JAの活動:第28回JA全国大会特集「農業新時代・JAグループが目指すもの」
【JA自己改革の現場から・JA水戸】地場消費から輸出まですそ野広げ販売拡大2019年3月12日
JA水戸は大規模生産者から家族農業者まで多様な農業者が持つ生産力を地場消費の拡大、ブランド化による高付加価値化、さらには高品質農産物の輸出などへと、すそ野を広げて農業者の所得増大と生産拡大に着実に実績を上げてきた。対話運動も進め、組合員や地域農業の課題把握にも力を入れている。
◆地域内の消費を増大
今、JAには自己改革の取り組みを「見える化」し組合員に伝えることが求められている。
JA水戸は組合員との対話運動を進めるにあたって、自己改革の成果報告を図や写真でまとめたパンフレットを作成し、これまでの取り組みを説明している。
それによると29年度の農産物販売高は70億8900万円で27年度より5億5900万円、8.6%の増加となった。
米の買い取りにも取り組み、29年度は3億6100万円と27年度より1億7000万円増えた。89.0%も伸びたことになる。そのほか、ハウス軟白ネギ「水戸の柔甘ねぎ」の地理的表示保護制度(GI)登録取得などのブランド化、メロンの輸出なども実現した。
八木岡努代表理事組合長は「生産を拡大させるために、どう流通のすそ野を広げるかをJAの課題にしてきた」と話す。それが輸出による海外市場の開拓だが、実は農産物販売額を伸ばしているのは地域内消費の拡大も大きい。
行政も地産地消による食育に力を入れておりJAも連携して地場産農産物の供給に力を入れてきた。たとえば水戸市の学校給食では地場産農産物の比率は以前は30%だったが、最近は56%に上昇した。学校給食にはJAが納入業者として米や野菜、果物などを供給している。
そのなかで3年前から地場産のコシヒカリを年間を通して供給するようになった。JAが米の買い取り事業を拡大させたのも学校給食への供給があるからだ。そのJAによる買取米は特別栽培米(減農薬減化学肥料)であることと一定以上の食味値を条件としており、JAは学校給食のほか直売所、またニーズの強い実需者に販売している。
JAによる学校給食への食材納入によって、イチゴの提供も始まったという。
(写真)GI登録を取得「水戸の柔甘ねぎ」の生産者のみなさん
◆生産者支える子会社
JAは8つの直売所のほか、量販店内のインショップを15設置している。数年前は3つほどだったが急速に増えた。新たに量販店が出店すると、JAに対してインショップを開いてほしいとの依頼が増えているという。八木岡組合長によると地元産へのニーズは高く「JA水戸野菜」としてブランド力が上がり、インショップと直売所への野菜販売で経営が成り立つ生産者も出てきているという。JAは直売所へ出荷する生産者への栽培講習会にも力を入れている。
「定年帰農者などもインショップへの出荷で経営を成り立たせているなど、担い手層だけでなく幅広い層が農業に取り組むようになっている。生産体制をしっかり構築し維持していく必要がある」と話す。
その生産体制を下支えする機能を発揮しているのが3年前にJAの子会社として設立した「アグリサポート」である。
当初は5か所のライスセンターの運営と水稲の育苗を担うのが目的で、水稲は10万枚を供給しているが、さまざまな事業を担うようになってきた。最近では田の除草作業やハウスのビニールの張り替えなど作業受託や、ハクサイなど野菜苗も生産し小規模農家に供給しているほか、契約栽培のショウガ、タマネギの生産も担っているという。
GI登録を取得した「水戸の柔甘ねぎ」の苗も同社が部会の生産者に供給し、ほ場巡回も行うなど栽培管理に目を配りブランド維持を支えている。特徴は白ねぎより1・6倍ほど長く、柔らかでグルコースの含有量が多いため甘みがあること。またピルビン酸が少ないため辛味やえぐみが少なく緑の部分も食べることができるという。栽培はすべてビニールハウス。出荷は年末から5月までとなるが、すべてがGI登録のブランドねぎとして出荷されるわけではなく、良品質のものからさらに選抜される。それを定時、適量に出荷することが求められる。最初に生産が始まったのは平成8年のこと。最近は、この「柔甘ねぎ」の生産に若手農業者や新規参入者も増えているといい、GI登録を機にさらに新たな生産者が増え地域の生産力が強化されることも期待されている。
八木岡組合長はこのようにブランド品を支え、また、新規参入者をバックアップするためにも「生産部会を支えるサービスが必要」だと話す。
今後は新規就農者を受け入れ、育成する機関となることや、地域での新たな特産品づくりに向けた試験栽培などの役割も期待されている。
農産物の海外輸出には28年から県とともに茨城町メロン生産部会が、春メロンをマレーシアやタイへ輸出している。部会員が自ら現地に行き店頭に立った。新たな市場開拓で部会は盛り上がっており、今後の輸出増が期待されている。
(写真)2万アイテムをそろえた「JA水戸・農家の店しんしん内原店」
◆「JAがいい」めざす
もう一つJA水戸の事業展開で注目されたのは、商系との共同運営による農業資材店舗の開設だ。平成29年にアイアグリ(株)と「JA水戸・農家の店しんしん内原店」をオープンした。より多くの品ぞろえと休日営業を可能とし農家の利便性向上に貢献しようと考えた。「土壌診断をして資材を供給したりGAPの指導もするなど、JAと考え方が近い」と共同経営することを判断。当初はJAの資材店舗と競合するとの批判もあったが、以前にJA資材店の10倍以上にもなる2万アイテムの品ぞろえと、休日は年末年始などごくわずかの店として評価は高まっている。敷地内にはJAの直売所もあるが、来店客が1割ほど増えたといい「今は相乗効果が出ている」と八木岡組合長は手ごたえを感じている。品ぞろえが豊富なことから、生産者のニーズをつかむアンテナ的な存在でもあるという。
こうした取り組みをふまえてJAでは職員が組合員宅を訪問する対話運動を昨年秋から進めてきている。組合員からは厳しい意見も多く聞かれたが、「JAが元気でないと地域も元気になれない」と期待する声や、「JAがなくなったら大変なので変化に対応して存続してほしい」、「今後も総合事業を」などの声もあった。同時に高齢化が進むなかで、JAによる農地の活用などの支援を求める声も増えているといった新たな課題も明らかになってきた。
八木岡組合長は、大規模化・法人化してJA利用は選択肢の一つと位置づけJAに厳しい考えを示す生産者もいる一方で、小規模、兼業農家などは営農と暮らしの両面でJAを頼りにしていることが改めて分かったという。「思っていた以上に意見は幅広く、それだけ組合員も多様化していることを実感した。JAは事業を広げすぎて専門性が低いという意見もあれば、それがJAのいいところだと評価する声もある。現状を把握することは大切なこと。今後はそれらにどう回答するか。全国連とも協議をしながら、宿題返しをしていかなければならない。やはりJAがいい、といわれるために改革の取り組みを続けていく必要がある」と話している。
(写真)JAによる供給で水戸市の学校給食の地場産比率は6割近くに。中央が八木岡組合長
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