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JAの活動:ここまで落ちた食料自給率37% どうするのか この国のかたち

【インタビュー】姜尚中東京大学名誉教授 個性ある地域社会 協同組合で実現を 2019年10月8日

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インタビュー姜尚中東京大学名誉教授(公益財団法人熊本県立劇場館長)

 わが国のカロリーベース食料自給率は史上最低の37%まで落ち込んでしまった。私たちは食料を海外に6割以上も依存していることになる。大きな要因が農業生産基盤の弱体化であり、農村地域の危機である。それはこの国のかたちにも関わる問題である。たんなる農業振興の方策ではなく、この国で人々が持続的に暮らしていくための視点を持って考えなければらない。特別企画として有識者に聞く。
 第1回は、姜尚中東京大学名誉教授にインタビューした。

◆小規模農業が国を担う

 --日本の農業、そしてJAはどうあるべきだとお考えですか。
 
姜尚中氏 全国農協中央会が一般社団法人になるということですが、それはある意味では自由度が高まるということでもあります。自由度が高まるということは、組織全体として経営合理性も問われてくるということだと思います。
 農業というのは国民生活の根幹ですし、日本には農本主義的な考え方が連綿としてあったと思いますが、今の国策としては、農業の大規模化、またいわゆる企業など新規参入や、ある種のアグリビジネスをもっと参入させようという、開放系の方向にもってきたいということだと思います。
 しかし、全世界的な動きはやはり家族農業という小規模の農業ではないですか。日本でもそれが米作中心のモノカルチャーではなくて、むしろ多品種少量生産に向かう可能性があると思います。しかもできる限り環境に負荷をかけないで持続可能な農業、これはもう国連も大義名分にしているわけですから、その方向に進むべきだと思います。
 先日もドイツとスイスに行ってきましたが、日本とは事情が違うとはいえ、やはりある程度小規模で小さなコミュニティのなかにしっかりと根を張って、そこが新しい共同体を形成し、そして自然環境を可能な限り保護していくという農業と農村のあり方を感じました。よく言われる、循環型農業です。
 それにくらべると、日本政府が推し進めようとしている考え方は、それと逆行しているのではないか。そういうなかで全中が一般社団法人へ切り替わっていくということが、全体としていわゆる政府が推し進めようとしている儲かる農業を追求する方向にもっと進むことにならないのかとの懸念も持ちます。
 日本のような狭隘な耕地面積、山あいが多くて、平地もなだらかではない、こういう地形風土を考えると、私はやはり小規模な家族農業、これがひとつのユニットになって、しっかりと地域社会に根を張って循環型の農業を実践することが日本の農業ではないかと思います。そこで高付加価値化もできていくのではないかと思います。

協同組合の連携を

 今の時代に儲かる農業をめざすということは、基本的には遠隔地交易、アジアにどんどん売り捌くことができるような農業をめざしなさいという、非常に競争的な考え方を導入していくということになりかねません。
 しかし、JAがこれからの時代を自分たちで切り拓いていこうとするなら、農協という1つのアソシエーションとして、生活協同組合、漁業協同組合などを含めて、日本の社会のなかにあるさまざまなアソシエーションがもっと緊密に関係を持っていく努力こそが必要ではないでしょうか。
 先日、和歌山市でJAと生協と漁協の3団体主催の講演会に招かれましたが、やはり今後、協同組合方式というのは、ますます少子高齢化が進むなかで大切になると改めて思いました。たとえば貨幣を持っていなければモノが買えませんが、そういう人たちがこれから増える可能性があります。そこに生活を支えるためにどう役割を発揮するか。ある先生は"生活農業"ということを指摘していましたが、必要とする食を得ることはできる生活農業といった広い視野での営みも地域社会のなかにあって、JAがそれを包むようなアンブレラとして存在するという姿を考えていただきたいと思います。JA単体が経営としてどう生き残りを図るかということ以上に、JAの考え方が地域社会のグラスルーツとして浸透していくことが大切です。そしてJAが協同組合としてそれ以外のアソシエーションと緩やかに地域単位でネットワークをつくっていくべきではないかと思います。
 協同組合がなぜ出てきたのかを考えると、それは単なる営利本位ではないからです。営利の極大化を求めればいいというのであれば大手のスーパーマーケットなどにかなわない。私の言葉でいえば、協同組合はやはりアソシエーションであって、会員がボランタリーに集まって自分たちを相互扶助していく。農協もそこから出発しているわけですし、生協もそうです。
 合理化や経営の拡大、さまざまなデジタル化、情報化への対応も進めていく必要はあると思いますが、基本は小さな単位が地域に根ざして地域というものと結びついて、その連合体が全国組織になるということだと思います。

「地域」が日本社会の特徴

 日本の最大の長所は、地域社会が多様性を持って、それなりの個性的な風土や歴史と合わさった産業がこれまで定着してきたことです。その根幹を担ってきたのがJAだったと思っていますが、そういうものがどんどん淘汰されてなくなっていけば、日本の足腰自体が弱まっていく。
 たとえば、今回、台風被害を受けた千葉の状況は、それこそ単なる営利本位で町や村の都市計画をやっていけば、どんな目に遭うのかということを如実に示したと思います。いかに脆弱な基盤の上にこれだけの都市化を進めたか。そして一旦、事があると食の問題、水の問題が出てくる。こうした事態は今後の気候変動を考えるともっと増えるのではないか。熊本地震後の南阿蘇を視察しましたが、地殻変動が起きて農業がもうできない。そうすると野焼きもできなくなるので生態系も変わってしまう。
 日本は今、地球温暖化の影響をもろに受けていて、今回の千葉、昨年の岡山の水害も含めて、こうした災害はランダムに起きるのではないかと思います。そうしたときに食料生産をはじめとする第一次産業の底力が試されるということだと思います。
 しかし、そういうことに対して非常に感度が鈍い。言わせてもらえば、内閣改造は最低でも5日から1週間は伸ばすべきだったと思います。担当大臣が替わるわけで、これはちょっと信じられないことでした。どうしてこう危機管理が疎かなのか。
 また、今回は大型化することが持つ脆弱性を示したともいえます。ですから、やはりいろいろな面で小単位が自立化しネットワーク化していくことが大事だ思います。本来、協同組合は分権化の考え方です。その分権化の上に、その力の合力として中央組織がある。アソシエーションというものはそういうものです。

◇オルタナティブを考える

 --新しい社会に向けた動きをどう作り上げていくか、課題です。

 日本はどうも現状維持を望む人たちが増えている。もちろん代替案を出せない野党の問題もありますが、政党政治とはかかわりなく、市民社会や地域社会のなかで自分たちが当事者であり、自分たちが動くということが先進国、開発途上国で起きているわけです。それが香港ではもっとラディカルに動いていたり、フランスでも黄色のベスト運動が出てきました。世界をみるとある種のカウンターカルチャー的なものが出てきていますが、日本はなぎ状態です。
 私は今の政権を批判するか、しないかという問題ではなく、やはりオルタナティブがあるはずだということを考えるべきではないかと思っています。それは制度圏の政党政治が動かなくても、自分たちが動いていくということです。この文化は実は日本にもあって、とくに東日本大震災を契機として自発的な取り組みが進んでいます。
 ただ、どうしてもマジョリティの動きは中央を中心に、メディアも世論も動いています。極端なことをいえば東京で災害が起きなければ問題はないとでもいうように。
 それは裏返していえば、過度の中央集権化が進み、そこになびいていくしか生きるすべがないというような流れで、それがなかなかとまらない。それが忖度ということかも知れません。私はソフトな準翼賛的なものが広がってはいないかと思います。自民党もかつては派閥が力を持ち擬似政権交代というかたちで政策を修正していった。今はそれもなくなっています。では、どうするか。
 かつて亡くなった韓国の金大中元大統領と話したことがあります。私が話したのは日本国内でヘイトスピーチなども広がっていることもあって、両国関係のために少し手を差し伸べてくれませんかというようなことです。そうしたら烈火のごとく怒られました。何を言っているんだ、君が動かなくて誰が助けてくれるんだ、と。民主主義は水道の蛇口をひねれば水が出るようなそんなものではない。われわれは血を流した。血を流したからこそ外国からも手を差し伸べてもらった。だから、自分でまず動きなさいと。当たり前のことですが、父親以上に叱られた思いでした。
 どこかで消費者主義、客観的な態度が蔓延しているのではないか。あなた作る人、私食べる人、というキャッチフレーズではないですが、今日のテーマに即していえば、生産者、消費者という固定的な役割ではなくて、生活という点から農業や食を見直していけばお互いのネットワークができるはずです。

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