経営所得安定対策の見直しを議論 自民党2013年10月29日
自民党は10日25日に開いた農林水産戦略調査会・農林部会・農業基本政策検討PT合同会議で「日本型直接支払い」の検討と経営所得安定対策に見直し議論に入った。
農業、農村が国土保全や水源涵養などの多面的機能を果たしていることに着目した日本型直接支払い制度は、来年の通常国会に法案を提出する予定だ。また、経営所得安定対策の見直しでは米の生産調整のあり方も含めて議論が進むことになる。
◆地域政策で支援
自民党は公約で「米に特化した戸別所得補償制度を見直し、国土保全や水源涵養、集落機能など、農業・農村が果たしている多面的機能を維持することに対して直接支払いを行うための法制化を進める」ことを掲げている(Jファイル2013)。 自民党の考え方は全販売農家を対象にしてスタートした民主党の戸別所得補償制度を見直して、多面的機能に着目した日本型直接支払い制度(=地域政策)と、担い手の育成・確保をするための経営所得安定対策(=産業政策)の2本の柱に仕組み直そうというものだ。
とくに戸別所得補償制度は米の生産数量目標に従って生産したすべての販売農家を対象に、恒常的なコスト割れ部分を補てんするとして10aあたり1.5万円を交付しているが、自民党は▽米は麦や大豆と違って高関税で守られており、麦や大豆と違って諸外国との生産条件格差を補てんする品目ではない▽小規模農家を含むすべての販売農家に対して生産費を補てんすることは適切ではない、としてバラマキ政策と批判してきた。
そのうえで日本型直接支払い制度では、米に直接支払い交付金を特化させず、畑地なども対象に多面的機能支払いに転換させていくべきとの考えだ。
ただ、現行の米の直接支払い交付金をいきなり廃止したのでは、現場の不満と混乱も生じるとの意見もある。
◆飼料用米などを重視
また、この問題は米の生産調整のあり方とも絡む。基本政策PTの宮腰光寛座長は、生産調整に関わる論点として、▽生産調整の見直しにあたっては需要に応じた米生産を行える環境をさらに整えていくべきではないか▽消費が減少傾向にある主食用米に直接支払い交付金を払うよりも飼料用米・加工用米などに支払う金額を厚くすべきではないか、などを示した。
主食用以外の米生産に誘導することで主食用の需給調整を図ろうという考えだ。主食用米への現在の支払い額が減っても、地域政策としての多面的機能支払いを充実させることで「トータルパッケージとしては所得はしっかり確保する」(宮腰座長)という。
ただし、多面的機能支払いは地域全体で農業者が共同して取り組むことに対する支払い。自民党は、現行の中山間地域直接支払い、農地・水保全支払いなども合わせて法制化をめざしている。
その際、多面的機能支払いを地域を対象とした場合、米の生産調整をするかどうかを交付要件にすることができないのではないかという論点も出てくる。 一方、支払い対象を個人とすれば、単価水準によっては多面的機能交付金で十分な支援だと判断して、米の生産調整参加を促すことができなくなるのではないかとの論点もある。 現場では米の戸別所得補償制度は、米生産を下支えする、いわば岩盤政策として評価され定着してきている。それにともなって過剰作付け面積は年々減少してきた。見直しにあたっては現場ですでに定着している施策をふまえて検討することが必要になる。
(関連記事)
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