米政策で研究会 「政策決定に現場の声を」2014年3月11日
農業協同組合研究会が第20回研究会
農業協同組合研究会(会長:梶井功東京農工大学名誉教授)は3月8日、東京都内で第20回研究会を開いた。テーマは「米政策の転換と自民党農政」。山田俊男・参議院議員と平成12年にJA全青協委員長を務めた若林英毅・JA山形おきたま経営管理委員が報告し、今回の政策見直しの問題点や今後めざすべき政策の方向などを話し合った。
◆生産調整に不安の現場
今回の政策見直しは▽農地中間管理機構による農地集積の促進▽経営所得安定対策の見直し▽水田フル活用と米政策の見直し▽日本型直接支払い制度の導入、の4つが柱だとされている。
このうち米政策としては10a1.5万円の固定支払いが半額とされたうえ、さらに5年後にはそれも廃止、国による生産数量目標の配分に頼らずに自主的な生産への取り組みに移行できないかを検討するとされたほか、一方で非主食用へ誘導するために飼料用米への助成額が増えるよう数量払いなども導入された。
今、農水省はこれらの政策について産地で説明会を開いており、若林氏も地域の仲間と連日のように聞いているという。そうした場で農政局などは「すでにみなさんお聞き及びでしょうが…」と説明を始めるという。しかし「今回の政策変更で現場は混乱している。猫の目農政そのもの」。
米生産の現場からもっとも若林氏が強調したのは「まじめに生産調整に取り組んでいるのに米価が下がり、毎年所得が減ってきたこと」だ。この時期、地域では「水田一筆、一筆何を作付けるか」検討中で、今回の見直しに合わせ生産調整への取り組みを加工用米、備蓄米での対応を取りまとめつつあるという。しかし、そうして所得を確保できる見通しにあるかといえば、「現時点ですでに加工用米の相場は思ったよりも下がっている。再検討が必要になるかも」と生産調整への取り組みの苦労や実態を話した。
司会の谷口信和東京農大教授は「そもそも今回の政策転換とは何か。4つの改革を束ねたネーミングはない。農水省も“今般の政策改革”というだけ。変えていくべき点は多々残っている」と指摘した。
米政策にとどまらず、やはり論点となったのは担い手像とそこへの農地集積。収入保険の導入や農地中間管理機構などの機能などが議論になった。
谷口教授は担い手像について「大規模経営か、小規模経営かは不毛な議論では。大規模経営は現実に存在している、しかし、そうして点の存在で地域を維持したり、自給率向上は可能かという論点こそ重要ではないか」と話した。
(写真)
講演する山田議員
◆官邸主導の議論 民意どう反映?
今回の改革が現場に不安をもたらしている大きな要因のひとつは「官邸主導の改革」がさらに進むのではないかという点だ。
山田氏は自民党の検討に産業競争力会議、規制改革会議などから「横やり」が入ったことを指摘し、市場原理を徹底させる改革方向が強められいることから、今後、「いかに日本農業を特質を踏まえた担い手づくりや地域農業を実現していくか」が課題だとし、その際、米の需給に国が関与する仕組みをどう入れ込むなども指摘した。
ただ、成長戦略の名のもとの政府主導の改革では、たとえば国家戦略特区では今後、企業の農地所有、農協のあり方の見直しも検討課題となりそうだ。それらをテーマにすることを政府に求めたり、あるいは今回の米改革の方向性の絵を描くことまでしたのは安倍政権が起用した一部の有識者だ。それも農業、農協などを「岩盤」規制と見なし崩すべきだ、と実態とかけ離れた認識を持つ。
会場参加者からは政策決定の仕方自体を問題にすべきとの指摘も出た。「(選挙で選ばれた)農相が構想を打ち出すのならならまだしも、一部識者が政策決定に影響力持つ。今回の米政策に限らず、問うべき問題だ」。
農業政策にとどまらず、現在の政治のあり方にまで議論が及んだ研究会となった。
(※ 両氏の講演詳報は後日掲載いたします。)
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