FM長期戦略、高齢化と品揃えが課題 JC総研2014年1月24日
ファーマーズマーケット戦略研究会が発足10周年
全国の主なJA直営のファーマーズマーケット(FM)で構成する「ファーマーズマーケット戦略研究会(FM研究会)」とJC総研は、1月23、24の両日、東京都内で公開シンポジウムと現地セミナー(JAファーマーズマーケット・サミット)を開いた。FMの最近の動向、運営改善のポイント、事例報告をもとに、全国4JAのFMの担当役員によるパネルディスカッションでは「淘汰の時代におけるJAファーマーズマーケットの新戦略」について意見交換した。
◆品切れ対策が大事
このシンポジウムはFM研究会発足10周年を記念して開いた。目的は、FMを拠点としたJAならではの組織力・総合力を活かした多面的事業を展開し、地域農業再生とJA改革のための長期戦略と実践手法を考えようというもの。
セミナーではJC総研の山本雅之特別研究員がFMの最近の動向と長期戦略について報告。特に長期戦略では、発信力を高めることを強調。「最もインパクトのあるメッセージは『生産者の思い』を伝えること」と指摘する。また、五感に訴える試食、JC総研が育てている「食育ソムリエ」の積極的育成と活用の必要性を挙げる。
次いで同総研の伊藤悟主任研究員がFMの運営改善のポイントについて、会員JAのアンケート調査をもとに報告。特に品揃え対策について、品切れを起こさないためには、「店舗と出荷者間で情報の活用を徹底が必要」と指摘する。
事例紹介では、JAあいち中央の加藤新一常務が、昨年5月にオープンしたFM「でんまぁと安城西部」について報告。FMは同JA初めての取り組みで、個人出荷だけでなく共選ものも扱っているところに特徴がある。品切れを防ぐとともに、「個人出荷のFMのものと合わせてPRすることで効果を挙げたい」という。
(写真)
ファーマーズマーケットの今後の展開について意見交換した公開シンポジウム
◆共選との協調をどうするか
パネルディスカッションでは、事例報告のJAあいち中央の加藤常務のほか、岩手県JAいわて花巻(「母ちゃんハウスだぁすこ」)の藤館政義常務、同JA(同)の【?】橋テツ理事、千葉県JA千葉みらい(「しょいか【?】ご」)の伊藤和彦常務、和歌山県JA紀の里(「めっけもん広場」)の大原稔常務がそれぞれ出席し、それぞれのFMの取り組みと課題、今後の戦略について述べた。
特に今後のFMの戦略については、東日本大震災で、沿岸部が大きな被害を受けたJAいわて花巻は「“沿岸だぁすこ”をつくり復興の拠点にしたい」、「出荷者の高齢化が進んでいるが、加工をやりたい女性や、新規就農者にはJAの助成がある。若い人にこれを使ってもらい、FMに出荷してもらうよう呼び掛けたい」と話した。
またJA紀の里は、「当初の直売の理念が忘れられてきた。FMは地産地消、農村と都市の交流拠点であることを再考し、取り組みを強めていきたい」と原点復帰の必要性を指摘。
JA千葉みらいは「地域には、かつて特産であったサツマイモがあり、それを指導した青木昆陽がいる。作物、人物を掘り起こし、加工品を開発したい。またセレクトショップ的なFMがあってもいいのでは」と、新たな店づくりを展望する。 JAあいち中央は資材の購買と生活用品販売併用のグリーン店舗12店を「すべてFMに衣替えしたい」と意欲を示す。
討議のなかでは、出荷者の高齢化への対応と品揃えの難しさが指摘され、品揃えのためのFM出荷者のネットワークづくり、FMへ出荷する新規就農や定年帰農者などへの営農指導のあり方が焦点になった。さらに、規模の拡大とともに、当初の理念からのブレや、共選ものとの協調の難しさを指摘する意見があった。
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