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TPPを先取りする生産調整政策の廃止2014年3月26日

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 「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」と「国際アジア共同体学会」が共催し3月22日、東京都内で「TPP交渉、焦眉の論点を考える」を開いた。▽交渉の現状と見通しをどう見るか、▽農政改革、混合診療の拡大を進める特区構想など安倍政権の国内政策をどう評価するか、▽TPPに代わるアジア・太平洋圏の貿易構想は何か、などについて専門家の報告をもとに議論した。

◆今こそ撤退議論を

 田代洋一・大妻女子大教授は、2月の大筋合意に至らなかった2月の閣僚会合について「TPPには譲れない大原則があることが再確認された」と指摘した。
 TPP交渉はモノの貿易での関税撤廃という「20世紀型交渉」の側面と、非関税障壁やルールをめぐる交渉という「21世紀型交渉」の2重構造を持つ。農産物や自動車といったモノの関税交渉は日米をはじめ二国間で行い、各国の規制やルールなどは多国間で交渉するというのが今のところの交渉の姿だ。秘密主義に加えて1本の協定、1つの交渉だけがあるわけではないのがTPP交渉の分かりにくさと懸念のもとだ。 そのなかで農産物と自動車の関税撤廃という20世紀型交渉では、実は日米ともに妥協できない。ただし、昨年4月の日米合意で米国は自動車について「最長期間をかけて撤廃するとしたものの、撤廃しないとは絶対に言わない」(田代教授)ということだった。
 これに対して日本の国会決議は「10年を超える段階的な関税撤廃も認めない」である。田代教授は2月の閣僚会合決裂が示したのは「結局、関税やその他の貿易・投資に関する障壁は撤廃するという『TPPの輪郭』に回帰したということ」と指摘した。すなわち米国が今後の交渉のなかで妥協するとしても、それはあくまでも「関税撤廃の枠内。そのなかで何年で撤廃するか、どの品目をどう扱うかに過ぎない」ことになる。日本もこの枠内での妥協を迫られる。したがって、「このまま交渉を続ければ関税撤廃は避けられないことが判明した」という。
 一方、日本の国会決議は「国益が確保できないと判断されれば脱退も辞さない」であり、その時とは、まさに今だと交渉状況を分析した。


◆ポストTPP?

 ただし、安倍政権の成長戦略は輸出志向。米国もアジア・太平洋地域で中国に対抗し覇権争いを勝ち抜くために経済力が必要と考えており、両国ともにTPPは必要だと考えている。
 とくに日本政府が成長戦略の柱だとしてTPP交渉妥結を急ぐ姿勢が、国内政策に急速に打ち出されてきた。
 農業政策ではTPP交渉とは無関係だと強調しつつ、昨年秋から米の生産調整政策の見直しなど改革に拍車がかかった。しかし、これはTPP対策になり得るのか。田代教授は、かりに主食用米が守られる協定になったとしても、米調整品が関税撤廃されたり、ミニマム・アクセス枠や低関税枠が拡大されるようなことになれば、安い輸入米によって打撃を受ける。5年後には国による生産数量目標に頼らなくても生産者などの自主的な判断で需給に応じた米生産をすることも視野に入れているのが今回の「見直し」だが、安い輸入米が入ってくれば生産調整は無効になる。
 しかも、生産調整の重点を飼料用米に置いているが、TPPのみならず、交渉をリードするために妥結を急ごうとしている豪州とのEPAでは牛肉・豚肉の関税の扱いが焦点となっている。かりに畜産が打撃を受ければ、いうまでもなく「何に飼料用米を食べさせようというのか」(田代教授)となる。
 こうした点をふまえれば、現在の政策見直しはTPP対策にはならず「丸裸でTPPの影響を受けることになる」としたうえで、国による生産調整への関与が必要だと強調した。


◆医療でも前のめり


 競争力をつけるために大規模化が必須との掛け声のもと、農地中間管理事業が展開されることになるが、これについても参加者から「農業経営のあり方を議論せずに140万haの農地集積を一方的にめざす。これもTPP対策にはなり得ない」との批判もあった。
 さらに司会の金子勝・慶大教授は、農業政策だけでなく混合診療の拡大を進める国家戦略特区なども「TPP協定以上のことを先取りしようといる政策」とその危険性を指摘した。外圧の結果として妥結した協定の内容に、国内制度を合わせるのではなく、成長戦略の名のもとに規制改革が進められようとしている。 佐久総合病院医師の色平哲郎氏は私費による自由診療の拡大で民間保険の参入が広まり、公的医療保険でカバーされる部分が狭まると指摘。TPP協定にかかわらず国民皆保険制度の崩壊につながりかねない事態が進行していることを指摘した。 そのうえで、TPPがめざす利益追求ではなく、高齢化と少子化が世界でいちばん進む21世紀の日本が国民皆保険制度で社会を維持しようとしていることこそ、世界が注目している課題だと強調した。


◆柔軟な共同体の創設が

 また、新たなアジア・太平洋圏の貿易構想について萩原伸次郎・横浜国大名誉教授は、多国籍企業と国民が対立するようなTPPではなく、国の自主権を認め柔軟な共同体の創設を2015年に目標としているASEAN(東南アジア諸国連合)から打ち立てることができるのではと提唱した。
 そのための必要になる条件は米国離れとアジア地域が協力することへの強い政治意識で、共通通貨の創設によって域内通貨の安定と投機資本の押さえ込みなども課題になるだろうという。また、東アジアの食料安全保障のための日本の技術協力と域内自給力の向上、東アジア共通農業政策も必要とされるのではないかと指摘した。

◇      ◇

 難航しているといわれるTPP交渉だが、日米は農産物と自動車をめぐって2月末から二国間協議を再開する。予断をゆるさない事態は続き、「交渉が深く潜行する可能性もある」と田代教授は指摘したが、一方で農政に限らず政権が性急に進める政策にも注視が必要なことがこのシンポジウムでは示された。
 TPPは「国のかたち」に関わる外交交渉だとの懸念がしばしば指摘されてきたが、内政でも自ら「国のかたち」を変える事態が進行しかないことに注視する必要がある。


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