンバーにはあと20年はおやつを作ってもらわないと。寝かしておくわけにはいかない」と笑った。
◆実家の雰囲気 くつろぎの場
ピッコロに参加する母親の中には、開設当時から来ている人も多い。通って4年半経つという利用者は、「何よりも、生のピアノが聞けることが嬉しい。学校を卒業すると親も聞く機会がないし、子どもたちも生の演奏に触れるきっかけが少ない。親は子どもの教育のために動き回っている」と笑う。「それに井手さんは男の子も女の子も育ててきているから違いをわかってもらえるし、会うとほっとする」。
結婚して日置から離れた人も、戻ってくるとピッコロに立ち寄ってくれる。井手さんはピッコロについて、「常に実家に帰って来たような空気にしたい」と話す。
JAが呼びかけている「食」の大切さに触発され健康管理士の資格を取得し、活動にもどんどん取り入れている井手さん。「もっとみんなが来てよかったって場所にしたい」と、常に前向きだ。
JA全中にピッコロの活動を取り上げてもらったことで、作文を書いたりフレミズとして活躍する人と話したりする機会に恵まれた。「むかし作文で書いた理想が、今は全部かなっているんです。これからも次の夢を一つ一つかなえていきたい」。
(写真)JAフレッシュミズ鹿児島代表 井手 雅美さん、サンタに扮した支所長と笑顔で写る参加者、子どもたちと楽しく歌遊びする井出さん、クリスマスのおやつづくりをするJA女性部の「おしゃべりクッキング」
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