食料自給率38% 平成5年大冷害に次ぐ水準2017年8月10日
農林水産省は8月9日、平成28年度の食料自給率を発表した。カロリーベースの自給率は38%で前年から1%低下した。7年ぶりに前年を下回り、平成5年の37%に次ぐ低水準となった。
農林水産省によると28年度はカロリーベース自給率に影響する小麦とてんさいの生産量が落ち込んだことが影響した。小麦の作付面積は1%増えたが、北海道など天候不順で単収が22%低下した。てんさいも作付面積は2%増えたが、単収は20%低下した。
このため農水省によると、小数点以下まで示すと27年度の39.49%が28年度には37.58%と実際には1.9%低下した。
品目別の自給率への寄与度は果実の0ポイントを除き、小麦▲0.6ポイント、てんさい▲0.4ポイント、米▲0.2ポイントと畜産物、水産物も含めて引き下げ要因となった。
米は食料供給全体に占める割合が減少し続けており、一人あたり年間消費量は27年度の54.6kgから54.4kgと減少した。
自給率の統計を取り始めた昭和35年度以降、カロリーベース自給率の最高値は79%(35年度)で過去最低の37%だった平成5年は米の全国作況が74と大冷害で200万t程度の米を緊急輸入した年である。翌年は米は豊作で46%に回復したが、WTO協定の発効など農産物輸入の拡大も影響し自給率は40%を下回り横ばいで推移してきた。
一方、この間、自給率向上を主要な目的として国は食料・農業・農村基本計画を策定し、27年策定の現行基本計画は平成35年に45%まで引き上げることを目標にしているが28年度は逆に下がった。 一方、生産額ベースの食料自給率は2%向上し68%となった。野菜、果実の輸入額が減少するなか、国内生産額が増加した。また、畜産物は国内生産額は減ったが、牛肉の輸入額が豪州の干ばつの影響で減少したことなどから、生産額自給率の向上には寄与した。
農水省は食料自給率とともに国内の潜在生産能力を示す食料自給力指標も示した。
推定エネルギー必要量2147kcalだが、国内農地を米や小麦・大豆中心に作付け栄養バランスも考慮して生産するパターンAは1449kcal、栄養バランスを考慮せず米・小麦・大豆中心に作付けるパターンBでは1814kcalといずれも下回る。
いも類中心に栄養バランスを考慮した作付け(パターンC)では2339kcal、栄養バランスを考慮せずいも類中心の作付け(パターンD)では2660kcalと必要量を上回るが、いずれも昨年度より食料自給力は落ちている。たとえばパターンAは27年度=1468kcalが28年度=1449kcal、パターンDは同2687kcalが同2660kcalとなっている。
今回、生産額ベースの自給率は伸びたものの、品目によっては、リンゴやニンジンにように生産量は不作だったが相場が上昇したために生産額が増えたという品目もある。今回は天候が大きな要因だとしているが、今年も災害は多発し、農林水産被害は増えており、食料の安定供給に不安を持つ国民は増えている。
一方、カナダ、豪州、米国、フランスなど農産物輸出国は食料自給率100%を超え、そのほかの国でもドイツ95%、イギリス63%、イタリア60%となっており、日本は先進国最低水準であり、目標の45%を達成したとしても最低水準にあることは変わりがない。自給力と自給率の向上に向けて改めて政策を考える必要がある。
(関連記事)
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