GISで農家所得の増大を(上) 東京農大農協研究部会・GIS部会2016年11月14日
東京農大総合研究所研究会農業協同組合研究部会・GIS研究会は11月10日、同大学で「農協法改正・農協グループの自己改革の論点・課題をふまえた農協の新規就農者支援、営農経済事業高度化に関する第9回シンポジウム」を開いた。同農業協同組合研究部会会長の白石正彦・東京農大名誉教授とGIS研究会会長の鈴木充夫・前東京農大教授、それに長野県JAうえだの前組合長・芳坂榮一氏、同JAの子会社(有)信州うえだの船田寿夫常務、それに岩手県JA新いわて奥中山営農経済センターの田村繁行氏がそれぞれ報告し、JA改革におけるGIS(地理情報活用システム)を活用法などについて意見交換した。
◆JA改革にほ場情報を活用
農業協同研究部会の白石部会長は一連の政府の農協改革の問題点を挙げた。特に今年6月に施行となった改正農協法は、営利を目的とした事業を行ってはならないという条項を削除し、「農業所得の増大」、「高い収益性の実現」などを新設した。これは「組合員の経済的・社会的・文化的なニーズと願いを自発的な事業活動を通じて実現する」という協同組合原則からかい離していると指摘。
また理事会の構成、理事の資格に条件をつけていることは、国際協同組合同盟(ICA)の21世紀協同組合原則の「自治と自立」に反すると言う。「農協は民間の協同組合である。組織の中核となる役員の人選に介入するとはどういうことか」と、政府の農協改革を糾弾する。
また改正農協法は「協同組合の教育」が完全に放逐されたことも問題点として挙げた。
GIS研究部会の鈴木部会長は、水田を管理するGIS(地理情報システム)の活用を紹介。これはエクセルデータと、ほ場データ(地理情報)を扱うPCソフトウエアで、人手で行っている各種の地図を自動的に作成できる。これによって、生産履歴のデータ化、農地管理計画の作成、作付け計画の「見える化」、防除・品種マップの作成、収穫適期の配信などに活用できる。
同会長は、農協改革でJAが取り組まなければならないこととして、農協改革の真の狙いを正確に組合員に伝えることを挙げ、また「地域農業と地域JAを守ることは地域の農地を守ることであり、それには農地を管理するためのIT(情報技術)の活用が必須」と力説する。タブレット・スマホとデータ互換もでき、すでにいくつかのJAで導入が進み、営農指導に役立っている。
そのひとつ、JA新いわて奥中山営農センターの田村氏は、(1)生産者の作付け状況を把握できる、(2)栽培履歴や、ほ場のトレースが容易、(3)収穫予定日を確認し、有利販売につなげる、(4)シーズン中の出荷量を、ほ場ごとに入力できる、などの利点を挙げる。
特に現在のJAは合併でエリアが広がる一方で、職員数が減り、営農指導のベテランが少なくなっている。「20~30代の職員で、いきなり重要な仕事をせざるを得ないケースも多い。また営農指導の職員は集出荷業務との兼務が多く、労力軽減やスピーディな農家対応にGISを役立てたい」と話した。
(写真)JA改革とGISの活用で意見交換したシンポジウム
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