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JA全中中央SP

【クローズアップ・新型コロナ 農業打撃】和牛枝肉価格 前年比3割安2020年3月18日

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各地で産地支援消費促進策も

 新型コロナウイルス感染症の拡大は農業にも大きな影響をもたらしている。インバウンド需要の減少で和牛枝肉価格が昨年にくらべて3割以上、大幅に下落している。休校による学校給食向けの牛乳や食材などのキャンセルや、イベントや学校行事の中止や延期で需要期である花きの販売額も減少している。こうしたなか産地と消費者を応援する取り組みも各地で動き始めている。これまでに明らかになった農業への影響などをまとめた。

「次の新たな思い切った対策を考えていかなければならない」と話す岸田自民政調会長。11日の会合で「次の新たな思い切った対策を考えていかなければならない」と話す岸田自民政調会長。11日の会合で

◆消費大きく落ち込み
 JA全中の中家徹会長は3月11日、自民党の経済成長戦略本部・新型コロナウイルス関連肺炎対策本部の合同会議で新型コロナウイルス感染症による農業関係への影響について話し、適切な対策の必要性を訴えた。

 JA全中が実施した全国のJA、連合会、中央会などに対して影響と対応、要望などについての調査結果によると、おもな影響として、外国人観光客の減少で外食や土産などの需要が減少し農畜産物の消費量が減っている。

 とくにインバウンド需要で下支えされていた和牛肉の価格が大幅に下落している。和牛枝肉(和牛去勢A4)価格の3月3週目の加重平均価格は昨年は1kg2434円だったが、今年は1665円と700円以上も下落している。1頭の枝肉重量が500kgとすると1頭あたり35万円以上の収入減少となる。第2週よりさらに下落した。

参考:和牛枝肉価格の推移

 また、JAグループの直営飲食店で2~3月の売上げが通常の7割程度に落ち込むという見通しもある。

 休校による学校給食向け牛乳のキャンセルも拡大。販売減少と在庫増加による需給緩和と所得減少の懸念も出ている。イベントや卒業式など学校行事の中止や延期などで農畜産物の業務用需要が減少し、とくに花きの販売額の減少が大きい。

 そのほか、輸出も含め販促活動の自粛で営業活動に支障が出ており、取引先が自宅待機となり商談が実施できないという声も出ている。感染者が出た県ではふるさと納税の返礼品がキャンセルされたという事例もあり、風評被害の発生も懸念されている。


◆外国人実習生に支障
 営農活動にも影響が出ている。農家組合員の技術向上のための講習会が中止されたり、次年度の生産・販売計画などを決定する生産部会の会合や、農閑期に開催されてきた先進地視察や、市場での販促活動も自粛、中止になっているものが多い。 営農指導員による農家巡回の自粛も余儀なくされるなど、技術指導や情報共有、販促等が実施できず、今後の農家の営農、経営に支障をきたしかねない状況だ。

 特に中国人技能実習生の受け入れに支障が出ている。全中の調査で報告があった9道県(北海道、茨城、栃木、群馬、千葉、愛知、徳島、熊本、鹿児島)で360人程度の受け入れの見通しが立っていない。JAグループでは平成31年4月現在で約3200人程度の技能実習生を受け入れており、そのうち2200人ほどが中国人だという。
 現在、中国政府の許可が下りなかったり、送出機関が機能を停止したりなどで来日できないケースや、春節で一時帰国し再来日できないなどのケースもある。

 熊本県のあるハウストマト栽培農家は現在、4人の中国人技能実習生を雇用している。このうち7月末で3年を経過する2人が帰国する予定だという。それに替えてインドネシアからの技能実習生をJAを通じて受け入れる予定にしていたが、入国が遅れるのではないかとの懸念が出ているという。地元JAも選果場で採用予定だが先行きが不透明になっている。

 今後の状況によっては収穫などが計画どおりにできずに生産販売額の減少につながる恐れも出ており、技能実習生への対応も課題になっている。

◆JA経営への影響も
 生産資材関係では、コスト低減のため中国から輸入しているものが多い。その供給の遅れによって生産現場への影響も心配されている。

 全中の調査では昨年の水害で破損したポンプの復旧に必要な部品の供給が遅れることによって、令和2年産米の作付けができない恐れがあるとの指摘が出た。工場停止の長期化、物流の遅延などによる農薬や肥料、肥料原料などの不足や、多くが中国製品である田植え用長靴の不足、畜産飼料となる中国産稲わらの輸入の遅れなども心配されている。

 外国人を含めた観光客の減少で直売所の集客が落ち込んでいるほか、団体旅行の自粛で観光農園の集客も減っている。

 報告があった事例では直売所は通常の4割減、2月に入ってからは1日あたり約10万円の売上げ減など。マラソン大会の中止によって農産物の販売ができず、昨年比で200~300万円も売上げが減少したという事例も。昨年は参加者約500人で2000万円の売上げがあったイベントを中止したという報告もあがっている。

 JAでも年度末や春には農業、JA関係の各種大会や会議などが多いが、今年は中止せざるを得ずそれにともなうキャンセル料が多額となっているという。例年、3月から4月にかけて総会・総代会を開くJAもあるが、本紙の取材でも開催延期や開催方法の見直しなどを行っているなどの声も聞かれている。

 11日の自民党の会合ではJA全中のほか、全国木材組合連合会、JF全漁連、日本給食サービス協会などの代表者から各業界への影響について報告があった。

 日本給食サービス協会によると臨時休校措置で会員社213社に3月分で152億円の損害が出るという。また、JF全漁連によるとインバウンドと国内観光客の減少にともなって高級魚を中心に販売単価が1~3割減少しているほか、水産加工の現場ではマスクや消毒薬不足が深刻化していると報告した。


◆政策で下支えしかない
 政府が10日決定した第2弾の緊急対応策で学校給食休止に対応し食品納入業者、調理業者、酪農家などへ総額212億円を確保した。酪農では学校給食用に納入予定だった生乳をバター・脱脂粉乳など乳製品向けに販売する場合、加工原料乳生産者補給金制度を活用してもなお生じる価格差を支援するほか、加工施設への輸送費も支援することが盛り込まれた。また、業務用に製造した脱脂粉乳を需要のある飼料用へ用途変更した場合の差額についても支援する。学校給食用牛乳の供給停止に伴う対策事業として農水省は22億9000万円を確保した(令和元年度予備費)。

 会合で岸田文雄自民党政務調査会長(経済成長戦略本部長)は「大変厳しい状況に危機感を持っている。緊急対策第2弾を実行することによって年度末を乗り越え、次の新たな思い切った対策を考えていかなければならない」と党として次の緊急対策を検討していく考えを示した。

 新型コロナウイルス感染症は拡大が続いており、その拡大阻止のために政府がさまざまな自粛を求めるなど経済活動の制約が大きな影響をもたらしている。感染がピークアウトしなければ経済活動への制約は避けられず、長期は避けられそうにない。農林中金総合研究所の南武志調査第2部部長は「国債発行で十分な対策を打つべき」だとして雇用を維持するための所得補てんなど政策によるセーフティネットで下支えするしかないという。

 とくに雇用の維持は大事で感染のピークアウトが見えたところから経済をV字回復させていくには雇用が重要になる。

 一方、農水省は農業や食品産業で感染者が発生したときの事業継続に関するガイドラインを3月13日に公表し感染予防対策の徹底とともに、農業現場で感染者が発生した場合に生産部会等に営農継続のための支援体制の構築に向けて、連絡体制や役割分担などを検討するよう求めた。

 各地で「新型コロナに負けるな!」と産地を支援する取り組みも始まっている。JAしまねなどJAグループ職員と県庁職員は13日から県産品応援デーをスタートさせたほか、長野県ではJAグループが学校給食用牛乳の販売促進を行うなど、日々新たな取り組みもある。

 13日にJA全中の中家会長から対策の要請を受けた江藤農相は「一体となって難局を乗り切っていきたい。JAグループが存在価値を示すとき」と話した。


(参考資料)
新型コロナウイルス感染症の最近の動き
農林水産省作成

1月15日(水)
・新型コロナウイルス陽性患者の発生を、国内で初めて確認

1月21日(火)
・関係閣僚会議が開催され、農水省内連絡会議において情報共有

1月27日(月)
・関係省庁連絡会議において農水省に対して邦人保護に伴う協力要請

1月29日(水)
・中国からのチャーター機第1便が東京に到着(第2便は30日、第3便は31日、第4便は2月7日、第5便は同月17日。3月3日に宿泊施設から全員退所)

1月30日(木)
・新型コロナウイルス感染症対策本部を設置(政府対策本部)
・新型コロナウイルスに関する農林水産省対策本部を設置(省対策本部)
・チャーター機帰国邦人及びクルーズ船下船者の宿泊施設で食事及び飲食料品を提供(3月8日まで)

1月31日(金)
・上陸申請前14日以内に中国湖北省で滞在歴のある外国人等の上陸禁止

2月1日(土)
・帰国邦人受入のための宿泊施設に当省職員を派遣

2月3日(月)
・横浜港に寄港のクルーズ船で新型コロナウイルス感染者を確認

2月13日(木)
・新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策を取りまとめ

2月18日(火)
・第2回省対策本部を開催し、各地方農政局及び各森林管理局等に対策本部を設置

2月20日(木)
・厚生労働省から企業の時差出勤、テレワークの促進、イベント等の開催について一律の自粛要請ではない旨のメッセージ

2月21日(金)
・農水省において、緊急的に時差出勤、テレワークを活用することを発表

2月22日(土)
・クルーズ船で陽性者の濃厚接触者が政府施設へ移動(3月8日に全員退所)

2月24日(祝)
・緊急次官会議で各省の時差出勤、テレワークを活用することの指示

2月25日(火)
・第13回政府対策本部で、新型コロナウイルス感染症対策の基本方針(全国一律の自粛要請を行うものではないが、イベント開催の必要性を改めて検討)を決定
・第3回省対策本部で、テレワーク、時差出勤等の感染拡大防止の取組徹底を確認


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