JAの活動:第43回農協人文化賞
【第43回農協人文化賞】特別賞 元農林漁業団体職員共済組合理事長 【故人】松岡公明氏 我が体験と抱負(足跡)2023年2月14日
元農林漁業団体職員共済組合理事長 【故】松岡公明氏
(1)JA―IT研究会の立ち上げとJA役職員の意識改革・人材育成
平成13(2001)年にJA―IT研究会を設立、その後の活動をリードした。
研究会を通じて、全国から参加するJA役職員に対して、制度・政策に依存した従来型のJAグループ営農経済事業から、マーケッティングを軸として、実需者や消費者のニーズに応じて、産地を創り上げていく改革の必要性を徹底して訴えかけ、JA役職員の意識改革をはかり、現場において改革を実践していくリーダー育成に尽力した。
夜の懇談で氏を交わることを楽しみに、全国から毎回多くのJA営農経済部門の若手職員が研究会に参加した。現場で悩み、壁にぶつかる職員は、研究会で全国の優れた実践事例の話を聞き、ヒントを得て、そして、懇談で氏に励まされ、勇気を得て、現場に戻り、挑む。このことを通じて、大きく成長した。研究会参加者の中から、多くのJA役員が輩出され、現在のJA自己改革の実践に奮闘している。
2018 年 JAーIT研究会人材育成セミナー 講師風景
(2)水田農業ビジョン全国運動、集落営農育成全国運動の普及
平成16(2004)年から水田農業ビジョン及び産地づくり交付金を2 本柱とする新たな米政策がスタートするにあたり、JAグループとして集落での話し合いの徹底を通じて、ビジョンに「魂」を入れるJAグループ水田農業ビジョン運動の普及をはかった。ビジョン運動の普及は集落営農育成へと引き継がれた。
平成19(2007)年からの品目横断的経営安定対策に対応するため、集落営農育成全国運動をスタートさせた。運動において、集落営農の意義を明確にし、組織化のノウハウを確立し、全国の水田地帯で多くの集落営農の設立につながった。
氏独特のわかりやすくユーモアある話は、全国のJA役職員、組合員リーダーの心をうち、行動へと駆り立てた。
(3)協同組合人の育成
平成25(2013)年からJA松本ハイランド「協同活動未来塾」塾長となり、協同組合運動をけん引する組合員リーダー育成に取り組んだ。塾では、地域課題に関する問題提起を行い、グループごとにそれぞれの考えをまとめ、発表する方式を採用し、話し合いの大切さ、仲間と議論することの楽しさを伝えた。また、塾が終わると、得意の料理をふるまうなど、塾生の心をつかむ指導の中から、村長など多くの地域リーダーを育成・輩出した。
全国の多くの仲間が氏の死去を悼んだが、その姿と思想は、受け継がれ、農協運動の発展に資している。
【略歴】
まつおか・こうめい 昭和31(1956)年熊本県菊池郡大津町生まれ。昭和56(81)年早稲田大学政治経済学部卒業、同年全国農協中央会入会、平成8(96)年総務企画部企画課課長、9年地域振興部生活課課長、13(2001)年営農対策室営農企画課課長、JA―IT研究会設立、15(03)年食料農業対策部水田農業ビジョン対策室室長、21(09)年(社)協同組合経営研究所常務理事、26(14)年農林年金理事長。令和元(19)年4月青森県山中事故により死去、享年62歳。
【推薦の言葉】
JAのリーダー育成
松岡氏は平成13年に「JA―IT研究会」を立ち上げ、全国のJA役職員に対して、制度・政策依存の従来型の営農経済事業から実需者や消費者のニーズに応じた産地づくりの必要性を訴えた。併せて役職員の意識改革を促し、改革を実践するリーダーの育成に努めた。
平成16年からスタートした新たな米政策対策では、集落での徹底した話し合いを呼び掛け、ビジョンに「魂」を入れるJAグループ水田農業ビジョン運動を推進。また平成19年からの品目横断的経営安定対策に対応し、集落営農育成の全国運動をスタートさせた。集落営農の意義を明確にして組織化のノウハウを示し、多くの集落営農の設立に役立てた。
また長野県のJA松本ハイランド「協同活動未来塾」塾長も引き受け、組合員リーダーの育成にも取り組んだ。全国の多くの仲間が氏の死を悼んだが、その実践と考えは全国の仲間に受け継がれている。
【谷口信和選考委員長の講評】
松岡氏は全中の営農企画課長などを経て農林年金理事長になられました。そして、JA-IT研究会を立ち上げ、JA役職員の意識改革・人材育成に成果をもたらし、水田農業ビジョン・集落営農育成全国運動の普及を通じて地域農業の構造改革に影響を与えました。松本ハイランド農協では「協同活動未来塾」塾長を引き受け、草の根からの地域リーダー育成にも取り組みました。「くしゃみ3回ルル3錠」の松岡さんのユーモアあふれる話は多くのファンを引き付けました。
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