JAの活動:第69回JA全国青年大会
【青年座談会】「自他共楽」の思い壁なし 災害支援で感じた盟友の力 夢は東京で農業五輪(2)2023年3月3日
【出席者】
JA東京青壮年組織協議会顧問 須藤 金一さん(45)
JA栃木青年部連盟監査委員 八木澤 康之さん(41)
JA西三河露地野菜部会元部会長 三上 佳之さん(40)
司会・文芸アナリスト 大金 義昭氏
「自他共楽」の思い壁なし 災害支援で感じた盟友の力 夢は東京で農業五輪(1)より続く
SNS活用で組織力生かせ
大金 2015年の「都市農業振興基本法」ですね。八木澤さんには「農Tuber」として、「関係人口」や農業ファンを増やすミッションがありますよね。
八木澤 私と同じ第3代「農Tuber」の白石長利さん(福島県いわき市、野菜・米農家)とつながり、「今度一緒に何かしよう。盛り上げようぜ」となりました。
若い子たちが野菜を食べない。食べるのが面倒とか、値段が高いとか。そこでインスタライブを使って、4月から「この人の作っている野菜を食べたい」を発信していく。私と白石さんが入って、横のつながりの仲間の野菜を格安で売る。捨てられる規格外のものですが、味も栄養も変わりません。見る人は、ボタン一つで農とつながれて、フードロスも防げます。
子ども食堂通じて伝える「食べる喜び」
大金 「子ども食堂」への食材提供もしていますね。
八木澤 栃木県の青年部では、毎月決まった日に県内全域の「子ども食堂」に食料を無料で届け、「食べる喜び」を伝えています。宇都宮市では、夜の飲み屋街でたくさんのシングルマザーが働いています。客として行ったとき、「子どもにお金がかかるから、私食べてないんだ」と聞きました。何とかしなければと、みんな米を担ぎ、私はニラを4箱担いで持っていきました。女の子たちのリーダー格を呼んで「食に困ってるキャストがいたら言えよ」と。駅前の店にはポスターを貼ってもらい、「何かあれば連絡して」と伝えました。すごい反響で、食育イベントにも、爪が長く化粧ばっちりした人たちが買いに来る。そこに壁はないんです。みんな笑顔で!
大金 二人の話に三上さんはいかがですか。
三上 話を聞いていて、すごい取り組みをされているなと思いました。私が独立した時、農協の金融課から「農業やめなよ」と言われたのが衝撃でした。キャベツを出荷した時、仲買人に「何でお前、キャベツ持ってきた」と言われたこともありました。余っているというのです。けれども自分の信念、一度やろうと決めたものを途中で投げ出したくないので頑張ってきましたが、西三河の農協はいろんな部会が活動していますが、露地野菜部会はぼくが一番若く、次に若い方は63歳。だけど部会存続の危機感が乏しく、もどかしさもあります。一人でできることには限界があります。地域ぐるみでやっていくには農協の力が絶対に必要です。
大金 三上さんの農業は、知恵を働かせた柔軟な仕組みをつくっておられる。部会長をしてみた感想は?
三上 せっかくなので、これを機に「西尾の野菜」を知ってもらおうと「おいしい野菜づくりに、一致団結していきましょう!」と呼びかけた直後、コロナになっちゃった(笑)。西三河ではけっこう早い段階でJAあいち経済連と一緒に加工契約野菜にも取り組みました。機械投資をして正社員も入れたところでコロナになり、契約数量も大きく下げられ、ヤバイかなと思ったんですけど、いろんな人が助けてくれ、その方たちのおかげで今の自分がいます。
大金 在所の栃木県に尊敬する「3傑」がいます。足尾鉱毒問題に取り組んだ田中正造と作曲家の船村徹、棟方志功に影響を与えた版画家の川上澄生なのですが、船村演歌のコンセプトは「人の情けと人の縁」。三上さんのお話には「人の縁」を感じます。
自分らの農協よりどころに
三上 「縁」は大切にしている言葉の一つです。妻との出会いも一つの縁で、「愛楽農園はいぼーなす」の名称はローマ字表記のHIBONUSを並び替えるとSHINOBUになる。「忍」は妻の名前です。
八木澤 愛が止まらない。(笑)
須藤 胸キュンだね!
三上 個人事業主でやっていくと、どうしても「俺が、俺が」となる。だけど、そう言えてる裏には、家庭を守ってくれ、一緒に仕事をしてくれるパートナーの力がある。だから妻には感謝しなきゃという思いから屋号にしました。西尾で一番になろうというんじゃない。地域として盛り上がりたい。それには、農家・農協・行政が、一つの目標に向かって挑戦しなきゃいけない。
大金 地域の「縁」も大切だけれど、今日の座談会も含め、越境していろんな縁を広げたいですね。須藤さんの場合は?
須藤 就農した翌日、よく分からないままに青壮年部(加入)用紙にハンコを押しましたが、相談できる相手がいるというだけで心が楽になりました。外の世界に飛び込み、全国の盟友ともつながった。JAってだけで一瞬で打ち解けられる世界をつくった先輩たちに感謝です。
2年前まで都農青協委員長としてJAの総会に呼ばれた際に、伝えていたことがあります。「農協の意味、わかりますか。私たちは出資し、利用し、参画する。私は銀行で働いていましたが、株式会社の金融機関は利益が最優先です。農家の困りごとや農政課題に対して共に声を上げることはありません」と。一時、農協はいらないとか、農協は独り占めしているとか外部から言われましたけど、言われる筋合いはない(笑)。農家にとって必要だから自分たちでつくり上げた組織なんだから。
大金 農協の「強み」は絞り込むと二つある。一つは「協同活動」で、もう一つは「総合事業」。この二つは掛け算なのですが、放置すると「強み」は「弱み」に転化する。「強み」を鍛えることが大切です。
盟友の力実感した災害支援
八木澤 2019年、関東で大きな台風被害がありました。千葉県茂原市が風水害で建物が倒壊し、ハウスがつぶれた。あの時こそ、盟友の力を見た。「困っている」という一言が上がってきた瞬間、仲間を助けようと支援が一気に広がりました。須藤さんが都農青協委員長をしていた時で。
須藤 青年組織の良さですね。スマホのラインでみんなを動かして。
八木澤 「ありがとう」、有難いという言葉も農業にぴったりで「難」があるからこそみんなに頼ったり、自分に「難」があったりしたときも仲間が叱ったり助けたりしてくれる。それができるのが青年部の「縁」なのかな。目先の利益は生活するために必要なんですけど、そこで止まっちゃいけない。もう、「一人勝ち」の時代ではありません。
大金 最後に一言ずつどうぞ。
国内農業五輪夢持ち明日へ
八木澤 私は一つしかありません。オリンピックって4年に1度のスポーツ祭典じゃないですか。農業でそれをしているのがフランスです。凱旋門を通行止めにして収穫農業祭を開く。私も、今までつながった人脈を生かして、東京銀座で4年に1度、でっかい農業祭をJA全青協主体でしたい。三越前を封鎖して土を大量に入れ、「電通」などは入れないで(笑)、小さな子どもから大人まで食育だったり乳搾り体験だったり。野菜も買えてトラクターも乗れて収穫もできて畑も耕せる。50歳になった時にそれをかなえてみんなの笑顔が見てみたい!
須藤 1400万人ほどが住んでいる東京の農業の役割って、子どもたちや大人たち、地域の人たちを巻き込んで日本農業をPRすることだと思っています。だからぜひ「東京」を使ってもらいたい。
三上 自分自身が悩みながらやってきた思いをどうしたら解決できるかな、その切り口が少しでも見つけられたらという思いで今日は出席したんですが、全然違って、自分の思いを遥かに超える話に加われ、農業っていいなって素直に思いました。農業のオリンピックはまさに「自他共楽」、協力させてもらえるならぼくもやりたい!
大金 元気の出る話を沢山ありがとうございました。
【座談会を終えて】
「50、60洟垂(はなた)れ小僧。70、80働き盛り」と言われる時代。40代前半には無限大の可能性がある。「ああ、いいなあ!」と嫉妬を感じるほど魅力あふれる三者三様の「元気・やる気・本気・勇気」に心が躍った。春本番も目の前に迫っている。(大金)
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