JAの活動:今こそ農業界の事業承継を
【JAの事業承継】親子間の話し合いの「場」 創出が大事(JAしまね)2018年3月5日
1県1JA構想にもとづいて平成27年に誕生したJAしまねは、正・准を合わせた組合員数は約23万人。規模ではいまも全国最大を誇る。世代交代や事業承継に対する必要性はその当時から認識され、実際に担い手への恒常的な訪問活動を続けてきたが、担い手対策課の原紀行さんによると、「忍耐強く弱みを見せないという県民性」も手伝い、「プライベートなことだから誰にも相談できない」といった悩みを前に、JA側としてもいま一歩踏み出せない状況にあった。
そうした中で、平成27年度からTACの活動として、本格的な事業承継支援が始まった。取り組み自体は緒に就いたばかりだが、事業承継に対するTACをはじめとする職員の思いは強い。現在、24名のTACがおり、1483戸に対して、一人当たり65戸近くを月2回平均で訪問している。原さんによれば、物理的にも心理的にも辛いが、事業承継がうまく進まなければ、農地ばかりか地域社会そのものが崩壊してしまうとの危機感がそれを支えている。そうした中でいまの最大のテーマは「親子間の話し合いの場」をいかに数多く創出していくかにある。
心強いのは、「農業をいつかは継いでみたい」とする若手の担い手が多いことだ。しかし、これまでは実際に親と子だけで話をすると、どうしても感情的になり、極端な場合、激しい口論や喧嘩になってしまい、埒が明かなくなる場合が多かったという。
そこでTACが仲介役として介在することで、円滑な雰囲気が醸し出され、冷静な親子間の話し合いができるようになった。事実、そこで初めて「親の苦労が分かった」などと気づく場合が多いという。それはTAC担当者としても嬉しいことに違いないが、その苦労を分かっただけでは事業承継は進まない。事業承継とは、単なるバトンリレーではなく、親の持っている農業技術だったり、あるいは資産管理や会計処理などの経営的な部分での引き継ぎももちろん必要だが、周辺地域の農家や親戚などとの人間関係、信頼関係づくりもとても大事だ。担い手の事業承継に対する思いは、その組織形態によっても違うし、地域によっても温度差がある。それをどう吸い上げて、今後に活かすか。またTAC自身の問題共有も大事なテーマだ。
JAしまねでは、まだ始まったばかりの取組みであるため、地道な活動を続けながら、成功事例を積み上げていくことが何よりも重要と考えている。そのプロセスを踏まなければ、事業承継を進めるうえでTAC自身の自信につながらないし、ノウハウの蓄積も果たせないからだ。しかし、肝心なのは「継ぐ意思」という芽生えこそが大事であり、それを今後、どう大きく膨らませていくかが、最大の課題だという。事業承継の手続きはマニュアルで解決できるが、その志がなければ何も生まれない。
今後は、若手の担い手が農業に対して夢や希望のもてるように、また記憶ではなく記録に残す取り組みとして、たとえば最新の情報通信技術(ICT)と従来の農業技術との融合で、新しい農業のスタイルとその魅力や可能性を提示しながら、農業経営の「見える化」を図り、若手の担い手が安心して農業を継いでもらえるような取り組みを進める考えだ。いずれにしても、業承継支援こそJAの創造的自己改革と考える。
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