JAの活動:第42回農協人文化賞
【第42回農協人文化賞】厚生事業部門 愛知県厚生農協連知多厚生病院名誉院長 宮本忠壽氏 『世界健康半島』めざす2022年2月21日
愛知県厚生農業協同組合連合会知多厚生病院名誉院長 宮本忠壽氏
私は、1977年に名古屋市立大学医学部を卒業し、同部第一内科へ入局しました。1989年に愛知県厚生農業協同組合連合会(JA愛知厚生連)知多厚生病院に内科部長として赴任し、2006年に知多厚生病院院長を務め、2013年からJA愛知厚生連の理事を兼務しました。また、2017年から名誉院長として、ほぼ毎日外来診療に従事しています。
知多厚生病院は、知多半島南部に位置し、1964年6月1日、JA愛知厚生連の9番目の病院として開院しました。「保健・医療・福祉の活動を通じて、地域住民が安心して暮らせる地域社会づくりに貢献する」という病院理念に基づき、JA・行政・医師会等との連携により、様々な医療活動を実践しています。
1991年知多厚生病院付属篠島診療所を開設、1999年から知多半島二次医療圏の第二種感染症指定医療機関、2002年から離島医療を支援するへき地医療拠点病院、2004年から臨床研修指定病院、2007年から災害拠点病院に指定されました。また、2009年に外来診療棟を新築し、2021年4月1日現在、病床数は199床(一般193床、地域包括ケア85床を含む、感染症6床)、職員数は非常勤を含め485人で、急性期から回復期医療、さらに在宅医療の支援など知多半島南部の公的医療機関としての役割を担っています。
2013 年7 月29 日に中日新聞Linked が発行した当院の小冊子「病院を知ろう」表紙
第二種感染症指定医療機関として、2009年の新型インフルエンザ感染症に対して中部国際空港検疫所と連携し、帰国患者を受け入れました。また、最近では新型コロナウイルス感染症治療に対して積極的に取り組んでいます。感染症病床を6床から10床に増床し、2020年2月から2021年11月30日現在、中等症患者を中心に273人に対して入院治療を行っています。また、地域住民に対して新型コロナウイルス感染症に関する情報を広報誌、ホームページや講演等で発信しています。
へき地医療拠点病院として篠島・日間賀島の離島医療を支援しています。付属篠島診療所では、診療のみならず、島民の生活や健康を支え、初期臨床研修医の教育の場として地域医療を守る医師を育てています。また、2019年から当院と篠島との間でオンライン診療・オンライン服薬指導を実施しています。
災害拠点病院として、地震などによる広域災害を想定した訓練を年1回行っています。当院の職員、知多南部救急隊、地元医師会、美浜町および南知多町、愛知県半田保健所、医学・看護学生、ボランティアなど総勢300人前後で、地震による病棟火災の消火・避難訓練、災害で被災された地域住民に対するトリアージ訓練、医療連携による患者搬送訓練などを実施しています。また、2011年の東日本大震災や16年の熊本地震発災時には、災害医療チームを派遣しました。
世界健康半島構想について概説します。基本的コンセプトとして1990年3月にJAあいち知多が公表した「知多半島農業・地域・農協開発構想」において知多半島を「世界健康半島」と位置づけています。これは健康によってくくられる豊富な地域資源を有効に活用しつつ、また中部国際空港や湾岸道路などの輸送網を利用し、農業はもとより地域の文化や産業、あるいはライフスタイルや企業スタイルの活性化を目指しています。
また、知多半島の地域開発および農業開発コンセプトとして、「農」を中心としてあらゆる生活場面で人々に健康を提供し、国内外に情報を発信し、地域の発展に寄与していくことを目論み、知多厚生病院などとの緊密な連携のもと『世界健康半島』の整備を推進しています。片桐健二元院長はJAあいち知多への介護福祉事業を積極的に支援し、社会福祉法人を設立しました。
また、私は2013年からはJA組合員に対して当院が実施する糖尿病・肝臓病・母親教室、住民公開講座、調理実習などの参加者にJAポイントカードのポイント付与、人間ドックや入院室料差額の割引を実施し、最近ではJAあいち知多本部での新型コロナワクチン集団接種の支援などを行っています。
最後に、近年医療を取り巻く環境は、大きく変化しようとしています。病院だけで住民に安心・安全な医療・介護を提供し、生活を支えることは困難になりました。このような状況のなか全世代型地域包括ケアシステムの構築が重要になっています。
このシステムは「住み慣れた地域で豊かに生活できる社会(Aginginplace)」を目指し、「医療」、「介護」、「予防」という専門的なサービスとその前提としての「住まい」、「生活支援・福祉サービス」が相互に関係し、連携しながら地域での生活を支えています。このシステムの達成には、地域での自助・互助・共助・公助の組織や体制をどのように作り上げていくかが重要であり、「地域で共に生きる」思いを全ての関係者が共有することが極めて肝要と思われます。
座右の銘
【略歴】
みやもと・ただひさ 1952年生まれ。1977年名古屋市立大学医学部を卒業し、同第一内科へ入局。1989年にJA愛知県厚生連知多厚生病院内科部長、2006年から同院長、2013年から愛知県厚生農業協同組合連合会理事を兼務。2017年から知多厚生病院名誉院長。
【推薦の言葉】
地域の健康けん引
宮本氏は32年にわたり、地域医療の向上、および知多厚生病院の発展に尽力した。特に平成21(2009)年の新病棟の建設にあたっては「世界医療半島」構想を掲げ、健康予防から健康診断の重要性を説くとともに、消化器内科医として積極的に胃カメラを導入。自ら外来で検診後の健診枠を設定するなど、疾病の早期発見、二次健診の充実に努めた。
また、地元医師会が主導してきた休日診療所機能を知多厚生連病院の救急外来に集約。これによって地域住民は、毎回違う診療所へ行く必要がなくなり、休日でも安心して救急医療を受けることができるようになった。このほか、過疎・高齢化が進む知多半島南部で、「AginginPlace」(住み慣れた地域で生涯豊かに生活できる社会)を掲げ、行政・医師会・JAなど地域のさまざまな組織とのネットワークを通じ、保険・医療・福祉を総合した活動を展開している。
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