【寄稿】JAはだの(神奈川)宮永均組合長 特定生産緑地待ったなし(1) 都市農地保保全活用推進を2021年12月13日
三大都市圏特定市では生産緑地の8割が2022年に指定期限を迎える。都市農業存続のためには特定生産緑地制度への移行が急務だ。神奈川県秦野市農協の宮永均組合長に寄稿してもらった。
神奈川県秦野市内の生産緑地
市街化区域農地は、三大都市圏特定市以外や生産緑地適用農地以外の市街化区域農地に課せられている厳しい税制のため、長期的に維持することが困難になっている。
2015年「都市農業振興基本法」では、都市農業の安定的な継続と良好な都市環境の形成を目的に、税制上の措置を講ずることが盛り込まれ、2016年都市農業振興基本計画により市街化区域農地の位置づけが「宅地化すべきもの」から「都市にあるべきもの」へと転換され、都市農業の振興に向けた方向性が整理された。
都市農地における生産緑地は、2022年11月にその80%の約1万haが当初指定から30年を迎え買い取り申し出が可能となるため、農地を残すための方策が課題となっていた。多くの行政はその手続きを2020年度から行ってきたが、生産緑地指定から30年が経過する2022年11月まで、おおよそ11カ月と迫り手続き未了者への働きかけを積極的に行わなければならない状況である。
それは特定生産緑地の指定を受けない場合に、固定資産税や相続税の特例措置が受けられないなど課題が大きいからである。
特定生産緑地を選択した場合、しない場合の税制上の措置等
当初懸念していた買い取り申し出による生産緑地の減少による過剰な宅地供給は回避できつつあるようで、全国で特定生産緑地への移行手続きが行われ、10年延長される税制の特例措置の手続きを完了した生産緑地所有者はおおよそ80%となっている。しかし、農業の後継者不足や環境問題などにより、生産緑地を含む市街化区域農地の継続的な保全・活用が危ぶまれていることに変わりはないようだ。
また、現在において1992年に生産緑地に指定し、まだ特定生産緑地の指定を受けていないなど手続き未了者への対応は、各行政区とも2022年が最終受け付けとなるためJAは相談業務を強化しその対応を急がなければならない。
特定生産緑地への指定を受けない場合、(1)固定資産税が段階的に5年間で宅地並み課税となるほか、(2)次の相続で納税猶予が受けられなくなるため、今後も営農を続ける方や相続税納税猶予を受ける可能性のある方へ特定生産緑地の指定を受けることをすすめるなど、JA・行政はその手続きを期限までに誰一人漏れることなく行うことが急務である。
生産緑地は全国の市街化区域農地面積の2%程度で、農家数や産出額は全国の10%程度を占めている。市街化区域の農地は、消費地に近いという利点や消費者のニーズを捉えた効率的な農業が営まれている。1968年に制定された新都市計画法により「宅地化すべき」と位置付けられ、その結果、農地転用が届け出で可能な一方で課税が強化され、農地は大幅に減少している。
市街化区域の農地は重い税負担が大きな課題となるが、生産緑地制度が活用できれば農地並みの税負担となる。しかし、東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府、愛知県などの都市部に集中し、三大都市圏特定市以外では導入が消極的となっている。
生産緑地制度は、1992年に生産緑地法で定められた土地制度の1つで、良好な生活環境の確保に相当する効用があることや公共施設等の敷地として適していること、500平方m以上の規模であることが当初定義されたが、2017年改正で300平方m以上と面積要件が変更されているため地方圏でも生産緑地制度の導入を進め、意欲ある農業者が営農継続できるように取り組みが進むまでは、農地の固定資産税等について現行の負担調整措置の維持が必要となる。
JAはだのでは2020年度より秦野市と連携し対象となる生産緑地所有者への特定生産緑地制度の説明・相談・手続きのサポートを積極的に行ってきた。JAはだの管内で対象となる生産緑地所有者は397人、81.2haで、このうち2021年12月現在までに手続きを完了し特定生産緑地へ移行した者が279人、57.6haとなり、うち相続税納税猶予適用は153人、32.1haとなっている一方で、指定を解除した者は28人、3.4haで相続税納税猶予を適応している者は2人、0.2haとなっており、対象者のうち296人、75%が手続きを完了している。
課題は秦野市においては最終手続きを2022年2月としているため、未手続者101人、25%、相続税納税猶予の適用者26人、4.7haに対して積極的にアプローチしなければならない正念場を迎えている。
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