"合併"のあり方討議 県1JA化の一方で連合も 農協研究会2016年5月31日
農業協同組合研究会(会長=梶井功東京農工大名誉教授)は5月28日、東京都内で改正農協法と農協合併について、報告とディスカッションを行った。かつてのような大型化がすべてという状況ではなくなったが、営農経済事業を重視する改正農協法のもとで、どのようなJA像を目指すかが焦点になった。
◆組織論の討議を
研究会ではJA全中の太田実常務が農協合併の現状と改題について報告。それによると、大型化に疑問の声はあるものの、このところの傾向として、県1JA構想を検討する県が増えており、これが実現すると現在の659JAが300JAを切ることになる。「かつての合併は経営悪化のJAの救済だったが、いまは厳しい金融事情のもとで、1兆円の貯金残高が必要という考えも出ている」という。
合併しても、旧JAを地区本部制として残し、給与を統一しないなどのJAもあり、県1JA不徹底さの問題点を指摘する。そのうえで、JA全中の社団法人化、県中央会の連合会化が進むと「県1JAが増える中で、組織論についての幅広い議論が必要になる」と問題提起した。
◆新規基軸を模索
こうしたJA合併の問題について、今年の3月1日の発足した福島県のJAふくしま未来の菅野孝志組合長が報告。JA合併は「"合体"ではなく、新しいものをつくるのでないと合併の意味がない」という。この考えで担い手育成をめざすJA出資型の農業生産法人、JA独自の担い手給付金、新たな6次産業化、担い手支援チーム「AST」の設置など、新機軸の取り組みに挑戦している。
ただ役職員には、旧JAへのこだわりを払拭できないのも事実。地区本部には旧JAの専務クラスが地区担当常務になっているが「合併の1年はともかく、新しい組合として2年目からは他の地区も担当するようにしたい」という。
また、JAふくしま未来は4つのJAの合併。「お互い遠慮がある。どういう組合を目指すかについて話し合い、一つひとつ駒を進めたい」と、発足したばかりのJAの役職員の意思統一が簡単ではないことを示唆した。
◆適正規模を探る
農協合併について、太田原高昭・北海道大学名誉教授は、今日の一連の「農協改革」を、「制度としての農協の終焉」と性格付ける。従って合併一本槍ではなく「合併しなくてもよいというところがあってもよい」との評価に変わりつつあるという。
この例に、同教授は未合併(この言葉もおかしい)のJAが連合した北海道の十勝農協連を挙げる。19市町村23JAが連合して出荷規格やブランド戦略などの市場対応を行っている。
その上で、農協改革は「これまで行政代行をやらせ過ぎたと考えるようになり、それに財界が悪乗りして農村の金融試算に目を付けたのではないか」と分析する。また課題として、適正なJAの規模について、議論を起こすべきだと指摘した。
ディスカッションでは、「農協改革で営農指導体制を強めるというが、運動体としての姿勢はどうなったのか」、「未合併農協という言い方に疑問がある」、「農協はわれわれ自身がつくっているもの。連立もあれば連合もある」、「現場では正組合員、准組合員の違いは全く意識していない」などの発言があった。
◇ ◆
なお、農業協同組合研究会は、研究会前に、第12回総会を開き、2016年の事業計画を決めた。現地研究会や通常の研究会などの開催のほか、(一社)農協協会(農業協同組合新聞)や、新世紀JA研究会などとの連携強化を決めた。会長は梶井功氏を再任した。
(写真)農協合併についてのディスカッション
(農協研究会の関連記事)
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